美しき女豹の罠 萌芽編           1 (はあ、はあ、のっ、残り時間は・・・後30秒くらいか、ふ、ふう、判定じゃあ勝ち目はねえ!ここいらで勝負に行かないと! しっかし、こいつときたらほんとに強くなりやがった、、、)  俺は、こちらが肩で息をしてるのにも拘らず、全く疲れたそぶりも見せずにそれどころか、懸命に平静を装っている俺の心中を まるで見透かしたように、面包のなかで挑発的な笑みを浮かべ目の前に対峙している相手を 惧れと呆れが入り混じった気持ちで見つめていた。 (こいつが入りたての頃はまだ手の打ちようがあったてのに、、、しっかしこれからどうしたって・・・ うおっと、ちょちょちょ、、、) しかし、相手はこちらの攻撃の算段をする暇も与えず、再び猛ラッシュを仕掛けてきた。 “ドッ、ドガッッッ!! 唸りをあげて赤い拳サポーターに包まれた拳による左右の正拳突きが俺の胸を襲う。 “ ぐっ、がはっっっ! ” 前面のみならず内臓を突き抜け背骨に響くような重い連突きに俺は追撃を食うまいと、反射的に 上段十字受けで上体をカバーしたが、あまりの威力に防御の意識が上体に集中したところを “ バシッ!! ” と、叩きつけるような下段の回し蹴りを右足の膝関節に打ち込まれた。 “ ガクッ ” とたまらず膝から崩れそうになるところを必死の思いで態勢を立て直す。 (くっ、俺としたことがこんな初歩的なコンビネーションに・・・) そうは思っても、これが並の選手の連突きであれば、その後の攻撃も余裕を持って予想をたてられるのだが、同年代のものとは 到底思えない威力から恐怖心が先にたち、疎かになった下段への防御をつかれ、がら空きの膝に渾身の下段を喰らってしまった。 正直いってバランスが崩れ、無意識の状態で受ける下段の痛みは半端ではない。 脛でブロックしていてもこいつの下段蹴りは青年部のそれを遥かに凌駕しているのにそれを無防備で喰らった日にゃ、、、。  これが試合の最中であればこそ、もし誰も見ていないところであれば今すぐのた打ち回るような痛みに耐えている俺に お構いなく、再び連突きのラッシュが始まった。 “ ズガッ、ガッ!! ” ガードの上からとはいえ相変わらず重く、そして呵責の無い攻めだ、だがここで怯んでいてはまた先程のように 次に繰り出される攻撃の格好の餌食になってしまう、俺は前腕を襲う激痛に顔を顰めつつ次の攻撃に備えた。 (今度はどこだ?中段?それとも上段か?) だが俺の刹那の予測に反し相手は先程と全く同じ箇所、同じ軌道で見え見えの下段を入れてきた。 (舐めやがって!二度同じ手を喰うかよ!!) 俺は侮られたという憤怒に我を忘れこの攻撃がフェイントやコンビネーションであることなど 露ほどに思わず、対戦相手が同い年、しかも入門歴が短いことなど すっかり頭の中から消え失せ、ストッピングや下段払い等での防御ではなく、下段がヒットする瞬間、脛の一番硬い面を 合わせるという俺たち中学生では禁止されているいわば実戦受けで屈辱のお返しを狙った。 (ちょっと痛い目にあってもらうぜ・・・) そして狙い通り相手の下段回し蹴りが脛ガードの部分に交錯する―――― と、思った刹那、今まで下段の軌道を取っていたはずの相手の脚がいきなり垂直に跳ね上がった、、、と思うまもなく、足背が あたかも死神の振るう鎌のごとく俺の首を刈らんばかりの勢いで向ってくる。 (やっ、やばいっ!) 完全に下段に対する防御に意識が向いていたため、慌てて頭部にガードを持っていっていたが、それでも 自分の反射速度と相手の上段蹴りがフェイントを絡めてのものだっただけに間一髪のところで防げるはずだった、が・・・ その時俺の顔の高さまで上がっていた相手の膝の向きが横から  “ グリュンッ! ” と凄まじい勢いで下に向かって回転し、それまで大腿の後ろに隠れていた膝下の部分が 鞭の様にしなりながらこめかみ目掛け振り下ろされてきたっ!! そして  “ あっ! ” と思う間もなくあざ笑うかのようにガードの上から足尖が “ ガシュッッッ!!!・・・ ” と厭な音を立て俺のこめかみを抉り取るように掠めて行った。 (痛(ツ)――――――!!!) 足背の直撃とはまた一味違う、鋭利な角材の先端を猛烈な勢いで切り付けられた様な痛みに目の前に無数の星が飛び散った。 だが直撃ではないため堪えきれない痛みではない、俺はなんとか気力で萎えそうになっている心を奮い起こし 最後の反撃を試みようと前に一歩踏み出した――― が、その時!俺の視界があたかもブレーカーが急に落ちてしまったかのように暗闇に包まれ、そして間髪をおかず俺の体は 糸の切れた操り人形のように膝から  “ カクン ” と前に崩れ落ち、そのまま冷たい道場の床に無様にも頬擦りする形で倒れこんだ。 [美しき女豹の罠・萌芽編・2ページ]
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