吉澤 石川



今日、独りで泣いている吉澤さんを発見した。
××「…どうしたんですか?」
 と思い切って声をかけたら、
吉澤「…グスッ、エ〜ン!」
 といきなり抱きつかれた。
××「…あ…ち、ちょっとぉ〜…」
 僕は吉澤さんの意外な行動にびっくりしてしまった。
 しかし、吉澤さんも泣きたい時があるのだろうと思いそのままにして一人、悦に入っていると、

××「…(ヤベッ!石川さんだ!)」
 石川さんに今の現場を見られてしまった、
 逃げる石川さんを慌てて追いかけようとしたが、
吉澤「…ダメッ」
 と言って僕の服を掴んで離そうとしなかった。

 しかし、吉澤さんは何で「…ダメッ」と言ったのだろうか…?


 あの後吉澤さんと何とか別れ、少し頭を冷やそうと
 控え室へ戻った。

××「(…石川さんにはどう説明しようかな……)」

 そんなことを考えながら控え室へ入ると―

石川「…あっ、どうも……」

 石川さんが一人だけいた、

××「ども。(何で居るんだよ……)」

 僕は軽く挨拶をしたがそれ以降まーったくと言っていいほど
 石川さんの顔を見ないで新聞ばかり読んでいた。
 いや、眺めていたと言ったほうが正しいかもしれない。


 10分ぐらいの沈黙の後、意外にも僕より先に石川さんが口を開いた。

石川「…2人ってそういう関係なんですか?」
××「そういうってどういう?」

 石川さんの言っていることはほぼ分かるが、
 あえて僕は逆に尋ねてみた、

石川「……付き合っているんですか?」
××「だったら?」
石川「……」
××「何でそんな困ったような顔をするの?」
石川「…だって……」
××「だって、何?」

石川「………なんでもないです…」

 そう言うと石川さんはなぜか控え室を足早に出て行った。

××「???(何で出て行くの?)」

 その理由が全く分からず考えていると、

中澤「なんか石川が泣きながら出て行ったけどなんかあったん?」

 と、中澤さんがこう言いながら控え室に入ってきた。

××「??いや、特に何も……」

 別に僕は石川さんを罵倒したわけでもなく批判したわけでもない、
 ただ質問に答えただけだ。

 だから何でこういう展開になるのか僕自身さっぱり分からなかった。


 そしてあれから数日たったある日のこと、
 仕事も終わり返ろうとすると、
吉澤「××さぁ〜ん!」
××「ん〜?なに?」
吉澤「これからどこか行きます?」
××「いや、まっすぐ家に帰るけど…」
吉澤「じゃあ、××さんの家に行ってもいいですかぁ?」
××「え゛」
 僕はものすごく動揺した、だって女の子が一人暮らしの男の家に行きたいって言うから…
 いや、吉澤さんに変な下心はないハズ、純粋に僕の家に興味があるからこう言ったのだろう……と勝手に思っておこう。
××「別にいいけど…何もないよ?」
吉澤「じゃあいいんですかぁ、やったぁ。」
 …しっかし何で僕の家に行きたがるんだろう……


 ガチャ
吉澤「へーっ、すんごい綺麗ですね。」
××「あっそう?」
 僕の部屋は意外と片付いています、はい。
 でも、物ばっかあって狭いのが欠点。
吉澤「きゃー!かわいい!」
××「えっ?」
 僕の部屋にそんなものは置いてはいないハズ…
 何を見て”かわいい”だなんて…?
吉澤「何でこんなかわいい馬の人形がこんなにたくさんあるんですかー?」(↓参考)
××「UFOキャッチャーで取ったからだけど…」
吉澤「エーっ!こんなに多くですかー!」
 まあ、70頭近くいればそう言われても仕方ないか…
吉澤「××さんにこんなかわいい趣味があるなんてチョー意外♪」
××「あっそう…?」
 うーん、知らず知らずのうちにツカミはOKのようだ。
 ボーイッシュみたいだけど、やっぱ吉澤さんって女の子なんだなぁ。
 

夕食を食べ終え2人でテレビを見ていた時のことだった、
××「(…吉澤さんって結構指が長いんだなぁ…爪も綺麗にしてある、
   やっぱり女の子だなぁ…)」
 僕の吉澤さん観賞はまだ続く、
××「(…横顔も綺麗だな…生で見る分には別に太っているとは思わないなぁ、
   TV写りでそう見えるのかな?)」
 と突然吉澤さんが僕のほうを見てこう言った、
吉澤「ねえ、何でさっきから私のことをじろじろ見ているの?」
 うっ、ばれないように見ていたつもりなのに……正直に言おう、
××「いやぁ、結構指が長いなぁ〜と思いまして…」
吉澤「そう?ありがとう。でも顔のほうも見ていなかった〜?」
 ハイ、思いっきり見ていました。
 でもあえて僕は嘘をつかせてもらいます。
××「いいえ、気のせいじゃないですか?」
吉澤「うっそ〜、絶対に見てた〜!」
××「証拠は?」
吉澤「だって私見てたも〜ん。」
 これ以上意味のない嘘をついてもしょうがない、言おう。
××「ハイ見ていました、嘘をついてすいません。」
吉澤「やっぱり〜」
 良かった、怒っていないようだ。
 しかし、
吉澤「何で私の顔を見ていたの?」
××「………吉澤さんの横顔…いいなぁ〜と思って……」
 もう全部言っちゃおう。
吉澤「やっだぁ〜!もしかして私のこと好き?」
××「はいそうです、そうです。」
 もういいや、どうにでもなれ。
吉澤「…………ホント?」
××「えっ?」
 吉澤さんの意外なリアクションに僕は戸惑った、
 今から考えると”あの”前兆だったんだな…と思った。


吉澤「本当に私の事…好きなんですか?」
××「え…いや…あの…その……」
 別に吉澤さんは好きでも嫌いでもない、僕は“どうせ誰かと付き合っているんでしょ”
 って思っていたから吉澤さんを異性として意識したことはあまりない。
 だからなんて答えたらいいか見当がつかなかった。
吉澤「……どうなんですか?」
 そう言うと吉澤さんは僕に迫ってきた。
××「んんと……」
 何て答えていいのか分からないのに吉澤さんが迫ってくるからぜんぜん考えがまとまらない。
吉澤「ねぇ、どうして答えないんですか?」
 そう言うと吉澤さんはまた僕に迫ってきた。
××「あ…あの…………ワッ、」
 迫ってくる吉澤さんと距離をおこうと一歩下がろうとしたら手が滑り、僕は仰向けになってしまった。
××「いやあ、手が滑っちゃったよ…ハハハ…」
 これで少しは場が和むかと思ったが、吉澤さんはこの後思いがけない行動に出た。


吉澤「××さん……私は××さんの事が…………好きです……」
 そう言うと吉澤さんは僕の両手をつかみ、馬乗りのような体制をとった。
 (マウントポジションを吉澤さんが取ったようになっていた)
××「へっ?」
吉澤「……………好きです、××さんの事……」
××「…………じゃ、じゃ、じゃあ僕のことが本当に好きって言うなら
   口先だけじゃなくて態度で示して欲しいな、態度で。」
 ひょっとしたら吉澤さんはその場の雰囲気に流されて好きと言ってしまったのかもしれない、
本当に好きなら態度でも示せると思ったからこう僕は言った、決して苦し紛れではない。
吉澤「………何をしたら信じてもらえます?」
××「僕なら、キスをされたら信用するよ。」
 いくら好きと言ってもいきなりキスをするのはさすがに引くだろうと僕は思った。
吉澤「…………」
 しかし、吉澤さんは黙ってその大きな瞳を閉じて唇をゆっくりと僕に近づけてきた、僕の考えは甘かったようだ。
××「じょ、冗談ですよ、吉澤さん…」
 一瞬、躊躇したように見えたが、さっきと変わることなくゆっくりと唇を近づけてくる。
××「(………もうだめだ!)」
 覚悟を決めて僕も目をつぶった、
 次の瞬間―


 ピンポ〜ン
吉澤「……(えっ)」
××「(誰だ?)」
 吉澤さんがインターホンに気を取られている間に僕はマウントポジションから脱出し、
××「誰か来たみたい、ちょっと待って、」
 と言って玄関へ向かった、後一歩遅かったら……
 ガチャ、
石川「こんばんは…」
 なんとそこには石川さんがいた。
××「何か用ですか?」
石川「あの…ちょっといいですか…?」
××「え?ん〜と……」
 中には吉澤さんがいる、さてどうしよう?
石川「……その靴…よっすぃ〜のだ………って事は…」
××「ああ…ハイ、吉澤さんがいますが…」
 なぜか気まずい、
石川「じゃあ…いいです、出直してきます。」
 そう言うと石川さんは去っていった。
××「………?」
 その後、吉澤さんは家路に着き、何事も無く(起こりかけたが)事を終えた。

 ふう〜


―そしてそれからしばらくたったある日のこと、
××「あっ、矢口さん。」
矢口「ん〜、な〜に〜?」
 と僕が矢口さんに声をかけたら、
 突然、
矢口「あっ!××さんに聞きたいことがあったんだ!」
 と声を発した。
××「なんすか?」
矢口「あのさー、最近よっすぃーとなんかあった?」
××「な、な、な、なんすか急に…」
 矢口さんがこんなことを言うって事は、まさかあの事がばれたのであろうか…
矢口「あのね、最近よっすぃーの様子が変だから。」
××「へ、変?例えば?」
矢口「んーと、ボーッっとしている事が多かったりするし、
   なんか何やっていても上の空って感じでがするんで。」
 どうやらあの事はばれていないらしいが、
××「ふーん、でもさぁ、なんで俺に聞くの?」
矢口「だってさー××さんの話をするとやたら動揺するから、
   何かあったのかなーって思って。」
××「……」
 思いっきり何かありました……でもそんな事言える訳ありません……
××「い、いや…別に……」
矢口「ホントに〜(疑)」
 勘弁してください、矢口さん。
××「…無いです。」
矢口「ふ〜ん、まあおかしいのはよっすぃーだけじゃないからなぁ。」
××「へー、誰ですか?」
矢口「利華ちゃん。何か知らないけどやたら××さんの事を聞いてくるのよ。」
××「?何を聞いてくるんですか?」


矢口「どこに住んでいるの?とか、彼女いるんですか?とか、
   そんなこと本人に聞けよ!見たいな事を聞いてくるの。」
××「……」
 確かに石川さんの不審な行動は以前もあった、そのことを考えると………
矢口「フフフフ、あまり2人を困らせないでね。」
××「えっ?」
 そう言うと矢口さんは去っていった。
 吉澤さんはともかく、石川さんも僕のことを……?
 いや、まさか、まさか……ねぇ…………


それから数日たったある日のこと、
××「(今日は何をしていようかな…)」
 今日はオフ、
 でもやることが無い。
××「(金も入ったし、大井に行くかな…確か今日やっていたよな…?)」
 ちなみにここでの”大井”は大井競馬場の事だ。

 それで仕度をし、家を出ようとした瞬間、
プルルルルル…プルルルルル…
 家の電話が鳴った。
××「チッ、誰だよ…」
 無視するのも悪いと思い渋々電話を取ると、
××「もしもし?」
 僕は相手の声を聞いてかなり驚いた、
 その声の主は―


石川「…もしもし、××さんですか?」
 何と石川さんだった、しかしなぜ……
××「なに?何か用?」
石川「あの…今日大丈夫ですか?」
××「えっ?」
 これはもしかしてお誘い?
 いや、そんなわけない、ここは大事を取って断ろう。
××「ごめんね、今から出かけるから。プツッ。」
 失礼かもしれないがすぐに電話を切った。石川さんは携帯から電話を
 していたと思うからまぁ言い訳はつくでしょう。
××「さ〜てと、行きますかな。」
 鍵をかけおもむろに外を出ると、
××「えっ!な、な、な、何でいるの?!」
 何と僕の目の前には石川さんがいた……なぜ?

石川「ごめんなさい……どうしても今日は……」
××「えっ、っていうかさぁこの辺から電話してたの、さっき?」
石川「…はい、そうです……」
 う〜む、こうなるとこのまま石川さんを無視するわけにも行かない、
 どうしよう……?
石川「わがままなのは分かってます、でも………」
 うっ、そんな悲しそうな目(しかも上目)で僕を見ないでください…………

××「……負けましたよ、いいですよどこに行くんですか?」
石川「………えっ?いいんですか?」
××「その代わり、昼飯おごってね。」
石川「…はい!じゃあ行きましょ!」
 …………石川さん喜んでいるみたいだし、これでいいのかなぁ?


石川「ねぇねぇ、こっち!こっち!」
××「ハイハイ、今行きますよ。」
 何か石川さん、とても機嫌がいいみたいだ。
石川「これとこれ…どっちにしようかな…?」
 2着の服を手にとって僕に見せた、石川さんは何着ても綺麗だと思うけど…
××「う〜ん……これがいいんじゃない?」
 僕は苦し紛れに違う所にある真っ白いワンピースを指差した。
石川「えっ、体のラインが分かっちゃいますよ〜!」
××「まあ試着ぐらいいいでしょ?」
 僕は店員に試着を申し付けた。
石川「………う〜ん、似合います?」
××「似合いますよね?」
店員「ええ、似合うと思いますよ。」
石川「…そうですか?」
 やや不満げな石川さん、根拠は無いけど似合うと思う。

(誰か石川がワンピースを着ている画像持っていない?)


“サーッ”
試着を終えたらしく、カーテンを開けた。
××「………」
店員「……」
石川「どうしたんですか?黙っちゃって……?」
 あまりにも似合いすぎて僕は声が出なかった、
 店員もそうだと思う。
 (画像が無いので想像してくれ、俺は似合うと思っている)
××「…すんごくいいですよね?」
店員「…ええ、大変お似合いですよ。」
石川「そうですかぁ?他の方がいいと…」
××「いや、絶対そのほうがいいです!」
 僕の想像をはるかに超え、恐ろしいくらい似合っていた。
 他の何か目じゃない。
石川「…ホントに似合っています?」
××「絶対に似合ってます、それ買った方がいいですよ!」
 しばらく石川さんは考えて、
石川「…××さんがそこまで言うならこれにします。」
 どうやら決めたようだ、
 でも、石川さんってスタイルいいよなぁ〜
 いたずらに細くないし、だからと言って太いわけじゃないし、
 出てるとこは出てるし……


石川「もう7時かぁ…これからどうします?」
××「ん……(どうしよう?)」
 今日1日は石川さんの買い物に付き合って日が暮れてしまった、
 (もちろん昼飯はおごってもらった)
 これからどうするって言われてもなぁ……

 と悩んでいると石川さんが、
石川「あっそうだ、この前××さん家に行けなかったから、
   ××さん家に行きたいな。」
××「えっ?」
 僕はものすごく動揺していた、だって僕の家に行きたいだなんて言うから……
××「あ…今日はダメなんだ…」
石川「何でですかぁ?」
××「いやちょっとね…理由を話すと長くなるから言わないけど…」
石川「ふーん……じゃあ仕方ないか……」
××「(ほっ。)」
石川「今日はありがとうございました、これで帰ります。」
××「ああ…そう。」
石川「じゃあ、さようならー!」
 石川さんは去っていった。

 今考えると、何で僕は石川さんの誘いを断ってしまったのだろう?
 僕の家に行きたいだなんて…こんなチャンス滅多に無いのに……
 やっぱり連れて来るべきだったのだろうか…………どうなんでしょう、皆さん?


××「(やっぱり引きとめよう)」
 そう思い、石川さんを連れ戻そうとしたが、
××「(あれ…もういないや……)」
 すでに石川さんは居なくなっていた。
××「(しょうがない、帰るとするか…)」
 僕は失意のまま家路についた。

××「(帰ったらすぐに寝ようかな)」
 そう思いながら自分のアパートに着くと、
××「……吉澤さん?」
 なんと僕の部屋の前で吉澤さんがたたずんでいた。
××「ど、どうしたの?」
吉澤「…ちょっと用が有ったから来たんです。」
××「えっ、ずっとここに居たの?」
吉澤「はい…30分ほどですけど……」
 30分も待っていてくれた吉澤さんを追い返すのはさすがに悪いと思い、
 僕は吉澤さんを部屋に招いた。

 しかし、石川さんを家に連れて来て居たら一体どうなっていたのであろうか……………


 僕はお茶を出し、しばらく談笑していた。
 吉澤さんには面と向かって“好き”と言われたが、変に意識するのも
 おかしいだろうと思い、差し障りが無い程度に話していた。
××「明日は仕事あるの?」
吉澤「はい、ありますけど…」
××「ここにいていいの?もうそろそろ帰ったほうがいいんじゃないの?」
 僕は吉澤さんに早く帰るよう促した、吉澤さんは完全に親元を離れて
 生活しているわけではないらしいから、注意程度に僕はこう言ったのだ。

 ……と言うより吉澤さんと2人でいるのが何となく嫌だというのが本音だが。
吉澤「えっ……それは大丈夫です。」
××「何で?」
吉澤「…………明日の仕事の都合で、ホテルに泊まるって親に言ってあるから…」


××「ふーん、じゃあそのホテルまで送ってあげるよ。」
吉澤「………」
 あれっ?吉澤さんが黙り込んでしまった、僕何か変なこと言ったかな…?
吉澤「あの……そうじゃなくて…………」
××「えっ?」
 今日吉澤さんはホテルに泊まる、だから僕はそこまで送ると言った。
 ……何か間違っているのだろうか?分からない………
吉澤「………ホテルに泊まるというのはウソです。」
××「ええっ?!」
 何でそんなウソを僕に、そして親御さんについたのであろうか?
 じゃあどこに泊ま…………まっ、まさか…………
××「……僕の所に泊まるつもりは…無いよね?」
 ひょっとしたら僕の勘違いかもしれない、一応聞いてみよう。

吉澤「………………………ダメですか?」
××「(ど、ど、ど、ど、どうしよう……)」
 吉澤さんのその一言に僕の頭の中は真っ白になった、
 何て言って良いのか分からないくらい僕はおろおろしていた。
吉澤「……別に何もしませんよ、ただ泊まりたいだけですから………」
××「あっ…そう、じゃあ……別に構わないけど…………」
 今考えてみると“何もしませんよ”と言う言葉がものすごく引っかかるのだが、
 その時そこまで頭が回らないほど動揺していた。
 “ただ泊まりたいだけ”って言っているから……別に大丈夫………だよな…?


××「お風呂いいですよー。」
吉澤「はぁーい。」
 僕が風呂から上がり、吉澤さんの番になった。
 今考えると吉澤さんのあの荷物は着替えだったのか……
吉澤「じゃあ、入りまーす。」
××「どうぞ。」
 吉澤さんは風呂場へ行った。
××「(“何もしませんよ”って言っていたから……何も無いよな…?)」
 そう思いつつも風呂場で入念に体を洗っていた僕がいたのだが……

―しばらくすると、吉澤さんが風呂から上がった。
吉澤「はぁー、あがりましたぁー。」
××「は………」
 振り返ると吉澤さんはバスタオル1枚だけの格好だった、
 不意を付かれた格好になり、かなりドキッっとしてしまった。
××「(と、とりあえずこの場を離れよう…)風呂の火、消してきます…」
吉澤「はーい。」
 僕は風呂の種火を消し、時間を稼ぐためにトイレにもよった、
 もう着替え始めているかと思い戻ってみると―
××「(き、着替えてねぇ…)」
 吉澤さんは相変わらずバスタオル1枚のままだ、
 …しかし、艶めかしい脚をしているなぁ……
 こんな姿を見れる俺ってすっげぇ幸せかも………


××「(い、いかん、そうじゃなくて…)風邪引きますよ?」
吉澤「えっ?」
××「そんな格好していると風邪引きますよ?」
吉澤「何か悪いですか?この格好?」
 はい、目のやり場に困ります…
吉澤「………ヤダ、××さんのエッチ。」
××「(うっ)」
 僕の心をまるで読んだかのように洗面台へ向かい着替えてきた、
 吉澤恐るべし…… それからしばらく時間がたった、
 吉澤さんがテレビ欄を見ているようなので、
××「何か見たいのあります?」
吉澤「いえ、別に…」
 別に僕も見たい番組は無い、今日は石川さんと歩き回ったから
 疲れた、することも無いしもう寝よう。
××「じゃあ僕寝ます。」
吉澤「…………そうですか。」
××「そっちは?」
吉澤「私も……寝ます…」
××「そうですか、じゃあ電気消しますね。」
 そういって僕が電気を消したその瞬間―


吉澤「××さん………」
 そう言って吉澤さんは背後から僕の右手を掴んだ。
 僕は大して気にせず吉澤さんの方へ振り向いた。
××「はい?なん……」
 吉澤さんは僕の言葉をさえぎるように唇を重ねてきた。
××「わっ…何ですか、いきなり……」
 僕は後ろに一歩下がって吉澤さんの唇から離れた、
 …………ものすごく柔らかかった………………
吉澤「…やっとこれで私が××さんのことを好きだって信じてくれますね?」
××「そ、それは冗談だって言ったじゃないですか……
   別にこんな事しなくても……」
吉澤「こんな事?やれと言ったのは××さんじゃないですか……
   私の………キス…そんなに嫌でしたか………?」
××「え、あ、いや…そうじゃなくて…」
 こんな時なんて言ったらいいのだろう?
 キスをされたせいで冷静に考えられない。
吉澤「…そうじゃなくて何ですか?」
××「あ…え…その………………僕寝ます…」
 話を反らす為に僕は強引に寝ようとした、
吉澤「……勝手に寝ないでください。」
 やっぱりダメだった。
 しかも前の時のように馬乗りの体制をとられていた、ピンチ。


 どうしよう、なすすべが無い。
××「(ん゛ん゛ん゛ん゛〜ヤバイ〜!)」
 僕がそう悩んでいる隙に吉澤さんはまた唇を重ねてきた。
××「(……うそっ!)」
吉澤「ん……ぅん………」
××「(だめだ……もう逃げ道が無い……)」
 僕は覚悟を決めた、
 というより、2度目のキスで僕の理性は飛んでいた、
 今僕の頭の中にあるのは吉澤さんを抱きたいという欲望だけだ。
××「……吉澤さん!」
 吉澤さんが上になっていた体制から逆転し、今度は僕が上になった、
 もう自分を制御できない。
××「………吉澤さん……んっ………」
 今度は自分からキスをした、
 吉澤さんをしっかり抱き寄せ徐々に舌を絡めていった。
吉澤「ん……んんっ!………」
 最初吉澤さんは舌を絡めることに驚いていたようだった。
 だけど、徐々に慣れていった様でだんだん吉澤さんの方から
 舌を絡めるようになっていった。
吉澤「はぁ………はぁ………はぁ………」
 インターバルをおく為に顔を離した、
 吉澤さんの目はかなり虚ろになっていた、何だかボーっとしている……
××「(よ、よし、もう行こう……)」
 僕は吉澤さんのパジャマのボタンに手をかけた……
吉澤「……(ビクッ!)」
 その瞬間吉澤さんが“ビクッ!”とした、体が震えている……
 その時僕は我に帰り“こんなことをしていいのだろうか…?”とふと思った。
××「吉澤さん……いいんですか…僕がこんなことをして……?」

吉澤「…(コクッ)」
 微かに吉澤さんはうなずいた。
吉澤「続けてください……………」
××「…………いいんですね?」
吉澤「……………………やさしくお願いします……」
 この言葉に僕の理性は完全に破壊された、
 僕の吉澤さんを抱きたいという欲望は止まらない………


××「じゃ、じゃあ…いきます……」
吉澤「はい………」
 僕は再び吉澤さんのパジャマのボタンに手をかけ、
 上から順に1つずつボタンを外していき、そしてブラも外した…
××「(ぬ、脱がしちゃった……)」
吉澤「………」
 僕の目の前には程よい大きさの胸が……
 僕はゆっくり、優しく胸を愛撫した…………
吉澤「ん……」
 数分胸を愛撫し、次に僕は右手の指先で左の乳頭を優しく愛撫した……
吉澤「ん!……」
××「(……痛いのかな………)」
 そう思った僕は右手の愛撫を止め、今度は舌で右の乳頭を舐めた…
 これなら痛くないと思う…
吉澤「ん!……………」
××「(舌でもだめかな…)」
 そう思った次の瞬間、
吉澤「……あぁ…………」
××「(声が漏れた…感じているのかな……)」
 僕はそのまま続けた…
吉澤「んっ…………………はぁ…はぁ…はぁ……」
××「(さっきよりも息遣いが荒くなったような…)」
 吉澤さんは感じているのだと思い、僕はその後も必死に愛撫を続けた……


××「いいですか……」
吉澤「はい……」
 僕はとうとうズボンを脱がしパンティー1枚の状態にした、
 無論僕も同じパンツ1枚の状態。
 そしてパンティーの上から吉澤さんの陰部に右中指を当てた…
吉澤「…(ビクッ!)」
××「(………濡れてる…)」
 吉澤さんの陰部はパンティーの上からでも分かるくらい湿っていた…
××「(よ、よし、このまま………)」
 と思ったが、
吉澤「……………」
××「(……震えている………)」
 やはり直接陰部への愛撫へとなる緊張するものだろうか?
 吉澤さんを落ち着かせるため、僕は陰部への愛撫を止めてキスをした…
××「ん…………………」
吉澤「………んん…………………」
 何となくだけど落ちつたみたいだ、
 今度は陰部の愛撫と同時にキスをしながらやってみよう、
 そうすればうまくいくかも…
××「ん……………」
吉澤「……………………んん!」
 苦しがっているようなので、今度は首筋にキスをしながら………
吉澤「あっ!………………あぁぁ…………」
 吉澤さんの喘ぎ声に僕も反応したのか、
 陰部への愛撫が徐々に激しくなっていった……


 そして僕はパンティーをおろし、吉澤さんを一糸纏わぬ姿にした……………


××「(僕も脱ごう……)」
 吉澤さんだけ裸というのも何だか悪いと思い、
 僕もパンツを降ろし裸になった……
吉澤「(………わっ!…あんなにおっきくなっている………………)」
 普通、肉棒を見られることに羞恥心を覚えるものだが、
 今の僕はそんなことを感じないほど興奮していた………
××「(よし、直接………)」
 僕は直接陰部に右中指を当て再び愛撫を続けた…
吉澤「……うっ………………はぁ…はぁ…………」
 僕の指の動きが激しくなるに連れて、吉澤さんの息遣いも激しくなっていった…
吉澤「……あっ……………………うぅ……………」
 ??何だか吉澤さんの様子がさっきと比べておかしい……
 あまり声を出さなくなったような…?
××「どうしたんですか吉澤さん…声が………」
吉澤「…だって声を出すと変じゃないかって…………」
××「………………別に変じゃないですよ…」
吉澤「だって…………」
××「…だって声が出るほどの快感を抑えてたら…
   だめになっちゃいますよ……」
吉澤「……そうですか…………?」
××「………っていうか、僕は声を聞きたいし………」
吉澤「えっ?」
 しまった!何て卑猥なことを……
 もっとうまく言わないと…
××「…我慢している声を聞くより、素直に感じている声を聞きたいんです……」
吉澤「………………はい、分かりました……」
 ふぅ、どうやら何とかなったようだ。 そして僕は舌を陰部に近づけ、クンニを始めた………


××「クチュ……ピチャ………」
吉澤「あっ!……あぁぁぁ………」

 刺激が強いのか、吉澤さんの声はさっきよりも大きくなった…
 さらに僕は奥の方まで舐め、最後には舌を陰部に挿入していた……

××「ん…んん………クチュ……クチュ…………」
吉澤「ああっ!………いやあぁぁぁ……………」

 奥を舐めるにしたがって吉澤さんの声も大きくなっていく…
 最後の方は叫び声に近かった……

吉澤「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ…」
××「(すごく呼吸が荒い………)」

 今ので陰部は十分に潤っている…
 僕は決意した。

××「…………いきますよ…」
吉澤「はぁはぁはぁはぁ………(コクッ)」
 乱れっぱなしの呼吸をしながら微かにうなずいた…


 それを確認した僕は、右手で自分の肉棒を持ち…そして…………


××「……ん………………………あぁぁ……」
吉澤「ん……………………………はぁ…はぁ…はぁ…(入っちゃった……)」
 僕は正常位の状態で吉澤さんを見つめた……
××「……………」
吉澤「……………」
 数秒間見つめ合った僕達は何かを確認するかのように唇を重ねた……
 そして僕はゆっくり腰を動かし始めた……
××「はぁ………はぁ………はぁ………」
吉澤「あっ………あっ………あっ………」
 吉澤さんの様子を見計らい、徐々に腰の動きを激しくしていった……
××「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
吉澤「あっ…あっ…あん…あん…あん…」
 しばらく続けると、僕は限界まで近づいた…
××「……はぁ………………イキそう………」
 僕はいったん動きをやめ、そう呟いた…
吉澤「はぁ………はぁ………はぁ………………」
××「………イッっていい………………?」
吉澤「…………いいよ……………イッても……………」
 その言葉を聞き、僕は再び腰を動かし始めた…
××「……………はぁ…はぁ…イクよ…」
吉澤「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……うん……」
 僕はイクために腰をさらに激しく動かした……
吉澤「あっ…あっ…あっ…」
××「……………………ウッ!」
 イッた……吉澤さんのお腹の上に出してしまった……………
 中に出すのは悪いと、僕の頭のどこかにあったようだ…
吉澤「……………いっぱい出たね……」
××「ご、ごめん………中に出すのはちょっとと思って…………」
吉澤「…………気持ちよかった…?」
××「うん…………」
吉澤「私も良かったよ……………とっても……」 そして後処理をし、しばらく互いに抱き合った後
 僕達はやっと眠りについた………


そして朝―
××「ん…何時だ…?」
 カーテンの隙間から漏れている朝の日差しで僕は目が覚めた。
××「8時か……吉澤さんまだ寝てるか…」
 僕は隣にいる裸の吉澤さんを見て、改めて昨晩の行為の実感を持った…
××「…飯食おう………」
 僕は吉澤さんを起こさないようにソーッと台所へ向かった。
 もちろん、服着て。

吉澤「(………ん、何…?)」
 しばらくすると台所に吉澤さんがやってきた。
××「あっ、今朝飯作ってるんで、シャワーでも浴びて待ってください。」
吉澤「……………はい。」
 そう一言だけ言うと吉澤さんは着替えを持ってバスルームへ行った。

―約30分後、吉澤さんがシャワーを終えると同時に朝食の準備も出来た。
××「あ、吉澤さんそっちね。」
吉澤「はい………」
 食卓にはご飯・味噌汁・焼鮭を並べた。
 いっつもパンなのだがたまたま無かったのである。
××「……」
吉澤「……」
 無言のまま味噌汁をすする音だけが部屋に響く、
 とうとう何の会話も無く両者綺麗に食べ終えた。
吉澤「……私…行きます。」
××「あ、行きますか?」
 そう言うと吉澤さんはサッと仕度をし、足早に玄関へ向かった。
吉澤「…それじゃあ………失礼します………」
××「ん…じゃあまたね……」
 もっと言うことがお互いあると思うのだが、口に出せず会話にならない。
 でも一つ言える事は、僕と吉澤さんは特別な関係を持ってしまったという事だ………


 その後、僕と吉澤さんの関係はというと、
吉澤「………おはようございます。」
××「あ、ああ、おはようございます……」
 挨拶は交わすものの、何かぎこちない、
 そのためか吉澤さんとあまり話さなくなってしまった。
 皮肉にも前よりも関係が悪化してしまったのだ、しかも、
××「ねぇ石川さん、」
 とこんな風に他の女性に話し掛けただけなのに吉澤さんが
 僕を睨むようにもなっていた。
××「(どうすればいいんだろ………)」
 このような不可思議な関係に悩み数日たったある日、
 僕と吉澤さんのこの関係に気づいたかのようにこう石川さんが口を開いた…
石川「最近、よっすぃ〜となんかあったんですか?」
××「(ドキッ)………いや、別に……」
石川「…ふ〜ん………」
 その時は何事もなく良かったのだが(もちろん、その場に吉澤さんはいない)、

 その日は早く仕事が終わり、6時ごろには家にいた、
 そしてしばらくして……

 プルルルル…プルルルル…
××「(誰かな…?)」
 ガチャ、
××「もしもし?」
石川「もしもし、石川です…」
××「石川さん?何か用?」
石川「あの…お話があるんで…今からお邪魔してもいいですか…?」
 話があるんだったら今すればいいのに…僕は一瞬そう思ったが、
××「(…電話だと何かと都合が悪いのかな?)…別に構わないよ。」
 こう思い、石川さんを招き入れることにした。
××「じゃあ、待ってるね。」
石川「はい…失礼します…」
 ガチャ、
××「んじゃあ…ちょっと片付けようか…」
 別に僕は石川さんが来る事に何も猜疑心を持たず、部屋の片付けをしていた。


―そしてしばらくたって、

 ピンポ〜ン、

××「(おっ、来たか)はーい、今開けるね。」
 ガチャ、
石川「…急にすいません……」
××「別にいいよ、さぁどうぞ。」
 僕は石川さんを部屋に入れ、お茶を出し一息ついたところで、
××「で、話って何?」
 早速本題に移った。
石川「………もう一度聞きますけど、よっすぃ〜となんかありました?」
××「…だから無いって言ってるじゃん。」
 僕は石川さんがなぜこのような質問を2度も聞いてくるのか不思議でしょうがなかった。
石川「……何でそうウソをつくんですか?」
××「(ビクッ)……ついてないよ、そう言うんだったら何か根拠はあんの?」
 確かに僕は嘘をついている、だけどそれを示す証拠は何も無い。
石川「………」
××「無いんなら帰ってくんない?不愉快だからさぁ。」
 石川さんは何も答えない、心の中で“勝った”と思った、
 が…………
石川「…………何日か前の朝、よっすぃ〜が××さんの家から出て行くのを見たんです…」
××「(な、なにぃ!)…それで?」
 僕は底を見せまいと必死で切り替えした。
石川「…その日、よっすぃ〜に聞いたら友達の家に泊まったって言ってました……」
××「……それで?」
石川「…………………ここに泊まったんですか…?」
××「だったら?」
石川「…私は泊まったかって聞いているんです!泊まったんですか!?」
 珍しく石川さんが感情をあらわにした。
 その勢いに負けないよう、僕はあしらうようにこう切り替えした。
××「別にさぁ、仮に泊まったからって石川さんには関係ないでしょ?」
石川「………………」
 “今度こそ勝った”僕は勝ちを確信した。
××「話が無いんなら帰ってくんない?」
石川「……………関係あります…私は………私は………」
××「“私は……”なんだよ?」
 僕はなかなか帰らない石川さんに苛立ち、僕の言葉もやや刺々しくなっていた。
石川「……………私は……××さんが………好きだから…」


××「えっ?!」
 僕はかなり度肝を抜かれた、まさかこんな答えが返ってくるなんて……
××「……………」
 予期しない返答になんて言葉を返していいか分からなかった。
石川「………泊まったんですか…?」
××「……ああ、泊まったよ。」
 なぜか石川さんに負けた気がし、僕は正直に答えた。

石川「………………付き合っているんですか…?」
××「いや、付き合ってないよ。これは本当だよ。」
 この言葉に石川さんは複雑な表情を浮かべていた。
石川「……………」
××「……………」
 お互い言葉を発しなくなり、沈黙が続いた…
××「(しょうがない…)」
 僕はこの沈黙を打開するため“ある案”を突きつけた。
××「明日仕事?」
石川「?いえ……オフですけど………」
××「じゃあさあ、明日1時までにここに来てくんないかな?」
 そう言って僕は来てもらう場所を手元の地図で指差した。
石川「…何でですか?」
××「明日僕が1時までにここに来るからその時に、吉澤さんを選ぶか、石川さんを選ぶか、両方とも選ばないかを言うよ。別に今返事が欲しいわけじゃないでしょ?」
石川「……そうですけど…」
××「他になんかある?」
石川「…………………分かりました、1時までにそこに居ればいいんですね?」
××「頼むよ。」
 何とか納得してもらい、石川さんは帰っていった。
××「しっかしどうしようかな……?」
 僕は眠るまでどうしようか悩みつづけたのは言うまでも無い。


―そして次の日の朝

××「……どうしようかな………」
 僕はなかなか考えがまとまらず、朝から悩んでいた。


 そしてあっという間に1時になろうとしていた、
××「………しょうがない…ああ言おうか……」
 僕は自分自身に強引に決断させ、家を後にした。
××「(間に合うかな…)」
 僕は少々時間に不安を覚えつつも自転車に乗った。
 僕は車なんて持ってない。
××「(…さて行くか)」
 僕は自転車を漕ぎ、石川さんが待つところへ向かった。

 僕が住宅街の縁石もガードレールも無い細い道路を走っていた時のことであった、
 後ろからかなりスピードを出した車がやってきた。
××「(こんな細い道なのに……しょうがねーなー)」
 僕はなるべく左により、車が通るの警戒しながら走っていた。
 とその時、

 ドン!

××「うわっ!」
 後ろの車がスピードを緩めず、僕に追突してきた。
 僕は前に吹き飛ばされ頭から電柱にぶつかり、落下する際も頭から落ちた。
××「…(ガクッ)」
 僕はそのまま意識を失った…………


―そして翌日のこと
石川「(××さん…何で来なかったんだろう…)」
 石川は昨日××が来なかったことについて悩んでいた。
 彼女にはまだ事故の連絡は入ってはいない…
矢口「ねー、テレビ見ていい?」
メンバー8人「別にいいよ。」
 収録も終り、楽屋でメンバーは一息をついていた。

 プチッ、

矢口「今の時間はワイドショーがやっているかな。」
 と矢口がワイドショーにチャンネルを変えたときであった、
TV「次に事故のニュースです。タレントの××さんが昨日の1時ごろ
  車に追突されるという事故がありました。」
吉澤「えっ!どういうこと…」
石川「!?」
保田「えっ!ウソ―!」
矢口「しっ!聞こえないよ!」
 矢口はそう言ってみんなを静かにさせ、かたずを飲んでテレビに耳を向けた…
TV「事務所の話によりますと、頭をかなり強く打っており意識不明の重体と
  言うことです。」


メンバー「………」
 あまりにも悲惨な事実に誰も言葉を発しようとしなかった、
 いや、むしろ出来なかったといった方がいいかもしれない。
矢口「ねぇ!病院に今から行けない?!」
 と矢口が沈黙を破るかのようにこう言った。
マネージャ「だめです、この後もスケジュールが入っています。」
吉澤「何とかならないの?!」
マネージャ「なりません。」
石川「………」
 結局その日は病院に誰も行けなかった。 次の日、仕事先で偶然××のマネージャと会うことが出来た、
 お互い仕事の合間を縫って話していた。
吉澤「××さんは大丈夫なんですか?!」
マネージャ(以下マネ)「医者の話によると一命は取り留めたそうです。」
 その言葉にメンバーがホッとしたのも束の間―
マネ「ただ…脳の方にかなり障害があるらしくて…」
石川「…………どうなんですか……?」
マネ「………いつ意識が戻るかは……わからないそうです…」
矢口「いつ………って……?」
マネ「だから分からないそうです………何年先になるかも知れないと……」
 あまりにもの結果に一同は絶句した、
 そしてしばらくして…
マネ「じゃあ私はこれで……」
保田「はい、どうもありがとうございました……」
 絶望感が漂ったまま、それぞれ仕事に戻った…………


 数日後、ようやく石川と吉澤の2人が病院へ行ける事となった、
看護婦「こちらです。」
 2人は集中治療室に案内された、
吉澤「××さん……」
石川「………」
 2人の目の前には生命維持装置をつけた変わり果てた××がいた…
 集中治療室のため、ガラス越しの面会である。
看護婦「それでは失礼します…」
 案内をした看護婦は去っていった、
 と同時に担当医がやってきた。
石川「本当に…いつ意識を取り戻すか分かんないんですか……」
担当医「…ええ、」
吉澤「……まだ××さんを轢いた犯人って…」
 ××を轢いた犯人は逃走しており、まだ捕まっていなかった。
 と担当医が、
担当医「あ、今日の新聞に捕まったって書いてありましたよ。」
吉澤「見せてください!」
 そう言うと担当医は奥の部屋から新聞を取ってきた、
担当医「これです。」
石川「……タレントの××さんを轢いた犯人は都内の予備校に通う
   19歳の予備校生、この予備校生は“受験に落ちてムシャクシャ
   してたので轢いた、相手は誰でも良かった”と話している………」
吉澤「……こんなことで××さんを轢いたっていうの………」
 あまりにもの短絡的な犯行に2人は怒りをあらわにしていた、
 そのためか吉澤は持っていた新聞をクシャクシャに握りつぶした。


石川「私がいけないんだわ…××さんの誘いを受けたから……」
吉澤「えっ?」
石川「事故の前日、××さんの家に行って“明日の1時に会おう”って
   約束されたの…私が引き受けなかったら………事故に……」
吉澤「……アンタね…アンタがそんな約束しなかったら××さんが
   こんな目に会わなくて済んだのよ!どうしてくれるの!」
 怒り狂ったように吉澤は石川に掴みかかった、
石川「……ごめん…」
担当医「コラ、それは結果論だ。石川さんを責める理由なんて無いぞ。」
 担当医は冷静に2人の間に入り、仲裁をした。
吉澤「………………ごめんなさい…私どうかしてた……」
石川「仕方ないよ……だってよっすぃ〜は××さんの事…
   好きなんでしょ?」
 吉澤は驚きの顔を見せたが、
吉澤「うん……気づいていたんだ………」
石川「私も……そうなんだけどね………」
 それからお互いはいがみ合うことなく淡々と話していた。石川「もう帰ろっか……」
吉澤「……そうだね…」
担当医「そうですか、それでは……」
 担当医は持ち場に、吉澤・石川は病院を後にした。
 都内のソメイヨシノのつぼみが開き始めたころのことだった……


 数ヵ月後、××は集中治療室から個室へ移された。
 担当医の判断により、生命維持装置も外され
 後は意識が戻るのを待つばかりとなった。

吉澤「こんにちは、××さん」
××「……」
 見舞いに吉澤がやって来た、どうやら一人のようだ。
吉澤「こうして会うの……久しぶりだね……」
××「……」
吉澤「あの時からあまり話して無かったね……何でだろ?」
××「……」
吉澤「でもね、あの時から××さんが他の女の人と話していると
   どうしても気になっていた……私を捨てるんじゃないかって……」
××「……」
吉澤「……××さん…」
 突然吉澤は××と唇を合わせた。

吉澤「ねぇ…久々のキス……どうだった…?」
××「……」
吉澤「ねぇ、あの時みたいになんか言ってよ…」
××「……」
吉澤「ねぇ!」
××「……」
吉澤「………グスッ………××さん……」
 吉澤はその場に泣き崩れてしまった、××の意識が本当に戻ってない、
 このままの状態が続くのだろうかと考えると…


 また数ヶ月がたち、事故から1年経とうとしていた。
石川「おはようございます、××さん。」
××「……」
 今日は石川がやってきたようだ、一人らしい。
石川「今日はね××さんのためにモー娘。の新曲を聞かせてあげるね。」
××「……」
石川「まだ一般には発表されて無い曲だから貴重ですよ。」
 石川は××の耳元にラジカセを置き、その新曲を流した。
 とその時、
吉澤「あ、それ聞かせているの?」
石川「あっ、よっすぃ〜。」
 そこに吉澤がやって来た。
吉澤「なんて言うかな…××さん…」
石川「そうですね……××さんのことだから“変なの”とかって
   言いそう。」
吉澤「あはは、そうかもね。」
 どうやら意識が無い××の状態を悲しんでいるばかりではないようだ。
 この2人にも笑顔が戻ったようである。
石川「そういえばもうお昼だね。」
吉澤「何か食いに行こっか。」
石川「そうだね。」
××「……」
 2人は××の病室を後にした。


 2人は病院を出て、近くの喫茶店に入った。
石川「…よっすぃ〜はさあ、××さんの意識が戻ったらどうする?」
吉澤「ん…そうだなぁ……あんまし考えてないや。そういう梨華ちゃんは?」
石川「私はね…ずっと××さんを支えていこうかと思っている……」
吉澤「ずっと?」
石川「うん、元はと言えばあの事故は私が間接的に絡んでいるようなものだから…
   …だから私にできることってずーっと考えていたらこれにたどり着いたの。」
吉澤「別に梨華ちゃんが悪いわけじゃないんだから…」
石川「そうだけど、私は××さんを社会復帰させる手伝いをして、
   その後もずっと見守り続けていたいの。いちパートナーとして……」
吉澤「でもさー、それだと娘。を続けられないよ?」
石川「うん、だから辞めるつもり。」
吉澤「え゛!マジ!?」
石川「両親にもそう話したし、××さんの両親にもそう話した。
   納得してもらうのに時間は掛かったけどいいって言ってくれた、
   だからそうしようと思っているの…」
吉澤「……水をさす様で悪いけどさぁ、××さんは梨華ちゃんを
   選ぶとは限らないじゃん、…ひょっとしたら私を選ぶかも
   しれないし、他の人を選ぶかもしれないし…」
石川「…それならそれで別に構わない、××さんが誰を選ぼうと……」
吉澤「そうだったらどうするの?」
石川「別の形で支えていくよ、別にパートナーという形じゃないと
   支えられないわけじゃないし。」
吉澤「ホントにそれでいいの……?」
石川「うん……そう決めたから…」


 話も食べるのも終り、2人は店を出た。
吉澤「私ちょっと用事があるんだ。」
石川「そう、じゃあね。」
吉澤「ん、じゃあね。」
 吉澤は去っていった。
石川「さて、戻るかな。」

 そして石川は病室へ戻った。
石川「ごめんなさ―い、よっすぃ〜と話し込んじゃって…」
××「…」
石川「あ、そうだ、電話しないといけないんだった。
   ちょっと出てきますね。」
××「…」
石川「私が戻ってくるまで新曲でも聞いててください。」
 そう言うと石川は再び新曲を流し、出て行った。
××「…」


石川「すいませ〜ん、また遅くなっちゃいました。」
 数分後石川が戻ってきた。
石川「あ、聞くの忘れていました。今度の新曲どうですか?」

××「……じゃない。」
 石川は思わず自分の耳を疑った、
石川「××さん!聞こえているんですか!」
××「…いいんじゃない。」
 石川は慌ててナースコールを押した、
看護婦「どうしました?」
石川「すいません!××さんの意識が戻りました!早く来て下さい!」
看護婦「えっ!は、はい分かりました、すぐに行きます!」
石川「××さん………グスッ。」
 石川は涙を流しながら××の手を握り締めた。
××「…何で泣いてるの?」
 ××は自分が1年ぶりに目覚めたということを知らないのだから無理もなかろう。


 意識を取り戻した僕は1年間動かしていなかった体を動かすのにかなり苦労した、
 毎日毎日辛いリハビリの連続だった。
 数ヶ月リハビリを重ねた僕は松葉杖をついてようやく自分で
 動けるようになった。

××「ふぅ…やっと屋上まで来たぞ〜」
石川「もう、エレベーター使えばいいのに。」
 石川さんは事務所に辞職願を出したらしい、そのせいか
 毎日僕のところへ来てリハビリの手伝いをしてくれている。
××「ホントに辞めんの?娘。」
石川「もう辞めたって言ったじゃないですか、
   表向きは長期休暇になっているらしいですけど。」
××「ふーん……あっ、あのベンチに座らない?」
石川「そうですね、座りましょ。」
 僕達はベンチに腰をかけた。
××「ホントに1年も寝ていたのか…実感ねーや。」
石川「そうなんですよ、もう大変だったんですよ。」
××「そうだろうね…俺は事務所をクビになったし……」
石川「もう、暗いですよ!もっとポジティブに行きましょうよ!」
××「ハハ……そうだね。」
 俺が暗い顔をするたびに彼女は明るく“ポジティブに!”
 と言ってくれる。
 そう言ってくれるときの彼女の笑顔が僕はたまらない。


××「でもさぁ…何でここまでしてくれるの?」
石川「……私がそうしたいからです。私、今だけでなくて、
   これからもずーっと××さんを支えていきたいと思っています。」
××「ずーっとっていつまで?」
石川「ずーっと………ずーっとです……………」
××「その言い方だとまるで“結婚してくれ”って言っているみたいだよ。」
 僕はからかうつもりでこう言ったのだが……
石川「…………………だめですか……私とだと…」
××「………」
 …どうやら彼女は本気らしい、………どうしよう。
××「…俺ね、1年前石川さんに誰を選ぶか言いに行こうとしたのね、
   あれ……“両方とも選ばない”って言うつもりだったんだ。」
石川「そうですか。」

 あれ……なんか違う………
××「何とも思わないんですか?」
石川「だって、それは1年前の話でしょ、今の話ではないじゃないですか。」
××「……そうだけどさぁ………」
石川「…今はどうなんですか?」
××「えっ?」
 どうしよう……いつのまにか追い詰められている………


××「……別に僕じゃなくてもいいのでは?」
石川「1年前に言ったじゃないですか、“私は××さんが好きです”って……
   あの気持ちは今も全く変わっていませんよ…1年前と全く………」
××「……俺さぁ退院したらコンピュータ関係の専門学校に
   行こうと思っているんだ。
   退学して芸能界に入ったからなぁ…また逆戻りか……」
石川「何を言っているんですか、××さんが芸能界に入ったから今、
   私達がこうしていられるんじゃないですか。」
××「………そうだね、でも出会えて幸せかな俺達って?」
石川「幸せはこれからつかむ物ですよ、××さん……」

××「………………いいの、ホントに?」
石川「私は……………構いません………」

××「…………」
石川「…………」

 まるで僕らの結婚を決めるかのように僕達は口付けをした……
 気持ちのいい風が吹く晴天の昼下がりのことだった……


―そしてかなりの月日がたった…

担当医「やっと退院ですね。」
××「いやぁ、もうちょっと長く居たかったな〜」
石川「もう、何言ってるのよ!」
 僕は退院を迎えた、ここまで長く苦しいリハビリ生活だった、
 しかし、梨華の懸命なサポートにより僕はここまでやってこれた。
 あの日の口付けを裏切るわけにはいかない…

吉澤「……よくがんばったね…」
××「……まあね。」
 吉澤さんとの仲もカタがついた、吉澤さんは今彼氏がいるらしい。

矢口「今日みんなこれなった分、このビデオテープにメッセージが
   入っているから見てね!」
××「ああ、絶対見るよ。」

保田「でもさぁ、ホントに結婚するの?」
××「予定ね、あくまで。」
石川「もう何言っているのよ!するの、絶対にするの!」
保田「フフフ……良かったね。」
××「ハイハイ。」
 その他大勢の人に見送られて僕達はタクシーに乗った。

××「すいません、ここの住所まで行って下さい。」
運転手「はいよー」
 僕は行き先の書いてある紙を渡した。
石川「どこに行くの?」
××「お前の家。両親に挨拶に行かないとな。」

石川「……うん!」
 僕と梨華の生活は今始まったばかりだ―

〜 Fin 〜


 

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