無敵なライバル

「瞳・・・閉じて・・・」

ゾクンと腰に響く低い声・・・。
吐息が、耳もとから頬を伝って、ゆっくりと唇に近づいてくる。

「何を震えてるの?」

少し意地悪に、彼女は笑う。

「誘ったのは、梨華じゃない・・・」

(そう。誘ったのは、私・・・)
 
名門朝ヶ丘学園、高等部生徒会副会長の石川梨華は、胸をドキドキさせながら、
すぐ目の前にある吉澤ひとみの、甘い色をした瞳を見つめた。


 それは、ある日曜日の午後のこと・・・。
 生徒会室のソファの上で、フラチな行為に及ぼうとしているのは、他ならぬ、
ここ朝ヶ丘学園の生徒会長・吉澤ひとみと、副会長の石川梨華・・・。

窓から斜めに刺し込む夕陽が、白いカーテンを、青みがかったオレンジ色に染めている。
外のグランドから聞こえてくる体育会系の健全な喧騒が、なおさらこの密室の中に満ちる不健全な空気を際立たせていた。
梨華はまだ試合の時に着ていた白いテニスウェアのままなのに、ひとみは、もうすでに制服に着替えている。


ソファにカラダを起こした梨華は、彼女を覗き込んでいるひとみの顔をじっと見上げた。
吸いこまれそうな大きな瞳。生まれの良さを感じさせる上品な輪郭。
梨華の頬に触れている器用そうな長い指先は、しっとりと冷たくて、見惚れてしまうほど綺麗な爪の形をしている。
朝ヶ丘学園の生徒会長、吉澤ひとみは、そんな非の打ち所のない美貌の持ち主だった。

(これが、私のライバル・・・。邪魔で邪魔でたまらない、この世で一番憎いひと)

それを忘れてはいけないと、梨華は自分に言い聞かせる。
でも・・・。


「梨華・・・」

熱く掠れたささやきが、唇に重なり・・・甘い・・・吐息が触れて、離れて、また優しく触れると、心が揺れ動いてしまう。

「ん・・・っ」

痺れるような疼きは、痛くはないけど、どこか怖い。

「うふ・・・っ」

もう悠長に目なんか開けていられない。
梨華は、ひとみの導くままに、うっとりと瞳を閉じた。

「梨華の唇・・・柔らかい・・・」

唇を合わせたままでささやかれて、梨華はピクンと震えてしまう。

「そんなふうに・・・言われたこと・・・ない?」

ない・・・と首を振るけども、その拍子に、少しだけ口づけが深くなる。

「あ・・・んっ」

あたたかな乾いた唇が緩くこすれあった刹那、梨華は思わず声を洩らしてしまった。

「かわいい・・・梨華・・・」

甘い声が笑う。


たかがキスぐらいで、こんなにガチガチに緊張していることを、ひとみはきっと馬鹿にして、心の中で笑っているに違いない。
でも、梨華にとって、キスという行為は、相手が男でも女でも、正真正銘、これが初めてなのだ。
この世に生を受けて十七年間、かわいいとか、きれいとか、さんざん言われ続けてきた梨華なのに、
これがホントのバリバリのファースト・キス・・・だったりして・・・。

お高そうに見える見かけのせいか、それとも本当にお高い中身のせいか、
石川梨華はモテまくりの毎日を送りながらも、実はかなり晩生(おくて)だった。
でも見栄っ張りな性格のせいで、初めてです・・・なんてことは、絶対に言えない。
おまけに相手は、梨華からことごとく一番の座を奪っていった、にっくきライバル!吉澤ひとみなのだ。


梨華は両手に拳を握って、挑むように、ひとみに唇を押し当てた。
ひとみは、それを柔らかく受け止める。

(うっ!慣れてる!)

そう思った瞬間、優しく押し当てられていた唇が緩やかに開いて、濡れた熱い何かが、梨華の唇の中に潜り込んできた。

「ん・・・・・・っ」
(何、これ?もしかして、舌・・・入れてる?)

頭でわかった途端、カラダの奥が、かあっと熱くなる。


「や・・・っ」

逃げようとしても、ひとみの舌は上手にからみついて、梨華の逃げ場を塞いでしまう。

「ん・・・んん・・・っ」

捕まる・・・。きゅうっと吸われて、頭の中がくらくらする。
吐息と同じように、ひとみの舌は甘い。甘すぎて、とろりとしている。
ブランデーだとか、その類の・・・強すぎる洋酒みたいだ・・・。
叔父様からパリのおみやげにいただいたリキュール・チョコでしか知らないけれど、ひとみのキスはそんな味がする。
甘くて、熱くて、たった一口で、とろとろに酔ってしまいそうな・・・。


チュクッと押し当てられる度に、熱が一度ずつ上がってゆく。
カラダが熱い・・・。自然発火して燃え上がりそうなくらい。
たかがキス一個なのに、こんなふうになってしまうのは変だ。
カラダ中の細胞が作り変えられていくような、不安で切ない・・・。でも、
恍惚となっちゃうくらい甘美な薔薇色の瞬間。
この瞬間が永遠に続いたってかまわないくらいに・・・。

(気持ち・・・いい)


いつしか夢中になって重ねていた舌が、不意に置き去りにされて、梨華は不安げに、ひとみの唇を探す。
それを鬼ごっこのようにかわして、不意をついては、また口づけるひとみの甘い唇

「んぁ・・・っ」

赤ちゃんからミルクを取り上げるみたいに意地悪に、キスを唇の上で焦らす彼女が憎い。

「も・・・、やぁ・・・っ」

そんな朝ヶ丘学園の綺麗な生徒会長、吉澤ひとみの制服の袖を、梨華は責めるように、ぎゅっと握り締めた。




「アドバンテージ、吉澤」

このサービスを取られたら、おしまいだ。
ラケットのグリップをぎゅっと握り直して、梨華は身構える。
けれども優雅にしなるカラダから繰り出されたガットサーブは、美しい流線を描いた・・・と思う間もなく、梨華の足もとを掠めていった。

「ゲームセット」

審判の声が、梨華の耳に無情に響く。

「ウォンバイ、ヒトミ・ヨシザワ!」

冷ややかにアナウンスが流れ、ひとみのための拍手が湧き起こる。
梨華は他になすすべもなく、ただ呆然と、その場に立ち尽くしていた。

(負けた。・・・また、負けちゃった)

それも、こればかりは譲れないと思っていたテニスで・・・。


ひとみのサーブは速すぎて、鮮やかすぎて、ただの一歩も、動くことすらできなかった。

「こんなはずじゃ・・・」

なかった。・・・その言葉を、もう幾度繰り返したことだろう。

同じ朝ヶ丘学園同士の対戦になってしまった地区予選の決勝。
今度こそどうにか・・・と、がむしゃらに頑張ったのに、最終ゲームを
デュースに持ち込まれ、サーブの得意なひとみに見事なエースを決められてしまった

「石川さん・・・っ」

審判に促されて、どうにか平静を取り繕い、梨華はネット越しに、ひとみと握手を交わす。

「良いゲームだったね」

ひとみの女なのに低いセクシーボイスがささやく。
見ている女の子たちにキャーなんて騒がれそうな甘い笑顔も添えて・・・。


けれども、梨華は最後のプライドまで踏みつけられたような気がして、唇をかんだ

(何が、良いゲームだったよっ!!)

そりゃあ勝ったひとみには、良いゲームだったろうけれど、負けた梨華にとっては、めちゃくちゃ最悪なゲームだ。
冷たい汗が背筋を伝って、めまいまでしてくる。

「梨華・・・?」

不審げに眉をひそめるひとみの綺麗な顔が、目の前で、フゥッとかすむ。
気分が・・・悪い。
昨夜まともに眠れなかったのが原因かも・・・。
ゴーゴーと耳鳴りが大きくなってくる。

「・・・っ」

ひとみのものらしいあたたかな手が、引き戻してくれようとするのがわかったけれども、
梨華は胸の中にぽっかりと大きな口を開けている底のないブラックホールに足を取られて、
抗う余裕すらなく、その暗い闇の中へ落ちていったのだった。


そもそも梨華の不遇の人生が始まったのは、高等部に上がり、外部入学生の吉澤ひとみと出会った時からだった。
中学までは良かった。
何をやっても梨華が一番だったから。
小学生の頃からずっと続けているテニスでも、学校の成績は・・・もちろんのこと、
他のどんなジャンルでも、この世はすべて、石川梨華の天下だった。
スポーツ万能、頭脳明晰?、容姿端麗に加えて、地元の歴史資料館に家系図まで残されている名家、
石川家の長女でもある梨華は、名実共に、名門朝ヶ丘学園のナンバー・1で・・・。


しかし、それが高等部になって、吉澤ひとみが入ってきてからというもの、
すべての栄冠は、ひとみの頭上に輝き、梨華はナンバー・2路線を突き進むことになったのである。
試験だって、校内校外を問わず、トップはいつもひとみのもの・・・。
何せ、全科目満点なのだから、抜きようがない。

一番が大好きで、これまで一番を取るのが当たり前だった梨華だ。
ひとみのせいで、人生の楽しみのすべてを奪われてしまったような気になる。
弁論大会だとか、町内マラソン大会に至るまで、梨華が参加するものには必ずひとみも参加しては、そのままトップをさらっていく。
そして、その結果、いつも梨華にまわってくるのは、二番・・・。


偶然か故意かは知らないけれど、この2年の間、ひとみは、ことごとく梨華のテリトリーを荒らしては、一番の座を奪っていったのだった。

そして、梨華が狙っていた生徒会長の椅子さえも・・・。
おかげで、梨華はこうして副会長の座に甘んじている。
まさしく疫病神!! 
憎むべきは、吉澤ひとみ!!!

なのに、どうして・・・、ひとみと、こんな休日の生徒会室なんかで、抱き合ったりしているのだろう?
たまたま地区予選が、設備の良い朝ヶ丘のコートで行われて、ひとみと決勝後の握手をしている最中に貧血で倒れてしまったことが、
こんな貞操の危機にまで、発展してしまうなんて。


「保健室は、鍵がかかっていたから」

ひとみは、優しい顔でそう言った。

「保健室のベッドの他に、梨華をゆっくり休ませてあげられるところと言ったら、近場では、ここのソファしか思い浮かばなかったんだ」

確かに・・・。
生徒会長のひとみは、この部屋の鍵を持っているし、スウェーデン製だという
このソファは校長室の応接セットに負けず劣らず豪華な代物だ。
座り心地も極上で、贅沢に慣れた神経質な梨華もかなり気に入っている。


「もしかして、ひとみが私をここまで?」

瞳を優しく細めて、ひとみは頷く。

「梨華は軽いから、抱いて運ぶのも楽だったよ」

やっぱり・・・。
梨華は、途端に暗〜い気持ちになる。
まさかとは思ったが、やはり心配した通りに、ひとみは梨華をここまで、抱いて運んできたらしい。
肩に担ぎ上げたのか、花嫁さん抱っこか・・・は、怖すぎて聞けない梨華だ。

「ありがとう。でも、余計なことしないでほしいの」

「余計なこと?」

梨華に迷惑そうに言われても、相変わらずひとみの口元は笑っている。
が、少しだけ色素の薄い茶色の大きな瞳の方は笑っていない。

(もしかして、傷つけちゃったかも?)
チクンと梨華の心は痛む。
(せっかく、ここまで運んでくれたのに・・・)

だが、しかし、相手は天敵、吉澤ひとみだ。
情けなんか、かけちゃいけない!!


おまけに、抱き上げて連れてきた勝利者のひとみは良いことづくしだが、
負けて貧血を起こした上に、同じ女性に抱き上げられて退場では、梨華の立場はまったくない。
いっそのこと、テニスコートのベンチに置き去りにしてきてくれた方が、どんなに良かったか。
それを、これ見よがしに軽々と抱き上げたりしちゃって・・・。
これじゃ、まるっきり王子様とピエロじゃない!!
ピエロじゃなくて、お姫様だということは、当の梨華はまったく気付いていない。

(やっぱり、許せない!!)

悪夢でも見た後のように、寝汗ぐっしょりでソファに横たわりながら、梨華は、
長身を屈めて彼女を覗き込んでいる心配そうなひとみの顔を睨む。

〜〜〜 その時だった。

梨華の耳に悪魔のささやきが聞こえてきたのは・・・。

(( 誘惑しちゃったら? ))

声の主は、妹の亜依・・・。
彼女がそう耳打ちしたのは、つい昨夜のことだった。




石川家の夕食は、「夕御飯」と呼ぶよりは「晩餐」と呼ぶにふさわしい正式なディナーだ。
広いダイニングに設えられた長いテーブルには、清潔な純白のテーブルクロス。
高価な美しい食器に負けず劣らない、すばらしい料理の数々・・・。
食事中のBGMは、ラロのスペイン交響曲。最も心地よい音量で流れている。
席についているのは、梨華の母、梨華、そして三つ違いの妹の亜依。
亜依は、朝ヶ丘学園の中等部に通っている。

「そういえば、梨華さん?今度の試験も、また二番だったのですってね」

メインデッシュをいただいた後の濡れた唇を上品に白いナプキンで拭いながら、妖艶な美女である梨華の母が尋ねた。

「はい、お母様」

食事の途中にもかかわらず、カタンとフォークを置いて、梨華はうつむく。


「亜依さんでさえ、ちゃんと石川家の家訓を守って、一番をいただいてくる というのに、長女であるあなたがそんなことでは困りますね」

「すみません・・・」

梨華は母に合わせる顔がなくて、うつむいたまま唇をかむ。
そんな梨華を流し見て、夫人はこれまた上品にため息をついた。

「あなたも来年は最上級生。石川家の伝統を忘れてはいないでしょうね?」

「はい、お母様。卒業生代表として、答辞を読むこと・・・です」

消え入るような声で梨華が答える。

「北欧でお仕事中のお父様も、あなたのことを心配しています。
 何代も続いた名誉ある石川家の伝統を、あなたの代で、台無しにしてはなりませんよ。
 いいですね?」

「分かっています、お母様」

片付けなければいけない課題があるからと、デザートを断って自分の部屋へ
逃げ込んだ梨華のところへ妹の亜依がやってきたのは、それから三十分後のこと。


「梨華ちゃんったら、お馬鹿さんね〜。今夜のデザートは、梨華ちゃんの大好きなフルーツポンチだったのに・・・」

梨華はコクンとノドを鳴らす。

「お母様の言ってることなんて、適当に流しておけばいいのに・・・梨華ちゃんっていつもネガティブなのよね〜」

「・・・」

今のままでは、マズイ。真剣にマズすぎる。
まだまだ先の話だけれど、このままいけば、卒業式で答辞を読む役は、
99.999999999%、ひとみのものである。


そんなことになれば、母も海外に赴任中の父も、黙ってはいないだろう。

(吉澤ひとみさえ、いなければ・・・)

梨華は、ひそかに、こぶしを握りしめる。
それに、大好物のフルーツポンチを食べ損ねたのも、みんなひとみのせいだ。
逆うらみっぽいのは、自分でもよくわかっているけれども・・・。
梨華はがっくりと肩を落とすと、深いため息を零した。

「吉澤ひとみ先輩のことを、考えてるでしょ?」

突然亜依の口から告げられた名前に、梨華はビクッと顔を上げる。

「どうして、亜依ちゃんがその名前を・・・?」

「だって〜有名だもん。梨華ちゃんたちのことは」

(何・・・??その・・・「梨華ちゃんたちのこと」と言うのは?)


あからさまにうろたえる梨華に向かって、勝ち誇った笑みを浮かべながら、亜依は続けた。

「中等部の間では、高等部でのことは、何よりも優先事項なのだ」

あどけなさと、したたかさを、交互に覗かせながら、亜依が片目をつむる。

「もしかしたら、梨華ちゃんより詳しいかもしれない♪」

母譲りの薔薇の花弁のような唇に浮かぶ意味深な笑みが気になって、梨華の心臓はかなりドキドキ騒いでる。
でも、そこは冷静なふりを装って・・・。

「私たちのことって、何?ひとみとは、何の関係もないんだけど」

でも、梨華の言葉は、亜依に一笑に付されてしまった。


「こらこら!ごまかしてもダメダ〜メ!朝ヶ丘学園一の美しいカップルって
 みんな、噂してるヨ♪良かったね、梨華ちゃん。一番・・・好きでしょう?」

(そんな一番なら、いらないっ!)

そう怒りたいけど、ショックが強烈すぎて声も出ない。
フルフル肩を震わせている梨華に、亜依は手の甲を口もとに当てて、女王様のように笑った。

「やだぁ。梨華ちゃん、顔・・・真っ赤!!」

「じょ・・・、冗談じゃないわ!どうして私があんなひとと・・・」

「えぇ〜。ちょっと見ただけだけど、ひとみ先輩って本当に素敵な方だったヨ
 梨華ちゃんだって、石川家で一番綺麗なんだから、ひとみ先輩と、とってもお似合いなんじゃないかなぁ〜」
 
怒って否定するけれど、亜依はひらひらふわふわの服のポケットからショッキングピンクの羽根扇子を取り出すと、

「ナンセ〜ンス」

と、派手な仕種でそれを振り扇いだ。


「というわけだから、梨華ちゃん、自信を持って、ひとみ先輩とお幸せになってね〜」

(だから、なんで、どうして、ひとみと私がーっ)

梨華の心の中を、高い悲鳴が三回転半する頃に、亜依が訊いてきた。

「もしかして、梨華ちゃんたち、まだ綺麗な関係なの?」

「う・・・っ、綺麗も何もっ、ひとみとは、何も関係もないんだってば〜」

思わず砕けた物言いになる梨華に、亜依も、

「え〜、じゃあキスもまだなの?おっくれてる〜」

と身を乗り出してくる。

「あのね〜亜依ちゃん。私は、ひとみのこと、邪魔だとしか思ってないし、
 ひとみだって私のことなんて、ハナっから馬鹿にして、相手にもしてないの」

「そんなことないわよぉ〜っ」
「あるっ!」
「ないっ!」
 
こぶしを固めてにらみ合っても、二人とも美少女なので、それなりに美しい。


「ひとみ先輩は、絶対に梨華ちゃんのことが好き。
 それは間違いないと思う」

「どこに、そんな証拠があるの?」

梨華は拗ねたように亜依を見る。

「私のことなんて、ひとみは・・・少しも・・・」

手応えあり・・・と亜依がほくそ笑んだ瞬間を、幸か不幸か、梨華は見逃してしまう。

「ねぇ、梨華ちゃん・・・」

薔薇色の唇がささやく。

「ひとみ先輩の気持ちを確かめるのと同時に、梨華ちゃんが一番に
 返り咲く方法を、このあいぼん、思いついたヨ

「・・・??」


そんなことができるのかと、思わず梨華の眼差しが揺れる。
ひとみの気持ちなんか知りたくもないが、とりあえず一番は欲しい。
これまでだって、一番を奪回するために、できることはすべて試してきた。
そう。努力はもちろんのこと、抜けがけも、裏工作さえも・・・。
けれど、いつもあっけなくひとみに敗れ、みじめに敗退するのみ。
もう後がない・・・。
梨華だけ、石川家の伝統が守れなかったなんてことになったら、不名誉もいいところである。
一生両親や妹、親戚たちに頭が上がらない。
そんなこと、ぜ〜ったいに嫌だ!!
こうなったら、背に腹は変えられない。

「その方法って?」

声を潜めて顔を寄せる梨華に、亜依は艶やかに微笑む。
まるで悪魔のように・・・そして・・・ささやく・・・

「ひとみ先輩を、誘惑しちゃったら??」




魔が差す・・・というのは、そういう瞬間のことを言うのだろう。
目覚めたばかりのまだどこかぼんやりした脳裏にいきなり鮮やかに甦った、昨夜のキーワード、

(( 誘惑 ))

文字通り、悪魔の「誘惑」は、まるで青いシグナルのように、
「ほら・・・」
と梨華の背中を押す。
気がつけば、梨華は、近づいてきたひとみを引き寄せるように、その首に腕をまわしていた。

「あ・・・」

我に返って、あわてて腕を引っ込めようとしても、もう遅い。
な〜んちゃって・・・なんて、冗談でごまかせるようなキャラクターだったら良かったのに。

(危ない奴と思われたかも・・・)

梨華はビクビクしながら顔を背ける。
けれども、ひとみの長い指に顎をつかまれ、簡単に振り向かされてしまった。

「まさか、梨華の方から、誘ってくれるなんてね」

(ああっ。うそっ)
間違いです・・・と叫んで、この場から逃げ出せたらいいのに。


でも、ひとみの性格からすれば、前言撤回なんて、絶対に許してくれそうにない。
穏和なように見せてはいるけれども、約束事には、かなり厳しい感じがする。
なじられるよりも何よりも、冷ややかな悔蔑の眼差しを向けられることに、耐えられそうにない。
こいつにだけは負けたくないと思っている相手なら、なおさら・・・。
ひとみに至近距離で覗き込まれ、梨華の目が据わる。

(こうなったら覚悟を決めて、カラダを張って、憎い吉澤ひとみをめろめろの骨抜きにしてやるっ!
 うまくいけば、一気に逆転ホームランなんだから!)

ちょっと何かが違うような気もするが、もうマジで後がない。
家族にいびられるだけでもたえきれないのに、無能な人として、石川家の歴史に残るのは、絶対に我慢ならない。
そのくらいなら、ここでひとみを誘惑して、カラダの奴隷にしてやる方がマシだ。
もう矢でも鉄砲でも持ってこいっ。・・・なんて、かなりヤケを起こしている梨華だったが・・・。


これから彼女を怯えさせるのは、矢とか鉄砲とかじゃなくて、AとかBとかCとかいう行為だということを、
梨華は、あまりちゃんと理解していなかった。

誘惑といえば、ウッフンなんて片肌脱いで、色っぽくウィンクしちゃったりすること・・・
くらいにしか考えていない困ったオクテちゃんである。
きっと亜依が知ったら、

((あっきれた。梨華ちゃんより、ぜ〜ったい私の方が大人だわ))

と憤慨すること請け合いだ。
まぁ、でも、ひとみの方は、しっかり梨華を大人にして
あげるつもりになっていた。

「梨華が私に好意を持っていてくれたことがわかって嬉しいナ」

女性から見てもうっとりしそうな綺麗な顔で、甘く笑う。
もう、全っ然、好意なんかじゃなくて、百パーセント、悪意です・・・
と言ってあげたいけれども、それはこの最終作戦が、始める前に終わってしまうことを意味していた。


結局言い返すことを諦めて、仕方なくうつむくと、ひとみは、それを梨華が照れたせいだと勝手に解釈してくれたらしかった。

「根気よく待っていた甲斐があったわ」

「え?」

根気よくって、どういうこと?
((返事を聞かせて・・・))
の瞳で見上げるのに、ひとみは、そのことはさらりと無視して、梨華の上に身を屈めてくる。

(わわ〜っ。もう、唇・・・触れそう)

梨華がこんなにアワアワしているのに、ひとみは、いかにもこんなことは
日常茶飯事・・・みたいな落ち着き払った態度で、ますます顔を近づけてくる。
目を閉じるように促されるけれども、梨華自身は少しも閉じる気配はない。
人を初心者だと思って、馬鹿にして・・・。

「いい?」

あと数ミリのところまで唇を近づけて、ひとみが尋ねた。
いい?  ・・・も何も、この体勢で今さら・・・。


 (( いいよ ))
と言うつもりだったのに、梨華は声を出せない自分に、突然気づいた。
ひとみの整った口もとが、何を震えているの・・・と笑っている。

悔しい・・・。

でも震えてしまう。
だって、初めての・・・キス。

「梨華・・・」

同じ女性でも思わずゾクッとしてしまうくらいセクシーな声に名前を呼ばれて、梨華は瞳を上げる。
その瞬間、唇が重なっていた。

「あ・・・んっ」

急に怖くなって、ひとみの肩を両手で押しのけようとするけれども、全然駄目。


「ん・・・んっ」

梨華が逃げようとすると、角度を変えて、もっと強く唇を押し当てられる。
甘くてあたたかい唇の触れ心地は、悪くはないけれど・・・。
って、問題じゃないっ!
梨華は耳まで熱くなりながら、ひとみの腕に爪を立てる。

(そうだ、私は、ひとみを誘惑してるんだから、キスの一回や二回くらいは仕方ないっ)

たかがキスだ。
これで、一番を取り戻せるなら、安いもの・・・。
・・・なんて自分に言い聞かせるけれども、なぜか涙がこみ上げてくる。

そしてその涙は、ひとみの同情は誘わずに、欲情の方を誘ってしまったらしい。

「ん・・・っ」

不意に舌を入れられて、梨華はもがく。
目的が目的なのだから、本当なら「大成功」と心で叫んで、
ピ〜ス☆マークのタイミングなのだけれど、エッチ関係に免疫のない梨華は、ひたすらパニック状態!!


十七歳にもなって、梨華はなんと、キスが唇を触れ合わせるだけの行為だと信じていたのだ。
もちろん梨華は、無垢と呼べるほど純な性格でもないし、とりあえず真面目な優等生の顔はしているが、実は女王様気質で、
負けず嫌いである。
そんな梨華に下ネタをふれる人間は、いたとしても亜依くらいのものなので、
梨華はそちら方面については、全く学習していなかったのだった。

「んん・・・っ、くふ・・・っ」

初めてなのに、いきなり本格的なディープキスを教えられて、梨華はあわてた。
逃げ出そうにも、カラダはしっかりひとみに押さえつけられて、
はねのけることさえできない。
助けを呼ぶのも変だし、どのみち本校舎とは別棟にある休日の生徒会の前を、偶然通りかかる生徒がいるはずもない。

「ん・・・っ、ん・・・っ」

ひとみの熱くて器用な舌につつかれたり吸われたりしているうちに、梨華は段々おかしな気分になってくる。
カラダが燃えるように熱いのは、もうとっくの昔からだが、もっと奥のカラダの中心が、とろけそうに熱く疼いている。
そして何よりも許せないのは、ひとみのくれるキスがすごく気持ちいいということだった。
どうして・・・こんなに・・・。


「んんーっ」

ひとみの袖におずおずと指をからませて、梨華は無意識にキスをねだってしまう。

そして、ひとみの方は・・・。
そんな梨華の華奢なカラダを抱きしめながら、心の中で「弱ったな・・・」と呟いていた。

飛んで火にいる・・・、もしくは棚からボタ餅のこの状況を、どう受け止めてよいものやら、さっぱり分からない。
高嶺の花・・・という表現がぴったり似合いそうなプライドの高い令嬢が、どうして自分から誘うような真似を・・・?
梨華自身がパニックしているくらいだから、石川家の事情を知らないひとみに理解できなくてもしょうがないのだが。

でも、なかなかおいしい状況だということは、正直に認めざるを得ない。


ひとみは腕の中で小さく震えている極上のごちそうの耳朶を、味見するようにペロリと舐めた。

(うん・・・、最高)

これでもひとみは味覚には自信がある。
ある事情で母と生き別れ、父は父で、泊まり込みの仕事ばかり。
そんな家庭環境のせいで、二人の弟の世話は、必然的にずっとひとみの仕事だったのである。
元々器用なことも幸いして、面倒な家事も、それほど苦にはならない上に、料理は特にひとみの得意分野だ。

「梨華・・・」

幼い末の弟にするように、ひとみは優しく、それでいて絶対的な威厳を込めてささやくと、しがみついている梨華の腕を外させた。


可愛い・・・という言葉が、同じ女性である梨華に対して誉め言葉になるかどうかわからないが、
ひとみのクラスメイト兼ライバルの梨華は、思わずそう呼んでしまいたくなるほどの美貌だ。
美しいものをかけ合わせた末にできた、歴史を感じさせる本物の美・・・。
こんな可愛くて、たおやかな美人は、世界中探しても、滅多にいない。
もちろん、その評価には、ひとみ自身の好みも多分に含まれていたけれども。
それを差し引いてもやはり、梨華は極上の美人だった。

その細面の健康的な小麦色の顔を両手で挟み上げて覗き込むと、星をいっぱいに宿した黒真珠の瞳がうるうると逃げる。
それだけで、きゅんと、胸と同時に別の場所も疼いてしまう。

(おやおや・・・)

ひとみは心の中で呟きながら、節操のない自分自身に、肩を竦める。


「どう・・・したいの?」

そんなことを尋ねたところで、応えが返ってくるとも思えないのだが、とりあえず訊いておこうというあたりが、意外に慎重派なひとみだ。

「梨華?」

思った通り、応えはない。
キスは欲しがるけれども、梨華は、それ以上の行為を自分から求めるつもりはないようだ。

「仕方ないなぁ」

誘っておきながら、おまかせですか?
恨み言のように胸の中でこぼすけれども、下手に主導権を握られるよりは、すべてまかせてもらった方がやりやすい。

何を・・・って?

そりゃあ、もちろん・・・愛の行為の最後まで。


何のつもりかは知らないが、せっかくこうやって、腕の中に飛び込んできた梨華だ。
一度逃がしてしまったら、とても次のチャンスがあるとは思えない。

だから・・・。

「全部、食べられてしまいなさい」

薔薇色に染まった耳もとにささやくと、ひとみは梨華の胸もとに指を這わせた。

「・・・・・・っ」

案の定、ひどく感じやすいカラダが、ピクンと跳ねる。

「カワイイカワイイ梨華ちゃん
 おいしく、おいし〜く料理してあげる

ひとみは言うと、優しく微笑みながら、梨華の料理にとりかかったのだった。




(な、な、なに?)

初めてのキスに惑わされて、憎い仇の腕にうっとりとカラダを預けていた梨華は、耳もとに落ちてきた、
ひとみの言葉にピクンとカラダを震わせた。
何だかとっても危険な台詞を聞いたような。

(聞きまちがいかな?)

梨華は、自分に言い聞かせる。
普段梨華が、ひとみに対して持っているイメージは、穏やかな感じ。
ひとみは、すべての成績が表わすように、何でもこなしてしまう。
完璧人間のくせに、あまりアクがない。
自然体というか、無難なタイプというか。
だからこそ、弾みとは言え、ユーワクなどという裏技を決行する気にもなれたわけで、
ひとみが遊んでるタイプだったり、アブナイ系だったりしたら、絶対そんな恐ろしい試みを実行に移したりはしなかっただろう。


「もう・・・逃げられないよ」

低い声が、梨華を金縛りにする。

「これから、梨華を食べちゃうんだから・・・」

「・・・っ」

ひえぇ〜っ・・・という高い叫びが、梨華の頭の中で渦を巻いた。

(もしかして、二重人格?)

と言うよりは、本性は滅多に見せないタイプか・・・。
恐る恐る顔を上げると、整った優しい顔が、もうすっかりキチク様に変わってる。声も・・・そう。
包み込んでくれる甘い声が、危険なくらいセクシーに掠れて・・・。


長くて形のいい指先が、梨華のテニス・ポロの上から、胸もとをつついている。
さっき触られたのは、ニアミスじゃなかったらしい。

「ん・・・っ」

さほど苦労もせずにシャツの上から、梨華の胸の先端を探し出す。
そして、ひとみの人差し指と中指が、そこを挟み込むようにさすり上げる。

「・・・・・・あっ」

未経験の甘い感覚に梨華は、怯えたように、ひとみの腕にすがりついた。

「ねぇ、感じるの?」

からかうようなささやき。
さらにクイクイとこねまわされて、別の場所まで疼いてしまう。


「よっこらしょ」

ひとみは、オヤジくさいかけ声をかけると、梨華を押しのけるようにソファに腰を下ろして、一気に梨華のシャツを捲くりあげてしまった。
そして、素早くブラのホックさえも外してしまう。
ひとみの前にあらわになった、梨華の形のよい、ふくよかな乳房。

「カワイイ・・・」

恥ずかしくなるような言葉の後に、濡れた感触が、梨華の胸もとを襲う。

「な・・・っ、何やって・・・」

「あ

「あ・・・っ」

味見と称したひとみの舌の動きに、梨華のカラダがのけぞる。

「さすが、極上・・・。舌触りも、味も、最高・・・」

(だから、そんな誉め言葉なら、いらない・・・ってば)


つつかれるように舐められるだけでも、おかしくなりそうなのに、
ひとみは、その先端に舌の先をからませて、チュクチュクッと吸い上げてくる。

「ひ・・・ぁっ」

「これ・・・、気持ちいい?」

濡れてプツンと尖ったピンク色の乳首を爪で弾きながら、ひとみが尋ねる。

「よくな・・・っ」

火照った顔を両手で隠して否定すると、そんな梨華を冷ややかに見下ろしながら、ひとみは、わざと意地悪く訊き返してきた。

「そう?よくないの?」

愛撫する手は休めずに・・・。


今度は触れるか触れないかのタッチで、かなり敏感になった先端を中指の腹で弄び始める。

「んん〜・・・っ」

焦れったそうに梨華が身悶えすると、ひとみは、半ば開かれた薔薇の花弁のような梨華の唇の上に身を屈めた。

「おいしそう・・・」

ささやきの後に、貪るようにたっぷりと湿らせたキスと、乳房への愛撫・・・。
ひとみのカラダも、緩やかに昂ぶってくる。

「も・・・、・・・めて・・・」

キスから逃げるように、鼻にかかった梨華の高い声・・・。
何から何まで・・・カワイイ


「梨華がそう言うなら・・・やめてあげるけど・・・」

自分でやめてと言ったくせに、梨華の口元は、不満げな形になる。

(わがままなんだから・・・)

ひとみは、愛しげに微笑むと、もう熱を持ち始めている梨華の華奢な腰へと、掌を這わせた。

「ん・・・っ、や・・・っ」

「嫌じゃ・・・ないでしょう?」

それでも、中心へは触れずに、その周囲をゆるゆると撫でまわす。

「どうしたのかな?ここ・・・」

指先で、下から上へ撫で上げると、ピンク色のショーツに、じわっと淡い染みがにじむ。

「ん・・・っ」

それに気付いているのか、いないのか、梨華はカラダを竦めて、小さく震えている。

「ふぅん。意外とせっかちなんだ」

本当は、予想通りで、意外でも何でもないのだけれど、そのあたりは、リップサービスということで・・・。


「あぁ、でも、着替えはあるから心配しなくていいよ」

ひとみに言われて初めて梨華は、自分の状況に気づいたようだ。

「いや・・・っ」

濡れたそこを隠すようにうつぶせようとするのを邪魔して、ひとみは甘くささやく。

「大丈夫。私がキレイにしてあげる」

抗う梨華を簡単に片手で押さえつけながら、

「このままじゃ、気持ち悪いでしょう?」

と、もう片方の手で、スカートのホックとファスナーを外して、ショーツごと一気に引き下ろす。
そして、梨華の薄いしげみに、掌を這わす。

「ああ・・・ん」

初めて触れられる他人の手の感覚に、梨華が喘ぐ。
その唇を軽く人差し指で撫でながら、

「安心して・・・」

とささやくと、ひとみは、しげみの中の蕾のような小さな膨らみにそっと唇を押し当てた。

「やあ・・・っ」

華奢な腰が大きくうねる。


それでも逃がさずに、ひとみは、唇をそろりと這わせる。

「あぁ、ここも梨華に似て、最高にカワイイ

「ん・・・やっ」

梨華は、切なげに眉を寄せる。
最高という響きは甘いけれど、それ以上にひとみの唇の動きが焦れったい。
梨華のやや熱くなった花弁の奥からは、とっくに大量の秘液が溢れ出ているのに、
ひとみは、わざと気付かないふりをして、前のピンク色の小振りな蕾に、唇をすべらせている。

「も・・・っ、やだ・・・っ」

梨華は叫ぶ。

「やだぁっ。・・・やく、・・・かせてぇっ」

責めるように闇雲に、梨華は、ひとみの頭を抱き寄せる。

「仕方ないなぁ。 じゃあ、とりあえず一回・・・」

不穏な台詞を口ずさむと、ひとみは、蕾に唇を押し付け、舌先を
とがらせて甘皮の上から、小鳥がついばむような刺激をくわえた。

「ん・・・っあ・・・っ、あぁ・・・っ」

梨華の内股が、突っ張るようにぎゅっと閉ざされる。

「も・・・、やぁぁ・・・あっ」

その瞬間、梨華の奥からは、トクトクと透明な秘液が大量に溢れ出していた。


「どう?よかった?」

弛緩したしなやかなカラダを撫でながら、ひとみは、甘やかすみたいな声で梨華に尋ねた。
梨華の柔肌は、強すぎる快感の余韻に、全身が淡い薔薇色に染まっている。
まだ、ツンと上を向いている胸の突起に、そっと舌をからめながら、しっとりと閉ざされた内股を、ひとみは、ゆるゆると撫でまわす。

「も・・・っ、さわらないで・・・」

けだるげに上げられた華奢な手が、力なくひとみの指を払いのける。

「いま・・・、されると・・・、おかしくなっちゃう・・・から・・・」

そんなこと言われても・・・ね。
ひとみは、意地悪な笑みを口もとに浮かべる。

「まさか、これでおしまい・・・のつもりじゃないでしょうねぇ」

口調だけは、優しく・・・。


「梨華が誘ったんだから、ちゃんと最後まで責任は取ってもらわなきゃね」

「えっ??」

ひとみは、小さく苦笑を洩らすと、自分の人差し指と中指を怯えている梨華の口の中に入れる。
固まって動けない梨華の口の中を、妖しく蹂躪するひとみの2本の指。

「梨華のせいだよ。 梨華が私を空腹にさせたの」

食べさせて・・・。
低く掠れた声で、梨華の耳もとにお願いする。

「・・・ゃっ、やだ・・・っ」

ソファの上で後ずさろうとする梨華の太腿をひざで割り開きながら、
カラダの上に乗り上げた。

「濡れてるうちの方が、楽だと思うけど?」

ひとみのその一言に、おもしろいくらいに梨華が怯える。

「それとも・・・、梨華も私を味見してみる?」

この口で・・・。
チャプンと2本の指を口から引き抜き、
薔薇の唇を、その指で緩やかに撫でながら、
ひとみは、そう宣告した。


数分後・・・。
梨華は、すでに濡れぼそっている、ひとみのソコに、ぎこちなく舌を這わせていた。
予定では、ひとみを恋の奴隷にして、何でも言うことをきかせるつもりだったのに。

「もっと、丁寧に・・・」

頭の上から、ひとみのお叱りが落ちてくる。
やはりこれでは、ひとみが女王様で、梨華が奴隷・・・。

「もう、やだ・・・っ!!」

黒真珠の瞳をキッと上げて睨む梨華の顎を、ひとみの指先が撫で上げた。

「梨華が止めたいなら構わないよ」

「本当??」

一瞬、うるっと瞳を輝かせた梨華だったが、ひとみの次の言葉に愕然となる。

「な〜んてネ!梨華ちゃんって、いくちゅですか〜?(笑)
 こんな状態で、止められる訳ないじゃん♪」


「・・・・・・っ、私・・・。もう帰る!!」

起き上がろうとする梨華を再び引きずり戻して、ひとみは、ゆっくり首を横に振った。

「大丈夫・・・。とみこは優しいから、無理やりグイグイ押し込んで、
 梨華がアンアン泣くのを見て、喜んだりしないから・・・」

(ひぃ〜っ。  怖いっ!!)

なまじ・・・にこやかなだけに、なおさら・・・。

「痛くしないから、安心して・・・。いいね?」

いいね・・・も何も、がっちりと押さえ込まれた両膝を抱え上げられた状態で、
「いやだ」は許されないでしょう、やっぱり。
梨華は、ギュッと瞳を閉じて、覚悟を決めた。


ひとみは、まず中指で、梨華を味わい始めた。
もちろん、初めてなのだから、中指一本だけでも、結構大変・・・という感じだ。

「いや・・・っ。 痛いっ!」

声をあげた瞬間だけ、指が入り口へ戻るけれども、
また少しずつ中へ侵入してくる。
それも、梨華の内壁を指の腹で、緩やかに探りながら・・・。

「何・・・してるの?」

「内緒・・・」

尋ねても、返事はそれだけ・・・。
でも、ひとみの指が、ある場所に触れた途端、
梨華の頭の中は、いきなり真っ白になる。


「あ〜っ、や・・・っ。 なに・・・?」

返事はない。
その代わり、ひとみの指が、なおもしつこくそこを撫でまわしている。
快感を直に刺激されているみたいな感じで・・・。

「やっ。やだっ、変になっちゃう〜〜」

腰を振ってどうにかやり過ごそうとするけれども、
追ってくる快感から逃げられない。
甘い波が、後から後から追いかけてきて、梨華をはがいじめにする。

「あぁ・・・っ、あぁ・・・っ、やあぁ・・・ん」

下腹部の最も奥底が、燃えるように熱くなって・・・。

「ひぁぁぁ〜〜っ」

なんと梨華は、ひとみの中指一本だけで、あっけなくイッてしまっていた。


カラダは果てしなく気持ちいいのだけれど、一人だけ二度もいかされて
しまった屈辱感が、例えようもなく不快・・・。

「もう・・・っ、嫌い!ひとみなんて・・・大っ嫌いよ!」

(最初から全然・・・好きなんかじゃない。人をめちゃくちゃ恥ずかしい目にあわせて・・・。もっと・・・もっと・・・嫌いになってやるんだからっ)

梨華は、ぐしょ濡れの目もとをゴシゴシと拭う。

(誘惑なんか、もう・・・やめる!)

一番なんて、なれなくていい。石川家の末代までの笑い者でもいいっ。

(もう 帰る〜っ)

ヒステリーを起こそうとした寸前に、ひとみのあたたかな腕が、
ふわりと梨華を抱きしめた。

「梨華・・・、良い子だから」

「同じ歳なのに・・・、子供扱いしないで」

不機嫌丸出しで言うと、

「ごめん」

と、鼻先に優しいキスが降ってくる。
そして間を置かずに、唇にも・・・。


「好きだよ、梨華。ずっと好きだった」

「えっ?」

問い質そうとした瞬間、ひとみの指がまた中に入ってきた。
今度は、中指と人差し指の2本が・・・。

「あ・・・っ」

(こんなの・・・ズルイッ)

螺旋を描くように、ひとみの指がねじ込まれて、梨華は口もとを押さえる。

「んっ、ふ・・・っ」

口を塞いでる梨華の手を外させ、再び柔らかく舌で吸い上げるような
キスをすると、ひとみは、ゆっくりと2本の指の抜き挿しを開始した。
ぐちゅっ、ぐちゅっと、濡れた音が絶え間なく響く。

「あぁ・・・っ、あ・・・んっ」

ひとみの指の先端が、梨華の感じる場所を突いている。
何度も何度も・・・。


まるでそこが梨華のイイところなのを最初から知っているみたいに。

(あ・・・そうか。さっきひとみは、ソコを探していたんだ)

不意に梨華は、そのことに気付く。

(同じ十七歳なのに・・・ほんとに・・・上手)

でもそんな考えも、また激しくその場所を突かれて吹き飛んでしまった。

「あぁんっ、ひとみ・・・っ」

ひとみの背中に爪を食い込ませて、梨華は夢中で腰を振る。

「梨華・・・、カワイイ・・・」

強く抱き締められて、心地よさにフゥッと意識が飛びかける。
こうなったら、テクニックでひとみに勝とうと思ったのに。
でも、パワーもテクニックも、ひとみの方が上だ。
誘惑される・・・。
妖しく蠢く長い指に・・・。抱きしめてくれる腕に・・・。
低くて掠れた声に・・・。甘い・・・吐息に・・・。
負けたくない。 だけど・・・

「ひとみ・・・っ、好き・・・。大好き・・・っ」

梨華は、こらえきれずに、ひとみにしがみついて告白する。


その瞬間、熱く火照った耳もとを、ひとみの吐息が濡らした。

「私も梨華・・・。初めて会った時からずっと、梨華だけを見てた」

(え?初めて会った時から・・・って、いつ?)

そのところを詳しく確かめたいのに、その話は後回し・・・と言うように、
ひとみの指がもっと奥へ進んでくる。

「あ・・・っ、いやっ。ひとみ・・・っ」

ずっとずっと奥まで入ってこようとするひとみの指に、
梨華は息を喘がせながら、頭を振る。

「や・・・っ、死んじゃうっ。感じすぎて、死んじゃうよぉ・・・っ」

「駄目だよ、梨華・・・。これからもっともっと・・・梨華を
 気持ちよくさせてあげるんだから」

言葉通りに、ひとみは膝に抱き上げて、さらに深く・・・
そして、指の抜き挿しを早くする。

「あぁぁ・・・んっ、ひとみ・・・」

「なぁに?」

「もう・・・一番になんかなれなくていいっ。ひとみが好き〜っ」

さらさらの髪を振り乱しながら、何が何だか分からなくなって梨華は叫ぶ。
そんな梨華に、ひとみはそっと口づけながら、

「馬鹿な梨華ちゃん・・・。私にとっていつだって、梨華が一番だよ

甘く・・・そうささやいた。




「ねぇ、さっき、ひとみが言ってたことだけど・・・」

とりあえず制服に着替え、周囲のエッチの形跡を用心深くチェックした後で、
梨華は、ひとみに膝枕されながらソファに寝そべっていた。
外はすっかり暗くなり、休日練習に励んでいた運動部の生徒たちも、
そろそろ後片付けにとりかかっているようだ。

「さっき言ってた・・・って、何のこと?」

酷使してしまった梨華の細い腰を優しくさすってあげながら、
ひとみが斜めに首をかしげる。
エッチの最中のキチク様は、すっかりナリをひそめて、普段の穏やかなひとみに戻ってしまっている。


「私のこと・・・初めて会った時から・・・、・・・だった・・・って?」

あんな最中じゃなければ、照れくさくて、

(( 好き ))

・・・なんて言葉は、口には出来ない。

「ああ・・・?初めてあった時から、梨華にぞっこんだったけど」

こちらは、素面(しらふ)でも平気で恥ずかしいことが言えるタイプらしい。
梨華は、思わず悔しそうな顔になる。
きっとひとみは、何があっても世の中をスイスイと渡ってゆけるタイプだ。
それに比べ梨華自身は、無器用な性格がわざわいして、
つまずいた拍子に一気に骨折して入院・・・なんてことになりそう。
そう思うと急に、またひとみが憎らしくなってくる。

(やっぱり、ひとみなんか嫌い・・・)

キリッと睨み上げる梨華を、ひとみは愛しくてたまらないといった
眼差しで見つめた。


「それが、どうしたの?」

甘すぎる瞳に覗き込まれて、梨華は、ついうっかり赤面してしまう。
こうやって間近で見ると、この吉澤ひとみは、ものすごく美人なのだ。
額に乱れる髪。優しい色の大きな瞳と、少し意地悪そうな口もと・・・。
それだけでドキドキしてしまうのに、エッチの時のあの声とか、
唇とか、指先とかを思い出すと、梨華は、またカラダが熱くなってくる。
梨華のそんなもやもやした気持ちが伝染したのか、ひとみの掌が、
そろりと梨華の膝の間にすべり込んできた。

「・・・っ。もう、だめっ」

わざと乱暴に払い除けると、ひとみは残念そうに梨華を見つめる。

「本当に・・・、エッチなんだから」

そう言って睨む梨華に、軽く肩をすくめてみせると、
ひとみは強引に話を戻す。

「で・・・、何だっけ?」

急にもじもじしながら、梨華は横目でそっと、ひとみを窺った。


「あのね、私のこと、好き・・・なんだったら、どうしてあんな
 嫌がらせのようなことをしたのかなぁ・・・と思って・・・」

「嫌がらせって?」

「だからぁ・・・。私が一番を取ろうと思って何かをすると
 必ず邪魔しにきたじゃない!」

「へっ??」

ひとみは、形のいい指先で前髪を掻き上げながら、首を捻る。
ひとみの指先が揺らめく度に、さきほどの行為を思い出してしまって、
梨華は思わず息を呑んでしまう。

「邪魔なんか・・・した覚えはないけど・・・」

「えっ、でも・・・っ」

ひとみの言葉に、梨華はガバッと身を起こして、真正面からひとみに詰め寄った。


「だって、あの時も、あの時も・・・」

梨華は一つずつ思い起こすように、指を折って数え上げる。

「あの時って言われても・・・。もっと具体的に」

「だからね・・・」

うんうん・・・と、ひとみが顔を寄せてくる。

「まず訊くけど、どうしてテニス部に入部したの?」

私?と、自分を指差すひとみに、梨華は頷く。

「テニスじゃなくたって、部活なんか、いっぱいあるでしょう?それに
 中学の時は、バレーやってた・・・って、言ってたじゃない」

「ああ」

ひとみは甘く瞳を細めた。

「理由は一つなんだけど」

「何?」

「梨華と一緒にいたかったから・・・

「はい?」

梨華はポカンとひとみを見上げる。

「それだけ?」

「そうよ。入学式の朝、チャペルの前の桜の下で、梨華に一目惚れして、
 偶然にも同じクラスになって・・・」

本当にラッキーだったなぁ・・・と、ひとみは、しみじみ呟く。


「私はアンラッキーだったけど・・・」

「まぁ、そう言わないでヨ。私はその時、梨華に運命を感じたんだから」

唇を尖らせる梨華の髪を、ひとみは、なだめるように撫でた。

「でね、これはもう、梨華が私の思いに気付いてくれるまで
 梨華の目につくところにいるしかないと考えたわけ」

「じゃあ、生徒会長に立候補したのは?」

「もちろん、梨華と一緒にいたかったから」

「そんなぁ・・・。じゃあ・・・弁論大会は?都内女子高選抜トライアスロンは?
 全国高校クイズ選手権は?ベーグル早食い競争は?」

ひとみは、にっこり笑う。

「愛する梨華と、いつも一緒にいたかったんだ。それだけ

(ガーン・・・)

梨華は、へなへなと脱力して、ひとみの胸もとに顔を埋めた。


そんな理由のせいで、掃いて捨てるほどの二番の賞状と盾を
コレクションしてしまったなんて・・・。
なんだか涙が出てきそうだ。
ぐすんと目もとを拭うと、梨華は、ひとみの袖をつかんだ。

「じゃあ・・・、もう・・・これからは、私の一番の、邪魔・・・しない?」

とりあえず両想いになったわけだし、何もなくても一緒にいていいから・・・。
そう小さくつけ加えて答えを待つ梨華の、濡れた黒い瞳を
見つめ返して、ひとみはフフッと口もとで笑った。

「どうしようかなぁ」

わざと意地悪に言うと、梨華の瞳が、ゆらっと潤む。
涙は駄目だ。つい苛めてしまいたくなる。

「両想いになったのはいいけど、今度は梨華が浮気しないよう、
 ずつと・・・見張ってなくちゃいけないし・・・」

斜めに見下ろすひとみの胸もとで、梨華がクッと唇をかんでうつむく。

「うそ・・・だっぴょ〜ん」

ひとみは笑いながら、梨華の目もとに口づけた。


「梨華が恋人になってくれるんなら、もう邪魔はしない」

「ほんと??」

泣き出しそうだった瞳がキラキラッと輝く。

「本当・・・。もっとも、今までだって邪魔してたわけじゃないんだけどねぇ」

ちょっぴり疑わしそうにまばたきをする梨華の額を、
ひとみはツンと指先でつついた。

「梨華さえ、そばにいてくれれば、他は何もいらない。
 梨華が望むなら、奴隷にだってなれるよ」

「ひとみ・・・」

梨華の頬が、かわいい桜色に染まる。

「奴隷・・・だなんて、そんな・・・。ひとみは・・・私の大切な・・・」

恋人だもん・・・と恥ずかしそうに声をひそめて耳もとにささやく梨華を、
ひとみは、ぎゅっと抱き締めた。

「梨華、もう離さない・・・!」

「でも、私の一番の邪魔はしないでね」

甘えるように抱きつきながら、梨華が言う。

「約束する・・・。私のカワイイ梨華・・・」

ひとみは、梨華の手の甲に口づけながら誓う。

やがて、近づいた吐息が、秘めやかに重なって・・・。
くぐもった喘ぎが甘く、闇に溶けていった。




そして、二週間後・・・。
地元放送局主催の市民マラソン大会のスタート地点は、
ビーチサイドの緑地公園。
せっかくラブラブになったばかりなのに、一週間もエッチお預けで、
まさに万全を期して臨んだこの大会だ。
今日こそ一番・・・と、嬉しそうにストレッチに励んでる梨華の肩を、
ひとみは優しく叩いた。

「梨華、頑張ってね。私も応援してるから・・・」

「うん。結構強敵が出るみたいだけど、絶対勝つよ」

梨華の眩しい笑顔と、すらりと伸びた眩しい生足に、
ひとみは、クラクラと瞳を細める。

「期待してるから・・・」

人目を盗んで、素早くキスを掠め取る。

「行っておいで・・・」

小さく手を振るひとみに頷き返して、梨華は出場者たちの
集まっている方へ、走っていった。


快調なスタートを切ってトップグループに潜り込んだ梨華は、
ハイペースを維持しながら走り続けた。
本当は長距離よりも短距離の方が得意だけど、選り好みはしていられない。
今日から再び、トップに返り咲くのだ。
吹きつける冷たい潮風さえも、心地よく感じられる。
テニスで鍛えたこの足で、絶対勝利を勝ち取ってみせる。
汗でにじむ視界の先で、ゴールのテープが揺れている。
ひとみさえいなければ、他の人なんて怖くない。
ラストスパートをかけて、完全にトップに踊り出たと思った瞬間、
フッと風の流れが変わった。
とっさにかたわらを振り向くと、そこには・・・。


「ひとみ・・・っ。どうして・・・っ?」

「一週間もアレをお預けにしたくらいだから、すごく調子良いんだろうと思ってネェ〜」

ハァハァ言っている梨華の横で、涼しげな顔のひとみが言う。

「もう・・・な・・なんでよ・・・っ。まさか・・・そんなこと、根に持ってるわけじゃ・・・」

「ところが・・・根に持ってるんだよね〜」

横に並んで走りながら、ひとみは、冷ややかに呟いた。

(うそ・・・っ)

思わず足をもつれさせる梨華に、ひとみは意地悪な笑みを投げると、
梨華の背中のゼッケンを励ますように叩いた。

「そんなわけだから、お先に・・・」

耳もとにささやいて、ひとみはスピードを上げる。
必死で追いかけるけれども、数歩及ばず、ひとみの切ったテープが
梨華の腕にからみついた。


苛々しながらテープと格闘している梨華に、しゃあしゃあと、ひとみが
近づいてきた。

「残念だったね」

もう何度もキスをした唇が言う。

「ごめんね。また勝っちゃって。でも、一番って本当に気持ちいいよネ〜♪」

「な・・・、何言って・・・」

「梨華の気持ち、わかるな。すっかり病みつきになりそう」

その瞬間、テープと一緒に、梨華の理性もプチッと千切れた。

(やっぱり、ひとみは敵だ。天敵だっ!。平和共存なんて、もうやめる。
 こうなったら、徹底的に誘惑しちゃうんだから〜)

「宣戦布告!!」

梨華は拳を握りしめる。
そして、ひとみの腕をつかむと、人のいない木陰まで引っ張ってゆき、
梨華は、意地悪でセクシーなその唇に、自分から口づけた。

「大胆な梨華ちゃん

驚く振りをしながらひとみは、梨華の薔薇の唇をちゃっかりおいしく味わっている

「勝利の美酒は甘いけれど、梨華の唇には、勝てないワ

ひとみの低い声に、ズキンとカラダが疼く。
でも、そんな殺し文句に負けたりなんかしない。


「家帰って、エッチしよっ。エッチ・・・」

「とみこは構わないけど〜♪表彰式は?」

「すっぽかすの!」

「まじめな梨華ちゃんがどうしたの?」

熱でもあるんじゃ・・・と額に触れてくるひとみのてのひらを、
唇に引き寄せながら、梨華は一人誓う。
今に、吉澤ひとみを、この石川梨華の足もとに跪かせてみせる。
この憎たらしいひとみを、骨抜きのメロメロの奴隷にして、
足なんか舐めさせてやるんだから・・・っ。
一年以内に必ず・・・。

(その時こそ、一番も、卒業式の答辞も、ひとみの気持ちも・・・
 み〜んな私のものだ〜!!)

そんな野望に気付いているのかいないのか、メラメラ燃える
梨華の黒い瞳が、また・・・たまらなく可愛くて、

「愛してる、梨華・・・」

そっとキスを掠め取りながら、もっとたっぷり意地悪をしてあげたいと
思ってしまう、困った朝ヶ丘学園の生徒会長様だった。


        
  〜〜 END 〜〜


 

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