2001年10月X日(火曜日)


ライブのあった次の日の朝、安本から電話があった。
簡単な御礼と、「また良かったらライブに来てくださいね」という挨拶だった。
私はほんの少しがっかりしていた。
知らない間に、あの時のキスの意味を探っていた・・・・。

日曜日の夜に再び、今度は夫に電話があった。
差し入れへの御礼と近況を話していた。
 「今度俺も行くよ」と夫は社交辞令っぽく話していた。
 「アイツも変わってるよなあ」夫は一言で済ませた。

朝、家族が出かけ、一息ついていると、
電話が鳴った・・・。安本からだった・・・。
 「スイマセン・・・週末から具合が悪くて、
  ちょっと人恋しくなってしまったものですから・・・・。」
激しく咳き込みながら電話の向こうで苦しそうな声が言った。
日曜日から発熱し、ずっと寝込んでいて、ろくに何も食べていないという。

 「大丈夫ですか?お大事に、なさらないと・・・。」
などとありきたりの見舞いの言葉をかけ、結局すぐに切ってしまった。
先週の夜のキスと「人恋しくなって・・・」という安本の言葉の意味を私は探った・・・。

炊飯器から、朝炊き上がったばかりのご飯をタッパーに詰め、
実家の母が漬けた梅干しをラップでくるんだ。
あと、風邪薬を何種類かと招待状が入っていた封筒もバッグに入れ、
30分後には私は車に乗っていた。

環八の高円寺方面は渋滞していた。
30分ほどで着くと思っていた京王線沿いの安本のところまでは、
結局1時間以上かかった。
駅前の駐車場に車を止め、細い路地を住所だけを頼りにマンションを探した。

ほどなく、こじんまりとした建物が見つかり、
インターホンを鳴らした。
ジャージ姿に無精髭をはやした安本が驚きながらが出てきた。

私は紙袋を差出し、「梅干しとおかゆでもと思って・・・」と言い部屋へあがった。
ここ数日動けなかったのか、キッチンにはカップラーメンの食べ残しや、
マグカップが散乱していた。
12畳ほどのワンルームの殆どはグランドピアノが占拠していて、
片隅に低いベッドが置かれていた。
所狭しとCDとレコード、楽譜が置かれており、足の踏み場も無いほどだった。

 「どうぞ横になって休んでいてくださいね。
  おかゆができたらすぐに帰りますから」
キッチンで洗い物をしながら言った。
30分ほどでおかゆが出来上がり、梅干しとお茶を入れた。
安本は眠っていたが、声をかけるとすぐに起きてきた。
 「独身になって、楽だなあって感じるときもあるけど、こういう時はさすがにね」
とおかゆをすすりながら安本が笑った。

ご飯2杯分のおかゆを平らげ、私はキッチンに戻り、後片付けを始めた。
所作無くしていた安本が近寄ってきた。
 「どうして来たんだ?」
突然、後ろから抱き締められた・・・・。
 「・・・・とても困っていたようだったから。」
平静を装い、お茶碗を洗う手を止めないように私は返した。
 「僕は頼んでいないよね?
  貴女に来て欲しいと一言も言っていないよね?」
首筋に口唇を這わせながら囁く・・・。
 「貴女が勝手に来たんだよ・・・。」

痩せ型の安本の力とは思えないような激しい力で、
部屋の片隅にあるベッドに連れていかれた・・・・。
 「安本さん駄目よ!」
起き上がろうとする私を、全身で押さえつけてくる・・・。
 「弱ってるから何もしないと思って来たの?」
おそらく、ここ数日お風呂には入っていないのだろう、、、
男の体臭で息苦しくなる。。。。
 「イヤ・・・お願いやめて!!」

カーディガンを肩からずらされ、中に着ていた白いブラウスに手がかかった・・・。
一旦、手が止まったと感じたが、
すぐに、ブラウスのボタンがブチッという音と共に、引きちぎられた・・・。
私は安本の髪を必死で掴み、離れようとするが、
血走った目の彼は、それで怯むことは無かった・・・。

ブラジャーのカップを上に引き上げ、荒々しく乳房を揉まれ、
ロングスカートのジッパーを下ろされた・・・。
 「ああ・・・・」
後悔しながら、観念していた・・・・。
抵抗していた腕から力が抜け、呆然と天井を見詰めた・・・・。
自宅と同じ白い天井を見ながら、
どんな男と寝ていても、思い浮かばなかった夫の顔がよぎった・・・。

一筋の涙が頬を伝った・・・。

防音装置が利いているのだろうか、静かな部屋に、
キッチンで勢いよく流れる水道の音と、男の息遣いだけが聞こえていた・・・・。
様々に巡る脳裏とは逆に、私のアソコは湿っていた・・・。

捲くり上げられたスカートの下で安本の繊細な指と唇が絶え間無く蠢いていた。
ピチャピチャという厭らしい音が響いていた・・・。
嗚咽のような声が出てしまう・・・。
 「ぅう・・・・それ以上は・・お願いヤメテ・・・。」
抵抗せずに最後の懇願をする・・・。
 「貴女は来たんだよ?それに・・・こんなに濡れてるよ?」
身体の奥底から液体がスルリと出て行く感触があり、同時に、
ゴクリと飲み込む音がした・・・。
 「あぁ・・・・お願い・・・」
顔を覆った・・午前中の光があまりにもまぶしくて。。

安本の体勢が変わり、硬いものが貫いた・・・。
 「あああ!熱い!」
呻き声を上げながら男が叫ぶ・・・。
ゆっくりと身体が上下し始める・・・。
同時に巧みな指遣いで晒された乳首を弄くられる・・・。
乳首さえもがピンと勃っているのがわかる・・・。

一定のリズムで突かれ、右手で乳首を弄くられ、左手ではクリトリスを撫でられ、
いつのまにか私も悶え始めていた・・・。
 「あぁ・・・イヤなの・・・・ダメ・・・・・・・」
勝手に腰が動いてしまう・・・。

私は手を掴まれ、私自身の乳房に誘導する・・・
五指をまるでピアノを弾くように重ねて動かされる、、、
段々とリズムが激しくなり、
 「うっ!」
という声と同時に男の体重がのしかかった・・・。

呆然と数十分横たわっていた・・・・。
その間もずっと、安本は傍らで私の頭を撫でつづけていた。


帰り際、ボタンの引きちぎれたブラウスを手で隠す私に、
 「今度プレゼントするから・・・。」
的外れな言葉を後ろに聞きながら、私はマンションを去った・・・。





















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