×飯田(エロ)


「辻、なんか具合悪いんちゃう?」
 珍しく中澤が辻に声を掛けた。
「んー…なんかからだがねつっぽい…」
 額をぶつけるようにして中澤が人肌で熱を計った。
「ほんまやな。ちょー熱あるん違うか。圭織? 自分気ぃ付かんかったんか?」
「んー…、ののちゃんごめんね、カオリぜんぜん気付かなかった…」
「えっ、そんな、ぜんぜん、いいださんのせいじゃないですし」
「あー…、辻、あんたもうええわ。今日はあと打ち合わせだけやし、休んどり。
加護、あんた辻の分までよっく聞いとくんやで。あとで辻に教えたりな? 圭織、あんた辻を医務室まで送ったり」
「ん、わかった…」

 二人は手をつないで医務室に向かう。
 飯田の手はひんやりとして気持ち良かった。
「身体がきついときは他の人に気付いてもらうんじゃなくって、自分でちゃんと主張しなきゃダメだよ。
自己管理も仕事のうちなんだからね。わかった?」
 主張? 自己管理? メンバーの話す言葉は時々わからない単語が混ざる。
 でも飯田が心配してくれるのが嬉しくて辻はにっこりと笑った。
「ん…でも、ちょっとからだがねつっぽいというか…、あつかっただけだし…」
「それがだめなのっもぉうっ」
 他人事なのに本気になってる飯田が、ちょっと可愛いなと思った。
年上だし身長も高いのに、自分より子供に見えることもある。


医務室といっても、医師が常駐している訳ではない。
 安っぽい寝台と毛布と置き薬が詰め合わされた救急箱があるだけで、あとは物置のようになっている。
 飯田は辻を寝台に横にさせると、体温計を取り出して振った。
「熱、はかってて。んー…、薬は飲んだほうがいいのかな…、バファリンでいいのかな…、頭とかどっか痛いとことかない?」
「んー…、なんか、へいきっぽい…」
「そう? 顔すごい赤いけど」
「なんか……暑くて……」
「熱か……あ、そっか。解熱剤解熱剤」
 ゲネツザイってなんだろう。辻にはまるで魔法の呪文のように聞こえる。

 体温計の電子音が計測終了を告げた。
「あ、まって見る見る」
 飯田はベッドに腰掛け、身をひねって辻から体温計を抜き取った。
 長い髪が辻の頬をくすぐる。
 いいにおいがした。
「……っ、いたたたたっ」
「ののちゃん? どうしたの? どっかいたいの?」
「あっ、あのっ」
 言えずに辻は顔を赤らめる。

「はっきり言わなきゃカオリわかんないよ」
「……あそこ……」
 辻は消え入りそうな声で、答えた。
 自分の身体から、なにかが、浮き上がろうとしている。ジーンズのファスナーに強く当たって、いたい。
たまらず辻は飯田に背を向けてズボンのファスナーを降ろそうとするが、
ひっかかってより苦痛の声を漏らすこととなった。涙が滲む。
「……っ」
「なにやってんのさ? ちょっとーだいじょうぶー?」
「あんま……だいじょうぶくない……」


「おなかいたいんだ? ちょっと待って、カオリやったげるよ」
「あっ、い、いいです!」
「なに遠慮してんのよー。いいからいいから。じっとしてて」
 飯田はひょいとファスナーに手を掛けた。異様な膨らみに一瞬怯んだものの、案外あっさりと開く。
 自由になったそれは自らの姿を誇るようにきりりと勃ちあがり、可愛らしいキャラクターが印刷された辻の下着からせせりだした。
「……なにこれ」
「やーっ」

 辻はショックを受けたように肉茎を眺めた。
 飯田も理解に苦しむといったふうに首を傾げた。
「……」
「……」
「……どうしたの、これ」
「わかっ、わかんな…」
「……どうすんの、これ」
「どうしよう…」
 辻は半べそをかいていた。飯田は意を決したように握り拳を作った。
「圭織がとったげるよ!」
「えっ、えー?!」

「や、そんな、とれるんですか、これ」
「わかんないけど…とりあえずやってみよ」
 思いっきり不安になるような言葉で飯田は力強く請け合った。
 肉茎が飯田の両手に包まれる。
 それはとてもひんやりとしていたが、下腹部の火照りはいっそう激しくなった。
「いい? いくよ?」
「……はい」
 飯田は両手に力を込めてぎゅうっと肉茎を掴むと、思いっきりひっぱった。
「あっ……」


「や、やだっ……」
 たまらずに辻は飯田の首にぎゅっと抱きついた。
「だいじょうぶ? いたい?」
 飯田は両手の拘束を緩めた。ふっと辻は“自分”が戻ってくるのを感じた。
「だいっ、だいじょう、ぶ……なんか……なんかでも……すごいへんなかんじ……」
「変な感じ?」
「……というか……」
 消え入りそうな声で、辻。
「え? なに? いまちょっとカオリ聞こえなかった…」
「きも、気持ちいい、というか……」
「………………」
 飯田は不思議そうな顔で考え込んで、ふと何かを思いついたようにポンと手を叩くと、辻のカットソーを大胆にめくった。
「なにするんですか」
「……ある、よねえ……ちっちゃいけど……」
 ぶつぶつと呟く飯田。

 飯田は物憂げな瞳で辻の肉茎を丹念に眺める。
「あっ」
 飯田の指が触れるたびに辻は苦しげな吐息をついた。が、飯田は全然構わない。
「やっ、いいださ……あっ、ん……」
「ちょっとののちゃん、静かにしていて」
「しずかにって……あ……あん……や……やだもー……」
「………………ふうん。そうか。そうなんだ。ののちゃん、わかったよ!」
「はあんっ……わかっ、わかったって、なにが、です、か……」
「これはね、アレよ。男の人についてる…」
 今までなんだと思っていたのか。
 飯田の与えた刺激にすっかりへろへろになった辻には突っ込む気力はなかった。

「………………」
 今度は飯田は辻の肉茎をじっと見つめたまま腕を組んで考え込んだ。
 辻は恥ずかしそうに身じろぎした。ひどく身体が火照っている。
飯田に触れられたときも落ち着かない気持ちになったが、今はもっと落ち着かない、切ないような中途半端な気持ちだった。
「うん、やっぱそれっきゃないか」
 どういう思考経路を辿ったのかは不明であるが、どうやら飯田は一つの結論に達したようだった。
「しようか」
 飯田は、辻の目線にまで腰を落として、真顔で言った。
「え。しようってなにを」
「えっち」
「……」
 飯田はどこまでも真面目である。辻は絶句した。


「だめだよ…、そういうの、あの、さいしょはやっぱ、すきなひとと…」
「ののちゃんはカオリのこときらい?」
「すきです」
「カオリも好き。問題ないね。しよ? それともカオリとじゃ、や?」
「や、やじゃないです……ですけど………」
 辻の頭はすっかり混乱した。飯田のことは好きだし、一緒にいると嬉しい。その好きと、恋愛とかの好きと、どう違うんだろ?
 いまの感情の先にあるのが恋とかそういうのだろうか。
 いや、そんなことよりもっと先に。
 辻の身体は飯田を求めていた。
「けど?」
「……したい、です……」

 飯田は無言でシャツを脱いだ。
 白々とした肌が顕わになる。完成された大人の身体だ。辻は一瞬、目を奪われた。
薄暗い医務室のなかでぼうっ、と浮いて見えた。
「きれい……」
 呟いた辻に飯田はにっこりと笑ってギュッと頭を抱きしめた。
「かわいいっ。のんちゃん絶対かわいい」
 頬が胸に押しつけられる。ふわっとしていて柔らかい。いいかおりがする。心臓の音が聞こえる。
辻はカアッと頬が熱くなるのを感じた。
股間に著しい充実を感じる。
「いいださ……くるし……」
 それだけ言うのがやっとだった。

 飯田は辻の顎を持ち上げるとそっと唇を重ねた。唇が動かされ、そっと舌を滑り入れられる。
湿った柔らかい感触。初めてのディープキスに、辻の頭はすぐにぼうっとなった。
 戯れるように絡み合いくすぐり合う舌と舌。口蓋をくすぐられ、辻は思わず嬌声をあげた。
「もぉ、笑ってちゃキスできないよ」
「だってくすぐったいよ…」
「そこがいいの」
 二人は再び唇を重ねた。何度も何度も重ね合う。


飯田は辻の手を取って、自分の胸を触らせる。
「揉んでくれる…?」
「え?」
「このままじゃ…入れられないもん」
 わけがわからないままに、辻は飯田の胸にそっと指を這わせる。柔らかかった。
乳輪に触れると、飯田は短く息を漏らした。溶けそうに柔らかかった部分が次第に硬く勃ちあがってくる。
それが不思議で、辻はしばらく乳首を弄んだ。
「もうちょっと手のひら全体を使って……、そう……、ね……胸にキスしてくれる?」
 魅入られたように辻は飯田の指示に従う。その辻の頭を飯田はかきよせた。

「ののちゃん」
 声をかけられて、上を向くと唇を奪われる。キスは好きだった。飯田の味は心地よい。
 寝台がぎしりと軋んだ。
 飯田はズボンを脱いで全裸になり、その長い足を毛布のなかにすべりこませた。
 すでに熱くいきりたった辻の肉茎が飯田の腹に押しつけられる。ひどくへんな気持ちがする。肉茎はますます硬く太くなった。

 飯田は辻の横に寄り添った。辻はもうすっかりわけがわからなくなってしまって荒い息をつくばかりだった。
「つらいの? いま圭織が楽にしてあげるからね…」
 両腿で小さな辻の身体を挟み込むように寄せて、飯田は肉茎を自分のなかに導いた。
「あっ……ああっ……」
 ぎゅうっと締め付けるような感触に、辻は思わず声を漏らす。

「だいじょうぶ? 動かすよ?」
 飯田はゆっくりと腰を前後に揺らせた。こすりつけられて鋭い快感が電気のように辻の中を走り抜ける。
「ん……あ……ああ……や……」
 辻はたまらず飯田の二の腕を掴む。飯田は次第に早く腰を動かしていく。
「すご……すごいよののちゃん……あっ……」
「……っ」
 飯田の息もどんどん荒くなっていく。辻は走り抜ける快感に言葉も出ない。


「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ…」
 腰の動きに合わせて飯田の声が漏れる。目を伏せて顔を歪めた飯田の顔に、辻は強い愛しさを覚えた。
(……いいださん……きれいだ……)
 実際には綺麗と形容するにはほど遠い形相だったのだが、辻は心からそう思った。
 びくん。
 肉茎が強く震えた。どうしていいかわからずに辻は戸惑った。だが、もう止まらない。
辻のなかからなにかが迸り出た。そして、そのままわけがわからなくなった。

 目を覚ますと、皆が揃っていた。心配そうな顔で辻を見下ろしている。
「だいじょうぶ? 起きれる?」
 加護がふわっと髪を撫でた。
「だいじょうぶみたい……」
 下腹部の違和感は消えていた。妙にスッキリとした気がする。
「はいはいはい、ほなさっさと帰るでぇ。辻、あんたはタクシーで帰り。これチケットや。ラッキーやでホンマ。滅多に使われへんねんで」
 中澤がぶっきらぼうにタクシーチケットを押しつけた。中澤なりの心配りだったが、辻には理解されなかった。
 飯田の姿を捜すと、窓辺でぼんやりと外を眺めていた。
(ゆめだったのかな)
 そう思って、すぐさま辻は否定した。
 飯田の両腕には辻の付けた刻印がしっかりと残っていた。
 指の形の赤い痣。


-了-



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