“ いっ、一本っ それまでっ!! ” この対戦中、道場内に満ちていた重苦しいまでの静謐を切り裂くように主審の声が鳴り響くと、堰を切ったように 今まで食い入るようにこの対戦を見つめていた道場生たちや観衆から  “ わっ ”  と地鳴りのような歓声が上がった。 すると、道場生達の輪の中から一人の小柄な道場生がタオルを抱え小走りに勝利者である対戦相手の下に駆け寄っていった。 (あ、あの子は確か、、、にぞっこんの、、、) 俺はまだ混濁した意識の中、相変わらず床を枕にその光景を まるで別世界の出来事のように見つめていると、途切れ途切れに、二人の会話が耳に入ってくる。 「やりましたね!!・・・かさん!これで・・季連続で・・流空手トーナメント優勝ですよ・・・すごっ、すご・・・」 「フフ―ン?、・・・でしょう葵・・・くれるのは・・・がたいけど・・・喜んで・・ 礼が終わってからね、審判の人・・・葵のこと凄い・・・まくで睨んでるわよ・・・」 そこでようやく対戦相手から葵と呼ばれた道場生はようやく自分が置かれた状況に気付いたらしく、慌てて その場から離れて行こうとしたが、気が動転していたためか床に蹴躓いてしまいそのコントのような光景に満場から “ どっ ” と笑いが起こると耳まで顔を赤くして転がるように道場生達の輪に戻って行った。 その様子をさも可笑しげに眺めていた対戦相手は踵を返し、ようやく上体を起こせるまでに回復してきた俺の元に 歩み寄ってくると、それまで被って居たスーパーセーブを勢い良く脱ぎさるや、汗で顔にまとわり付いている髪を振り払うように 顔を左右に振ると “ ふさぁっ・・・ ” と煌めく黒真珠を思わせる艶やかな黒髪が舞い、それと共に髪の毛を湿らせていた汗も瑠璃の珠のような輝きで空中に舞っていく。 俺は自分を打ち倒した相手の何気ない仕草を、しかしそれだけで一幅の絵のような光景を 惚けたように見惚れていると、その相手が右手を差し出し 「な〜に惚けてんのよ。へへ〜〜〜♪、これで私の大会四連勝ね、という事は、、、対好雄戦四連勝ってことになるのね? ああっ、ごめんごめん!私ったらついはしゃいじゃって、、、あ〜そうそう! 大丈夫?好雄?結構いい縦蹴りが入っちゃったけど・・・どう?大丈夫?立てそう?」 「ば〜か、あんな強烈なの入れといて、大丈夫も糞もねぇだろうが、、、」 そう毒づきながらも俺は、“ ふっ ”と、どこか悔しさの中にも (こいつ(、、、)には敵わなねーな) という馬鹿負けしたような笑みを口元に浮かべ、こいつ(、、、)・・・ そう、綾香、来栖川綾香の差し出した手“ にぎゅうっっっ ”と握り返した。   [美しき女豹の罠・萌芽編・3ページ]
動画 アダルト動画 ライブチャット