娘。の一日 吉澤編



『よっすぃ〜、起きて・・・』
『え・・・梨・・・梨華ちゃん!!なん、なっ、はぁっ?』
 
その日、目がさめると梨華ちゃんがいた。
・・・・・・全裸で。
真っ白な部屋の中で、これまた真っ白いダブルベットの上でどこか幻想的だ。
よく見るとあたしも全裸。
これはなんだ?
どっきり?
いやいや、落ち着け、落ち着くんだ、どっきりなら全裸なんて撮るわけない(寝起きはあるけど)。
・・・・・・だったらなんだよ。


などと懸命に考えていると、今まで無言だった梨華ちゃんが声をかけてくれた。
 
『どうしたの、疲れてる?昨日えっちしすぎちゃったのかなぁ』
 
・・・・・・なんですと!?
えっちって、あのえっちだよね。
あたしと誰、・・・梨華ちゃんが?
聞き違いだよね、うん聞き違い、聞き違い。
 


『激しかったもんね、昨日。途中から倒れるかと思ったよぉ、休ませてくれないんだもん』
 
真っ赤な頬を手のひらで覆いながら『きゃぁ』などと言っている梨華ちゃん。
いつのまにそういう関係になったんだ、全くもってわからない。
記憶喪失というやつだろうか。
 
『あ、あのさ梨華ちゃ・・・』
『あんっ』
『はい?』
 
ほーーーーーーーっ!?


あいぼんのがうつったのは百歩ゆずっていいとして、なんであたし梨華ちゃんの胸さわってんの
・・・もしかしなくても、そぅとぅやばい?
 
『こここ、これはっ、ちが、ちが・・・』
『よっすぃ〜、もう朝だよ・・・?』
 
胸に触れている手に自分の手を添えて潤んだ目で見つめてくる。
期待と羞恥に入り混じった表情。
淫猥な雰囲気が立ち込めている。
 
ふと、梨華ちゃんの顔がまじかに迫っているように感じた。
いや違う、あたしが近づいて・・・あれ、なんで目閉じてんのさ・・・ちょちょ、
ちょっ、待ってまっ・・・・・・ああぁぁぁ・・・
 

「・・・ちゃん・・とねー・・」
 
ゆさゆさ
 
「うぁぁぁぉぉ・・・ううう」
「ひ、ひとねーちゃん?大丈夫??」
「・・・・・・う?うおあぁ!?」
「うわっ、お、お母さん、ひとねーちゃんが変〜〜」
 
目の前にいたのは梨華ちゃんじゃなく・・・弟だった。
甘えん坊の弟は涙目でおろおろしている。
なんだか梨華ちゃんみたいだ、なんて考えててほんとに泣かれても困るので
「ごめんごめん、寝ぼけてたんだ、ねーちゃん」と言って精一杯の笑顔。


弟をなだめながらさっきの夢を思い出す。
途端に鼓動が早くなった。
 
「ひとねーちゃん?なにぼーっとしてるの」
「ねーちゃんがぼーっとしてんのはいつものことだろぉー」
 
いつのまにかもう一人の弟が部屋の前にきていた。
しかし今の台詞は聞き捨てならないな、姉として。
生意気さは加護以上だ。
 
「それどういうことよー、こらっ待ちなさい!まったく生意気盛り
なんだからぁーっ」
 
その後しっかり三人ともお母さんに頭をはたかれた。
吉澤家は今日も平和だ・・・たぶん。
 


「おはようございます」
「あ、おはようよっすぃ〜。早いね」
「う、うん、りりり、梨華ちゃんこそ」
 
今朝の夢の所為で目を合わせられない。
あんな夢見るなんて、願望だったりして・・・うああぁぁごめん梨華ちゃんー!
 
「まだみんな来てないんだ。早く来すぎちゃったかなぁ」
「ええっ!きき、来てないの?」
 
周りを見まわすけど梨華ちゃん以外誰も見当たらない。
二人っきり、二人・・・ああもう、なんで全部夢につなげちゃうんだよー!。
 

「よっすぃ〜なんか変だよ、疲れてるの?」
 
・・・『どうしたの、疲れてる?』
 
「う、ううん!別にしすぎたわけじゃ・・・」
「しすぎた?何を??」
「何って、えっ・・・あはは、な、なんでもっ?」
「ほんと?」
 
こくこくと一生懸命頷く。
梨華ちゃんはまだ訝しげにしてたけど、次々にメンバーがやって来たから
それ以上追求しなかった。


今日の撮影は新曲のジャケ写、だけどいつになっても始まらない。
中澤さんはスタッフに事情を聞きに行っている。
安倍さんはいつものように遅刻。
仕方ないので、矢口さんと喋って暇をつぶしている。
本当は飯田さんも一緒なんだけど途中から”宇宙と交信”をし始めてしまった。
たまに、本当にたまにだけど『もしもし、こちら地球。どうぞ』と言いたくて
堪らなくなる。
飯田さんも変だけど、あたしもそぅとぅ変らしい。
 


「ん?よっすぃ〜も交信中?」
「あ、違いますよ。ちゃんと聞いてます」
「・・・・・・吉澤ぁっ!!」
「(びくうっ)ははは、はいっ!?」
 
今まで動かなかった飯田さんが、くわっと目を見開いてあたしを吠えるように
呼んだ。
いつもながら理解不能だ。
 
「・・・・・・・・・」


あたしを呼んでから軽く二十秒程たった。
飯田さんはぴくりとも動かない・・・死んでたらどうしよう。

「・・・飯田さん?」
 
「・・・・・・圭織もちゃんと聞いてるよ?」
 
打って変わって優しげな微笑と声。
・・・何者なんだろう、飯田さんって。
 
「え、あ、はい、ありがとうございます」
「キャハハ、よっすぃ〜、なにがありがとうなんだよう!もう面白いなぁ」
「ふふっ、吉澤は天然だね」
「あうぅ」
 
飯田さんにまで笑われてしまった。
さすがに恥ずかしい。
というか、そういう貴方は電波では・・・


「・・・吉澤・・・圭織怖い?」
 
今度は悲しそうに目を伏せてる。
本当に飯田さんの行動は理解できない。
きっとうたばんであたしが言った事を気にして言ったんだろうけど、
結構前の話だし、さっきまで笑ってたんだけどな。
 
ここは最近習得した”アレ”を使おう。
密かに練習した飯田さんの必殺技。


「・・・・・・飯田さん、”ねえ、笑って”!!」
 
「「「「「ぶっ!!!!」」」」」
 
楽屋にいた矢口さん、飯田さん、梨華ちゃん、ごっちん、保田さんが一斉に
吹き出した。
 
ごっちんにいたっては飲んでた”なっちゃんオレンジ”でむせている。
ああ、柑橘系はきついんだよね。大丈夫かな。あ、保田さんが背中擦って
あげてる
・・・・・・笑いながら。
 
・・・・・・あれ、でもあたし飯田さんに元気出してもらおうと思っただけ
なんだけどな。
なんで笑われてんの。


漫画を読んでたらしいののとあいぼんは、何が起きたのかわからないように
きょとんとしている。
 
「キャハハハハハ、似てる似てるーー!」
矢口さん
 
「面白いけど、圭織そんなに怖くない!・・・っくく」
飯田さん
 
「よ、よっすぃ〜(笑)」
梨華ちゃん


「あはっ・・・げほげほげほ・・・ひぃぃーー!くるしっ・・け・ちゃ、
たすっ。げんっげんっ」
ごっちん
 
「ちょ、後藤涙でてるよ。ほらハンカチ・・・って、鼻をかむなぁぁーーー!!」
保田さん
・・・苦労人だなぁ。
 
「え?え?なんれすか、どうしたんれすか?」
のの
 
「なにがあったん?梨華ちゃん・・・・・・はぁっ?ライバル宣言かい、
よっすぃ〜〜!!」
あいぼん
・・・違う、断じて違う。


・・・・・・笑ってって言ったんだから、笑うのが普通ではあるんだけど。
みんななんだかあたしの言った意味とは少し(かなり)違う笑いだ。
ショック。


「うん、矢口もびっくりしちゃったさ」
「あはは、そういえばこのあいだも・・・」
 
ひとしきり笑って(笑われて)満足したあたし達は、未だ戻ってこない
中澤さんを待っていた。
そして飯田さんはというと、また交信を始めてしまった。
その時・・・
 


「ふひゃぁぁ!?なな・中澤さん!」
 
梨華ちゃんが中澤さんに抱きつかれて悲鳴をあげている。
いつものこと、と目線を戻そうとした瞬間ちくりと胸が痛んだ。
少し前なら梨華ちゃんが頬にキスされててもこうはならなかった。
やっぱり今朝の夢の所為かな。
 
「?矢口さん、どうかしましたか」
「・・・あ、どうもしないよ」
「そうですか」
 
しゅんとしているように見えたのはあたしの勘違いかな。  


「・・・大丈夫だよ、矢口、吉澤」
 
「「え?」」
 
見透かされてるような感覚、交信してた飯田さんが突然真剣な顔で言った。
『お告げでもあったんですか?』なんて冗談でも言えないような感じ、
飯田さんはさらに言葉を続ける。

「圭織わかるんだ、そういうの・・・がんばってね」
「圭織・・・いつから」
「矢口はずっと前、吉澤はついさっきだよ」
「そっか、がんばるね矢口」
「うん」


・・・二人は微笑み合っている。
あたしは全然ついていけなかった。
いったい何をがんばるんだろう、『ついさっき』からしてわからない。
もしかして”ものまね”か?
 

「・・・矢口さん」
「ん?なに、よっすぃ〜」
 
「矢口さんも”ねえ、笑って”やりたかったんですか?」
 
「・・・・・・・・・よっすぃ〜?」
「・・・・・・・・・吉澤?」
 
あれ??
不思議そうに見られてる、何か間違っただろうか。
 


「なに勘違いしてんの吉澤っ、あれよ。あ・れ!」
 
少なからず呆れたような表情で飯田さんが指差した先には、
中澤さんに抱きつかれて困ったような顔をしてる梨華ちゃん。

ん?今なにか貰ってた。
小さな銀紙に包まれた物、薬かな。
きっと胃薬か何かだろう、ストレスを溜め込みやすいタイプだから。
 
「よっすぃ〜、本当にわかんないの」
「あ、はい、わかりません。なんだったんですか」
「だ〜から〜、圭織が言ってるのはぁ〜・・・」
「圭織、わからないなら今は知らない方がいいかも」
「え〜〜そうかなぁ〜、吉澤はどう?」
「いやぁ、どうって言われてもなにがなにやら」
 
でも知らない方がいいなんて言われると逆に知りたくて堪らなくなる。
矢口さんは教えてくれなそうだけど飯田さんなら・・・
 
「い・・」


「はいみんな〜裕ちゃんに注目〜!撮影は二,三時間程遅れます」
 
あたしの質問は狙ったかのように中澤さんに阻まれた。
ううぅぅぅっ気になるーっ!なんなのさーーっ!!
 
「あ、それから矢口ちょっとこっち来」
「んあ?なに裕ちゃん」
「(ニヤリ)・・・やぁ〜〜ぐちぃ〜〜♪」
「なっなにすんだよぉー、裕子ぉっ!」
 
寄ってきた矢口さんにがばぁっと抱き付く中澤さん。
矢口さんも慣れているからか満更でもなさそう。
 
「よっすぃ〜、ここいい?」
「う、うんっいいよ。それにしても二時間も何しようかな〜暇だねぇ」
「そだね」
 
自然と早口になってしまう。
梨華ちゃんもなんだか落ち着きがない、
あたしの緊張が伝わってるのかもしれない。


それから十分ほどやや空回り気味の会話を続けていたら、梨華ちゃんの様子
がおかしくなった。
内股をしきりにもぞもぞと擦り合わせて、両方の手をぎゅうっと握り締めてる。
俯きがちな顔を覗き込むと、眉間に皺を寄せ歯を噛みしめてなにかに堪えて
いるよう。
 
「梨華ちゃん、具合悪いの?」
「っ!え、あの・・・」
 
変だ。
瞳は潤んでるし頬はほのかに赤く上気している。
極めつけは滲み出ている色気。
 
夢に出てきた梨華ちゃんと同じ・・・
いや違う錯覚だ、夢の影響で錯覚を見てるんだ、うんうん

・・・うぅ、ちょっと強引だったかも。
 
「大丈夫?」
「っあぁ!」
 
そっといたわるように肩に手を置いた瞬間、梨華ちゃんの体がびくっと震えた。
どことなくえっちっぽい悲鳴と共に。


「あ・あの、私っ・・・トイレ行ってくる!」
 
耳まで真っ赤にして、あたしの視線から逃れるように楽屋から出て行った。
トイレに行きたいのを我慢してたのか。
言い出せなくて困っていたのかも、だとしたら全部納得がいく、ような気がする。
な〜〜んだ、あたしの妄想じゃん、まったくこぉ〜のスケベはーー!
あははははーーーははーは・・
 
 
・・・・・・・・・むなしい。
空元気って余計に辛いものなんだなぁ。
 
「げふっ!?」
 
物思いにふけっていると、いきなり座っていたソファーの後ろから誰かが
抱き付いてきた。
もとい、ヘッドロックを仕掛けてきた。


「ぃよう!よっすぃ〜今日も男前やな」
「なか、中澤さ・・はいっ・入って・・ますっ」
 
中澤さんの技は完璧に入っていた。
ああ、意識が薄れて・・・助けてぇ・・・人でなしぃぃぃ。
 
「おっとぉ、わるいわるい。ついやってもうたわ、堪忍な」
「づいでずんだらげいざづはいだだいんでず!」
「おぉう、日本語プリーズ、ギブミー、チェケラッチョー」
「げっほげほ、意味のわからない英語で対抗しないでください!」
「怒りっぽいな・・・カルシウム足りないの?」
「(ギロリ)中澤さん!!」
「うぅ〜ん、怒っちゃいやっぷぅ〜〜♪」
 
完全にからかっている。
最終的に親指を立てて口に持っていき、そのうえでしなを作るという
ミニモニも真っ青のロリロリポーズに落ち着いたようだ。
誰かこの(厄介な)人を回収してくれないかな。


「で、何の用ですか」
「んふふふ、聞きたい?聞きたぁい〜?」
「・・・当たり前じゃないですか」
「あん、つらないんだから。でも、そこがす・て・き♪」
 
しつこい。
関西の人はネタをやらないと本題に入らないものなのか
・・・あたし絶対関西には住まない。
 
「・・・・・・さようなら」
「あっ、ちょぉ待ちーや。裕ちゃんのとっておきの情報やで」
「いいです、もう・・・」
「・・・待て言うてるやろ、しばかれたいんかい、ゴルァァッ!」
 
満面の笑みであたしの襟首をさり気なく掴み、他のメンバーに聞こえないように
低い声で囁く。
・・・中澤さんが結婚できない理由の一部を垣間見たような気がした。


「しゃあないなぁ、耳の穴かっぽじって聞き。あんな、夏先生おるやん?」
「夏先生がどうしたんですか」
 
なんでそんなに偉そうなんだ、と心の中で毒づきながら返事をする。
それにしても何故中澤さんはあたしに夏先生の話をしようというのか。
 
「・・・・・・あの人な、石川狙いやねん」
「・・・?」
「なんちゅうか石川のあの生真面目な所に惹かれたんちゃうかな」
「・・・??」
「かなり本気みたいやし、落ちるんも時間の問題・・・
ってなに不思議そうにしてんねん」
「だだだ、だって夏先生って・・おん・な」
「良くある事やで、吉澤も石川狙っとるんやろ」
「んなっ!そんなこと・・なんでそう思うんですか!」
「裕ちゃぁ〜んのぉ、目ぇ〜は千里がぁぁ〜〜ん♪
隠〜し事〜なんてでぇ〜きないのぉ〜♪」
 
ぞうさんの歌(ぞ〜おさん、ぞ〜おさん[以下略])の節で歌い出す。
・・・・・・レイコもういや!


「そんでやな、今・・・」
 
何事も無かったかのように真面目な顔で喋り出す。
百面相・・・という言葉が浮かんで消えた。
 
「石川トイレ行っとるやろ」
「・・・盗み聞き」
「うっさいわ!この失礼天然!!」
「しつ・・・(絶句)」
「ええわもぉ〜、ゆうたらんも〜ん!フンッ!!」
「いいですよ」
 
「「・・・・・」」
 
「・・・待って、やっぱ聞いて」
「はい・・・で?なにかしら」
「くぅっ、この」
 
ついついレイコが入ってしまった、あたしのお嬢様ぶりも板についてきたみたいだ。
中澤さんが拳を握り締めてるのは見なかったことに・・・、って無理か。
ごちっ、と鈍い音。
途端に周りがお花畑に変わったような気がした。
 
・・・・・・中澤さん一応アイドルなんだからグーは ・・・


「黙って聞きぃーや、あぁ?」
「ったぁ〜・・・はぃ」
 
ごほんと咳払いをして話し始める。
 
「石川トイレからまだ帰ってこん、変やと思わんか」
「まあ、そういえばそんな気も」
「うちの推理やと、夏先生に喰われてんで」
「へぇー・・・・・・っはぁ!?」
「手段選ばん人やし大丈夫かなぁ、めちゃくちゃになって帰って来たりして」
「めちゃ・・・」
「助けに行った方がええんちゃう?」
「あ、は・はい!」
 
どうしよう梨華ちゃんになにかあったら、なにか・・・
 
『石川、もっと大きな声で!ボイストレーニングは歌手の基本よ』
『も・もう・・だめですぅ』
『ほらもっと腰を!』
 
なぁんて。
 
 
・・・・・・・・・許すまじ、夏!!←(すでに呼び捨て)


その頃、走って楽屋を飛び出す吉澤を不気味な笑みで見つめる人影が一つ。
 
(ふっ、矢口は誰にも渡さへんで。
・・・それにしても夏先生には悪い事してもうたかな、あんな嘘ついて)
(ま、いつもしごかれてる仕返しっちゅーことで。むふふふふ♪)
 
「おぉい、や・ぐ・ちぃ〜〜♪」
「うわぁっ、重いって裕子ぉ〜」
 
手段を選ばないのは中澤の方だった。


ここは楽屋から一番近いトイレ。

石川は自分に起こった異変に戸惑いながら、回らない頭で原因を考えていた。
ほんの十分ほど前は何ともなかったはずだ。
いや、本当は思い当たる事は一つあった。
だがそんなわけない、そんな事あるわけない、と打ち消そうとした。
なぜならその原因が『モーニング娘。リーダー中澤』だったからだ。
元テニス部部長という事もあってか、石川は上下関係や仲間意識などの
体育会系な所が人一倍強い。
 
だからこそすっかり騙されて飲んでしまったのだ。
・・・・・・『媚薬』を


石川は中澤との会話を思い出し、それによって快楽からの逃避をはかろうとした。
気休め程度にはなるかもしれない。
 
あの時石川は、吉澤と仲良く話していた矢口を羨望の眼差しで見ていた。
すると中澤が後ろから抱き付き、こう言った。
 
 
『・・・なあ、裕ちゃんが手伝ったろか』
『はい?てつ・・・なん・・え??』
『なにパニクっとんねん、石川は吉澤と付き合いたいねんな?せやから
裕ちゃんが手ぇかしたるゆうてんねん。どや、悪いようにはせんで(ニヤリ)』
『は・はあ・・』
『あ、え〜とどこやったかな・・・あ、あった。ほい』
『・・・これなんの薬ですか?惚れ薬なんてベタな落ちじゃないですよね』
『う・・・いやその』
『・・・・・・・・・(じぃ〜)』
『違う違う、漢方薬や。効能はただの滋養強壮なんやけど、
【素直になれる】っちゅうおまじない付き』
『う〜〜ん、【素直】って・・・』
『うわっ!一石二鳥でめっちゃお得やん、裕ちゃん感激!!
騙されたと思って飲んでみ?な、な??』
『はい、あ〜ん』
『え、あの』
『ん?口移しがええんか、石川って意外とだ・い・た・ん♪』
『・・・・・・自分で飲みます』
『冷たいなぁ。せや、これ飲んでからなるだけ吉澤とおり。
そのほうが効果があんねん』
『んじゃ、がんばりや。・・・はいみんな〜裕ちゃんに注目〜!・・・・・・』
 
そういえば異常なほどに【素直になれる】薬を飲ませたがっていたような気がする。
考えれば考えるほど不審に思えた。
 
(メンバー、それもリーダーを疑うなんて私すごく性格が悪いのかもしれない)
 
普通なら中澤に貰った薬の所為だという事くらいわかりそうなものだが、
ネガティブな石川は全部自分の所為だと言い聞かせる。
とことんポジティブにはなれない性格だ。


結局逃避したところでどうなるわけでもなかったらしい。
先程からの腰の辺りのどんよりとした熱は、
波のように引いてはその度に大きくなって帰ってくる。
 
不意にすうっと思考が停止していくような感覚。
それを感じ取って石川は堪えることを諦めた。
それほどまでに媚薬の効果は強大だったようだ。
どうせ後二時間程度で仕事だ、それまでに自然とおさまるようには思えない、
こうするより他無いんだ、そう結論付けると残っていた理性を押し流した。
 
まずTシャツを捲り上げ、背中にあるブラジャーのホックを外し、
わざとゆっくりずり下ろして胸をさらけ出す。
テレビ局のトイレでこんな格好をしているという事実が
たまらなく石川を興奮させた。
豊満な胸に手のひらをあてがい円を描くように撫でる。
 
「んんぅ・・・っは・・」
 
あまりの快感に漏れてしまう声に構う事すらできない。
しばらく弄んでいると股間が疼いて、体も小刻みに震えてきた。
しかたなくタイル張りの壁にもたれかかり、
右手をミニスカートの中に差し込んでいった。


「ふぁぁっ!んくぅ・・」
 
下着に浮かび上がった縦筋に指を滑らせると、ぞくぞくと背筋に電流が流れた。
そこはすでに下着の上からでも分かるほどにしっとりと湿っている。
何度か往復するとものたりなくなり、今度は裾から直に触っていった。
陰核は痛々しいくらい硬く勃起していて、全体がぐちょぐちょに濡れそぼっている。
指を動かすたびに嫌らしい音が個室に響き渡り興奮を煽る。
 
「んっんっんは・・ぁん」
 
愛撫しながら頭に浮かんできたのは吉澤のこと。
仕事の前にこんな事をしているのを知ったら彼女はどう思うだろうか。
 
そんな事を考えていると、その頭の中の吉澤は自分を愛撫し始めた。
それを石川も望んでいた。
想像の中で彼女に抱かれるのは初めてではない。
石川だってもう女子高生、自慰の経験位はある。
いままでに幾度も吉澤を想ってした筈だ。
 
自分の手を吉澤の手に置き換えて抱かれているのを想像しながら、
左手で胸を撫で、右手の中指を秘所に挿入する。
処女の石川には一本の指でも少しきつめに感じたが、
媚薬で異常なほど溢れた愛液のおかげですんなりと入った。
 
「あ・よっすぃ・・ぁっくぅ」
 
石川は【吉澤の指】を貪欲に貪っていく。


ドクン・・ドクン・・ドクン・・・
 
何にも考えないでトイレの前まで来たけど、この中にまだ居たら
無事なわけないんじゃないか?
それに両想いになってないとは限らないし、無理やり入っていって
邪魔になっちゃったら・・・
それで梨華ちゃんと夏先生がいちゃついてたら、そしたらあたしは
・・・あたしは・・・
 
・・・どうすればいい?
 
苦笑いしながら扉から出てくの?
涙を堪えて?
 
嫌だ、絶対嫌だ。
でもどうする事も出来ないし。
しかも何で嫌かよくわかんないし。
 
ああぁぁ!もう!!
こうやっててもなんにもなんないよ。
開けよう・・・居ないかもしれないし、うん・・・居ないかもしれないし。
 
[どうか居ませんように・・・]
 
ぎゅっと前で手を組んでお祈りのポーズ、やらないよりマシだよね。
・・・たぶん・・・ちょっと自信無いけど。


・・・ちゃ・・・
 
出来るだけそうっと開ける。
もしいちゃついてても気づかない内に出て行けるように。
 
「んっんっんは・・ぁん」
 
!?
梨華ちゃんの声だ。
 
・・・・・・やっぱり神様はあたしのことが嫌いなんだ。
キリスト教じゃないからか?
お経でも唱えた方がよかったかも。
 
どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・
・・・おおおおお、落ち着けぇーー!落ち着くんだぁーーーっ!
こんな時こそクール吉澤、一日三回クール吉澤、食後に一錠クール吉澤・・・
って何言ってんのかわかんないよぅ。
電波?電波受信??
やばっ、デカモニどころかロボモニ結成じゃん!!
 
・・・・・・・・・大丈夫か、あたし。


「あ・よっすぃ・・ぁっくぅ」
「ひゃいぃっ!?」
 
な、なんであたしが居ること知ってんのさ!?
おもわず妙な声で返事しちゃったよ。
 
「・・・・・・だ、誰?」
 
怯えの含まれた声。
誰って言われても・・・さっき呼ばれたから返事したんだけど。
 
「あ、あたし、吉澤・・・」
「・・・・・・え?」
「梨華ちゃん?」
「いつから・・居たの?」
 
あからさまに『動揺してます』って感じ、やっぱり迷惑だったのかな。
 
「・・・名前、呼ばれる少し前」
「名前・・・ごめんなさい・・・」
 
悲しげに返される。
ごめんなさい?
 
「なにが?」
「だって私・・・ごめっ・・んっ!」
「ちょっ・・大丈夫?」
「っふ・・・大丈夫だから、もう・・行っ・・・て」
 
最後の方はほとんど聞き取れなかった。
言葉の端々にいやらしい吐息が混じっている。
ははっ、ほらね?
邪魔だって・・・馬に蹴られないうちに出てかなきゃ。
出て・・・
 
・・・・・・やだよそんなの・・やだ!
 
そう思った途端あたしの口からとんでもない言葉が飛び出した。


「そこに、夏先生が居るから?」
「え?なん・・でぇ??」
「なんでって、なんで知ってるかってこと?」
「ちが・・・うぅっ、ひゃぁ」
「じゃあ何、もっと夏先生にしてもらいたいから?だからあたしが邪魔なの?」
「よっす・・ぃ?」
「梨華ちゃんは夏先生がいれば大丈夫なんだ、あたしなんかいらないんだ!」
「なに言って・・・」
「もうあたしに笑いかけないで!名前なんか呼ばないで!
あたしになんか触れないでよ!!」
 
・・・やつあたり
あたしの中のとてもとても大事な回路は音を立てて壊れてしまったみたいだ。
これがどれだけ醜い感情かなんて百も承知で、
それがどれだけ梨華ちゃんを傷つけるかもわかってた。
だけどそうしないではいられなかった。
いくら鈍感なあたしでもこの感情がなにかくらい分かる。
 
嫉妬
 
今のあたしに題名でも付けるとすればきっとこんな感じ
『嫉妬に狂うストーカー』とか。
あはは・・・バカみたい。
梨華ちゃん呆れちゃってるね。
それとも怒ってるかな。
あはっ、そりゃそうか、いきなり難癖つけられて怒鳴られるんだもん。
それも恋人といたしてる最中に。
あたしならモンゴリアンチョップくらわすね、てゆーか半殺し?
ふふふっ


笑ってる筈なのになにか生暖かい雫が頬を伝った。
その雫はコンクリートの床に黒い染みを作っていく。
汚い心の持ち主は涙にまで嫌われるのか、それとも涙まで黒く汚れてしまうのか。
どちらにしてもこんな方法でしか自分の感情をコントロール
できないあたしは卑怯だ。
 
「・・・ごめん・・も、行くから」
「っ待って!!」
 
ドアノブを掴んだ瞬間止められた。
こんなときだけタイミングばっちりだね。
でもどうするつもり?
ほっぺたでも引っ叩く?
あはは、あんまり痛くないんだろうなぁ。
 
異常なほど冷静に梨華ちゃんの言葉を待つ。
本当にもうどうでも良かったから。


「・・・あのっ私・・よっす・・・ひあっ」
 
話してる合間にもぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえてくる。
 
あはっ
夏先生はあたしと喋るときも愛撫してるのか。
露出プレイってやつ?
知らなかったよ、梨華ちゃんにそんな趣味があったなんて。
ううん、夏先生の方かな。
そんなのどっちでもいいけどね。
それじゃあ言葉を選んでるのかよがってるのかわかんないよ?
それともこれ以上見せ付けたいわけ?
これが邪魔した報復なら、梨華ちゃんって顔に似合わず残酷なんだ。
 
あたしは考えうる限りの侮蔑の言葉を心で吐いた。
一刻も早くここから去りたかったし、それを引き止め自分達の
セックスのネタにしているバカップルと話なんかしたくなかった。
 
それでもここに居るのは梨華ちゃんを嫌いになれそうだからだ。
そうなれば今よりきっと楽になれる、そう確信していた。


「夏せん・・せ、なんて・・いな・いよぉ?」
 
・・・へぇ
今度は嘘つくの?
ははは、もういいよ。
もう十分。
ご馳走様でした。
 
なんで梨華ちゃんなんて好きになったんだろ。
見る目ないんだな、あたし。
ホントにバカみたい、あたしも・・・梨華ちゃんも・・・
 
「あははっ、・・・・・・いいかげんにして!
嘘つく梨華ちゃんなんて嫌いだよ、大っ嫌い!!」
 
そうヒステリックに叫んで、梨華ちゃん達が入ってる個室のドアを思いきり蹴った。
 
だけどテレビ局のトイレのドアって結構脆かったみたい。
あたしの蹴りのせいで鍵は壊れ、扉はものすごい勢いで全開になった。
きゃあっていう悲鳴が聞こえた。
梨華ちゃん達にぶつかるかな?
なんて思いながら見てたら誰にもぶつからずに壁にあたって跳ね返ってきた。
おかしい、個室なんてそう広くない、
なのにあたしには梨華ちゃんも夏先生も見えなかった。


おもわず中を覗き込むと個室の隅で泣きながら自分を慰めている梨華ちゃんがいた。
夏先生なんてどこにも居なかった。
梨華ちゃんが言ったことは全て本当で、かってに勘違いしたあたしが一方的に
責め立てたんだ。
理解した瞬間、自分が梨華ちゃんにとった行動がフラッシュバックしてきた。
どうしようもないほどの罪悪感。
 
ふと、あたしの気配を感じたのか梨華ちゃんが顔を上げた。
でも目が合うとばっ、と俯いて涙をぽたぽたと落とした。
この涙はあたしが流させてしまったんだ。
 
そっと指で拭おうとするとびくっと反応してがたがた震え始めた。
他の誰でもないあたしが怯えられてる。
胸がズキズキと痛む。
悲しい、だけど梨華ちゃんはこの何倍も悲しかったんだ。
 
「っごめん・・ごめんなさい・ごめんなさい・・・ごめっなさ・っく」
 
梨華ちゃんの上着の端をつまんで謝る。
こんなことしても一度出した言葉が戻るわけじゃない。
それでも、自己満足かもしれないけど謝りたかった。
自分が悪いのに涙が溢れてくる。

あたしの涙はきっとものすごく汚い。


まるでその言葉しか知らないかのように繰り返した。
何度も・・何度も・・・
 
もちろん始めは謝罪の気持ちだったけど、
途中からそれが梨華ちゃんを追い詰める悪魔の呪文であることに気づいた。
だけど他に何をすべきかも分からない。
頭の中は真っ白。
ただ機械的に繰り返す。
 
思った通り梨華ちゃんは一生懸命涙を堪え始めてる。
あたしは涙を堪える事もせず呪文を唱え続ける。
自分がここまでひどい人間だったなんて思わなかった。
勝手に逆上して、怒鳴って、泣かせて、そのうえ慰める事も相手に任せて・・・
 
梨華ちゃんはようやく涙を止める事に成功したのか、
真っ赤な目をして捲くれ上がってたTシャツをただす。
 
「いいよ、気にしてないから」
 
ぼそりと一言。
あたしに気を使ってるのかどんどん言葉を続ける。
不自然な明るさ。
 
「それにこんなとこで変な事してた私がいけないんだし。
よっすぃ〜は全然悪くなんかないよ。
・・・変態になんか付き合ってちゃ駄目だよ・・・はやく戻りなよ、ね?」
 
次から次へと出てくる自虐的な言葉。
全てを自分のせいにしていく。
それを言わせたのはあたし。


 
「・・・やだ」
「え?」
「戻らない、ここにいる」
「なんで、だって・・え」
 
混乱してる。
意味不明だもんね、あたしの行動は。
でも今じゃないとずっと言えない気がする。
それにこのままじゃ
・・・ずっと貴方を壊しつづけそうだから。
 
「好きだから」
「だからここにいる」
「どこにも行きたくない」
「梨華ちゃんのそばにいたい」
 
そう言って力いっぱい抱きしめた。
 
梨華ちゃんが欲しい。
オモチャ売り場で駄々をこねてる子供と同じ。
自分勝手で強引。
 
こんなあたしを受け入れてくれる?


抵抗しないでされるがままになっている梨華ちゃん。
後が続かない・・・どうしようかな
 
ガサリ・・・
 
なんだ?
胸ポケットに紙のようなものが入ってる。
あたしは普段胸ポケットなんて使わない筈だ。
・・・ものすごく嫌な予感がするんだけど
 
腕の中の梨華ちゃんに気付かせないように取り出す。
 
 
『石川の飲んだ媚薬の効果は3回程イッたら治まります。
協力してあげてね♪
それでは吉澤さんの健闘を祈りつつ、フェードアウトォ!
 
PS.自分の気持ちに【素直】になりましょう。
以上、愛のキューピッド中澤でした!チャオ!!』
 
 
・・・・・・・・・おいおい。
恐ろしく簡潔なメモ、チャーミーのパクリ。
しかも『愛』じゃなくて『悪』の間違いじゃないんですか中澤さん。
気持ちどころか本能に【素直】にさせてどうするんだ。
突込みどころは山ほどあるんですけど・・・


「・・・よっすぃ?」
 
絶句していたあたしを不思議に思ったのか下から覗き込んできた。
えっちな目にどきりとする。
腰のあたりにある梨華ちゃんの手は止められないのか、
もぞもぞと動いて控えめに音をたてる。
・・・今すぐにでも協力してしまいたい。
 
いやいやいや、駄目だって早く教えてあげなくちゃ。
自分で飲むわけないじゃん、媚薬なんて。
 
「・・・これ、今見つけたんだけど」
「・・・・・・」
「梨華ちゃん?」
「・・・・・・」
「ちょぉっ、梨華ちゃん?梨華ちゃんってば!!」
 
見せた途端硬直してしまった梨華ちゃんの肩を揺する。
お願いだからここでは気絶しないでほしい。


「こ、これって・・」
「いつのまにか胸ポケットに入ってた」
「・・・・・・中澤さん・・だよね」
「・・・たぶん」
「あ、あのさ、よっすぃ」
「ん?」
 
あたしとメモ用紙を交互に見ながら言い辛そうにきりだす。
なんだろう、もしかして・・・
 
『協力して欲しいの・・』
『えっ・・・い、いいの?』
『うん、よっすぃ〜がいい』
『梨華ちゃんっ!』
『ぁんっ・よっすぃってばぁ』
 
・・・・・・はっ!?
やばいやばい、もう少しであっちの世界に逝くとこだった。
てゆうかあっちってどこさ・・・ソビエト?
なわけないか、あっちはあっちで、うん。
よくわかんないけど、うん。


「ちょっと・・出ててほしいんだ」
「・・・へ?」
「ダメ?」
「なんでっ!?」
 
つい叫んでしまう、だってもう協力するつもりだったんだもん。
 
「こ、これから・・しなきゃいけないし」
「いいじゃん、あたしがするよ!」
「えぇっ!?」
 
今度は梨華ちゃんが叫ぶ。
そういえば告白はしたけど梨華ちゃんからの返事は聞いてない。
なんでそんな大事なこと忘れるんだ、あたし。
 
「・・・梨華ちゃんさ、あたしのこと嫌い?」
「そっ、そんなことないよ」
「・・・ほんと?」
「う・うん」
「じゃあ好き?」
 
ずいっと顔を近づける。
視界いっぱいに梨華ちゃんの顔。
あと数センチでキスできる体勢だ。


「・・・・・・」
 
無言で目を逸らされた。
さっきひどい事いっぱい言っちゃったもんなぁ、嫌われちゃってたりして、
でも嫌いじゃないって・・・いやあたしが怖いから我慢してたのかも。
急に不安になってくる、ああちょっと泣きそう。
 
「・・・・・・好き?」
 
あたしは捨てられた子犬のような目(保田さんが言ってた)で梨華ちゃんを見る。
目が合うとぎょっとされた・・・変な顔だったのか・・・?
梨華ちゃんはおろおろしながら話し出す。
・・・・・・変な顔通り越して怖い顔だったんじゃ・・・
 
「好きだよ、だけど・あの・・」
「メンバー愛ってこと?」
「そうじゃなくて・・・なんていうか」
「友達とか?」
「ちがっ・・・恥ずかしいの!」
「え、なにが?」
 
いったいなにが恥ずかしいのかわからない。
梨華ちゃんはきょとんと素で返したあたしに、困ったような慌てたような感じ。
 
「い・いきなり・・するなんて、へ、変だと思う」
「・・・することに抵抗があるってこと・・・だよね」
「うん」
「ってことは、梨華ちゃんもあたしのこと好きだって思っちゃってもいいの?」
「・・・うん」
 
躊躇いがちに頷く。
 
あたしは心の中で十字を切った。
・・・・・・ありがとう神様!!


「・・で・出てくれる・・かな?」
「えっ、あ・うん」
 
ゆっくりと体を離す。
もうちょっと抱き合っていたかったんだけど、仕方ないよね。
見詰め合ってるのが恥ずかしくなったのか俯く梨華ちゃん。
そしてその目線を追うように下を見てしまうあたし。
その下には当然梨華ちゃんの足が・・・うぉ!?。
 
太腿がおびただしい量の愛液で光ってる。
普通こんなに出るモノなのか?
 
自慢じゃないがあたしは耳年増だ、シモネタもよく話すし、
えっちな本を友達どうしでまわし読みしたりもする。
実はAV(友達のお姉さんの)だって見たことがある。
経験はないが知識だけはそ〜と〜豊富、なんてことは女子高ではよくあることだ。
 
だけどどんな知識の中にも膝のあたりまで濡れているなんてのはなかったぞ。
・・・・・・媚薬って恐い。
 
「よっすぃ・・見ないでぇ」
 
小さく掠れた声、AVみたいって言ったら失礼かもしれないけど、
なんていうか・その・・そそられるって感じ。


ぴたり
 
「よっすぃ!?」
「・・・ん?」
 
あ゛・・・無意識のうちに梨華ちゃんの太腿に手が・・・
やっぱりぬるぬるするものなんだ・・・じゃない、早く離さないと。
 
「あ、ご・ごめんね。そんなつもりじゃ」
 
『ならどんなつもりやねん!』と中澤さんの怒声が頭の中で響いた。
あんまり思い出したくない声だ。
なんて思いながら離した手の指を動かす、特に意味は無い。
にちゃっと糸を引く液体をまじまじと見ると、
無性に自分の体の中に取り込みたくなってくる。
惹きつけられるように口元に運び、
ぺろりと舐め取ると口の中が梨華ちゃんの匂いでいっぱいになった。
それは変わった味で、舌が痺れるような不思議な感じがした。
なぜか心臓が早鐘を打つ。
 
「っやだぁ!!」
「うわっ!?」
 
梨華ちゃんが半泣きで愛液で濡れている手をあたしから引き離した。
ほとんど何も考えないで舐めていたあたしは、手と一緒に引っ張られてしまう。
再び密着、しかも今回はそれだけじゃない。
あたしの唇は梨華ちゃんの唇の端にぶつかり、引っ張られた手は胸を掴んでいた。


手のひらから梨華ちゃんの鼓動が伝わってくる。
すごく速い、あたしのと同じくらい。
・・・・・・もしかしてチャンス?チャンスなの?
 
あたしの頭の中では議論が交わされていた。
 
『レイコ的には、このままいっちゃっていいと思うわ。
だって私は世界のレイ(以下略)』
『ここでやめたら恥じゃろうて、のう、かよこさん』
『ピーターモソウオモイマース、デモピーターニホンゴワカリマセーン』
 
別に持ちネタで議論しなくてもいいような気もする。
だけどこの方が速く決着がつく・・・・・・かなぁ。
まあそれはいいとして、い・いくぞ・・!
 
ずりずりと唇を合わせていく。
梨華ちゃんは目を見開いている、
でも嫌がらないからあたしの行為はエスカレートしていった。
下唇を舐めると「んっ」と喘いで目を閉じた。
そのまま唇をわって舌を差し込む、
さっき舐めた愛液のせいか抵抗無くつるりと入った。
あいている手で腰を抱き寄せる、力を入れると折れてしまいそうなほど細い。


胸に置いた手に少しずつ力を入れていく。
前から思ってたけど本当に大きい。
梨華ちゃんは絡めあっている舌に意識を集中させていて、
力が入っていくことに気づかないようだ。
直に触れようとTシャツの裾から手を忍ばせていった。
あたしの汗ばんだ手が肌に触れて初めて今の状況を理解したのか、唇をぱっと離す。
 
「あ・だ・・めぇ、よっすぃ」
 
だめだと言いながら梨華ちゃんの左手はあたしの首にまわっている。
いったいどっちなんだろう。
 
「だめ?」
 
耳元で囁くとなんだか自分がとてつもなく嫌らしく思えた。
声の混ざった吐息があたしの耳にかかる
だけど返事らしい返事がないので、もう一度同じことを囁く。
さっきよりも自分の声が掠れていて、興奮しているのがわかった。


・・・・・・返事が無い。
何故だぁ?
まさか寝てたり・・・ううん、ごっちんじゃあるまいし。
 
「・・・梨華ちゃん?」
「・・ん・」
 
かろうじて起きてはいるらしい。
ん?ならなんで返事無しだったんだよ。
3度目の正直、うん3度目なら返事もあるよ。
 
「ねえ・・だめなの?」
「・・・・・・」
「どしたの?」
「うぅ〜、よっすぃのいじ・・わるぅ」
「?なんでさ??」
「なんでって」
 
「もぉ、いいよ。・・して・ください」
 
小さく溜息をついて泣きそうな拗ねたような表情で呟く。
その前の『もぉ、いいよ』が気にならないでもないが・・・
あたしまたなにか間違えたのかな・・・


まあ、いいとして・・・『してください』ですよ、どうですか!?
くぅーーーーっ!この敬語がまた、えっちぃなぁ〜。
もう梨華ちゃんったらーーっ
・・・ってなんか、中澤さんみたいになってきてないか(汗)
 
あれ?あたしさ、もしかしてすごく大切な事忘れてないかい??
 
・・・したことないじゃん、オナニーすら。
あははー、これは大変だぁ〜、どうしましょぉ、てへてへ
・・・じゃないよ、どうすんだマジで。
ものすっごくへたで梨華ちゃんが困っちゃったら、それどころか
 
『・・・・・・期待外れ(ぼそ)』
 
なんて言われたら立ち直れない、いやこんなこと梨華ちゃんは言わないか。
言わないよね・・ね?・・・・今嫌な汗が背中をつたったぞ、おい。
とにかく知識を総動員して見よう見真似でやるしか、うん、それしか道は無い。
 
梨華ちゃんの顔を伺いながら胸を揉む、初めて丸出しだ。


「っあ・・ぅん」
 
いつもの甲高い声をさらに高くして喘ぐ。
それがもっと聞きたくて、さらに力を入れた。
 
「・・っふ・ぃった」
「あ・ごめんっ」
「ん・だいじょぶ・・」
 
力を入れすぎたのか梨華ちゃんの身体はびくんと反りかえった、
早速ヘマをやらかしたみたい。
苦痛に顔を歪めていたような気がする。
 
「梨華ちゃん、ほんとに大丈夫?」
「・・・・・・よっすぃかわい〜」
「えぇっ?」
「だって一生懸命なんだも・・んんっ」
 
ちょっと笑いながら小さい子供に言うように言う。
普通あたしが『かわいい』とかなんとか言うんじゃないのか?
立場逆転してるよぅ。
でも実は嬉しかったりして・・・


その言葉に少しだけ勇気づけられたあたしは、腰にまわしていた手を太腿に
滑らせる。
 
「梨華ちゃんの方がかわいいでしょ?」
 
太腿を上に撫で上げながら、わざとぶっきらぼうに言って唇に舌を差し込んだ。
 
「んふふっ」
 
なんだか嬉しそうに笑って舌を絡めてくる。
あたしなりの照れ隠し、きっと梨華ちゃんにはバレバレなんだろう。
 
ぐっしょりと濡れた下着に触れると、まだ梨華ちゃんの手が中で動いていた。
下着の裾から手を差し込んでその手を出す。
刺激が減って物足りなくなったのか舌はいっそう暴れまわった。
両腕でぎゅうっとしがみつきながらあたしの口の中を喉まで犯していく。
 
「は・ん・・ぅん・・・んくっ」
 
梨華ちゃんの喉から、流れ込んだ唾液を飲むゴクリという音がした。
自分が梨華ちゃんの中に取り込まれるようで気持ちいい。


不意にあたしの太腿に梨華ちゃんの腰が擦り付けられた。
ジーンズの濡れる感覚。
布越しに熱くなっているのがわかる。
 
胸の先を指で弄りながらそこに触れ、そっと撫でた。
 
「んっ・・・んんんっ!!」
 
梨華ちゃんはびくびく震えて、
少しすると力が抜けたのかあたしの胸にもたれてきた。
・・・これってもしかして・・・
 
「梨華ちゃん・・・イったの?」
 
小さく頷く。
・・・え、これでおしまい?
なんか不完全燃焼っていうか・・・その、早くないかい?
あ、でも3回程だよね・ね?
・・・ですね、ですね、ですねですねですねっ・・・って違う。
何故に『ちょこっとラブ』。やっぱ病院行った方がいいのかも。
 
「ち・ちなみに、これって何回目?」
「・・・1回目」
「じゃ、後2回だね(やったぁ」
「なん、なんでそんなに嬉しそうなの(汗」
「う゛・・・いや、別に」
「・・・・・・よっすぃ(汗」
「まあいいからいいから、2回目2回目っ!」


訝しげな梨華ちゃんをどうにか制して、首筋を舐める。
【基本!これをしなきゃエッチじゃない!!】
とかいう特集がこのあいだ買ったレディースコミックの巻頭にあったのだ!
 
・・・・・・鵜呑みにしてるあたしはもうダメなのか、どうなのか・・・
っていうか買ったことからして逝ってよし!なのか・・・
 
「あ・ふぁっ」
 
それでも幸い感じてくれているようだ。
レディースコミックも侮れない。
 
下着の中に入れたまま動かしてなかった手をもそもそと動かす。
『○○○を触らないで戦はできない』と意味不明なことも書かれてたから。
・・・戦ってなんなんだよ?と思ったことは心の小箱に仕舞っておく。
 
梨華ちゃんのアソコは指が触れるたびにヒクヒク痙攣する。
よくわからないがこうなるものなんだろう、普通。
さっき触れた時よりも確実に愛液で潤っていて、
そしてとても熱く感じた。


指の先にあたった尖ったもの。
それを擦りあげると梨華ちゃんの腰が跳ね上がった。
これが俗にいう『クリトリス』というやつなんだろう。
あたしはそれが敏感な性感帯だと知っているので、
そこを指の腹で執拗に攻め立てた。
押し潰すようにしたり、つまんでみたり、
その度に梨華ちゃんは声を上げて反応する。
そうなるとまるで梨華ちゃんの全てを握っているような、
妙な支配欲が湧き上がってきて・・・
あたしってサドだったんじゃ・・・なんて思ってしまう。
 
いや、こんな状況なんだから誰だってこうなるさ!うんうん!!
 
やや強引に自分を納得させて次の行動に移る。
次といったらこれ・・・かな?
 
「あの、あのさ梨華ちゃん・・・そのぉ〜指挿れてもいい?」
 
恥ずかしくて小声になってしまう。
梨華ちゃんに許可を取っている自分がかなり恥ずかしい。
どうして大人っぽく上手にできないんだぁ〜っ!
・・・・・・って、当たり前か。
初めてで手馴れてたらそれはそれで怖い。


「・・・うん」
「じゃ、じゃあ・・・」
 
挿れたときに少し抵抗があったけど思ったより簡単に入った。
初めて触れた梨華ちゃんの中は、ぐねぐねと別の生き物みたいに指を締めつける。
 
「・・・っああぁ!」
「あっ、痛い?」
「ううん、それよ・・りっ、動か・・・してっ」
「・・・えっと・・・こう?」
「んっ、あっ・・・ぁん」
 
息が一段と荒くなっている。
梨華ちゃんは唇に軽くキスをしてから、あたしの首筋に舌を這わせはじめた。
 
「梨華ちゃ・・・!?」
「指・・・止めな・・・いで」
「あっ、うん」
「ん・・ちゅ・はぁ」
 
子猫がミルクを飲む動作とは全然違う激しさ。
貪るように首を舐めまわす。
あたしが梨華ちゃんにしたのと比べると大人と子供といった感じがする。
つまり、そのくらい舌の動きがいやらしいのだ。


「っは・・梨華ちゃんっ!」
「んむっ・・・んくっ・・っふぁ」
 
ぴちゃぴちゃと下からの音と合わさるように水音が響く。
熱い舌が首筋を行き来するたびに、あたしは股間が疼くようになってきていた。
その疼きを紛らわすために、指を激しく抜き差しする。
 
最初きつかった梨華ちゃんのなかも、慣れて来たのか緩くなって来たように感じる。
もう1本くらい大丈夫かな?
そう思って挿れている指に人差し指を添えて、ゆっくり中に滑らせた。
 
「ああぁっ!?」
 
いきなり指の動くリズムと太さが変わって驚いたのか、
ひっきりなしに動いていた舌を止めて絞り出すように嬌声を上げる。
梨華ちゃんを乱しているのが自分だと思うとすごく興奮した。
 
「あっ、あっ、ひぁっ・・」
「気持ちいい?」
「あくっ・・ぅん・い・・ぃよ・・あっ」


「あっ、あっ、あっ、あっ・・・んはぁ」
 
指を突き上げる度に声を漏らす。
トイレの外まで聞こえるんじゃないだろうか、
というほどに梨華ちゃんの高い声はこの小さな空間に響き渡っている。
 
「んっ・・よっすぃ・・・も、だめっ」
 
2度目の絶頂が近いのを知ったあたしは、指のスピードを速めていった。
首にまわした腕にどんどん力が入って少し苦しい。
 
「だめ・・だよぅっ・・・はあっ・・ぁう」
「いいよ・・・イッて」
 
あたしの口から随分と甘ったるい声が出た。
こんな声普段なら絶対出せないだろう。
 
「んはっ・・ふあああぁっ!・・・ああぁ・・・っくぅ!」
 
身体を大きく震わせて絶頂に達する梨華ちゃん。
痙攣がおさまるのを待って指を抜くと、真っ赤な液体がとろりと糸を引いた。
 
・・・真っ赤?
わああぁぁ!?
指や太腿にべったりと付いていたのは、血だ。
 
「梨華ちゃん、これっここ・・なん・・・!?」
「はぁ・・・ふぁ?」
 
ポケッとしてる梨華ちゃん。
こんなに血が出てるのに、気付いてないのかな?
 
「血!血がっ!!」
「だって・・それはぁ・・・え?」
 
「わかんないの?」


わかんないの?って言われても、生理ならこんな綺麗な血じゃないし、
ってことはぁ・・・ もしかして・・・破っちゃった?
うそ!えぇっ!?
 
「ごめん!あたしっ・・」
 
どうしよう、取り返しのつかないことした。
処女喪失なんて一生に一度きりのことなのに、
こんな所であたしが奪っちゃって良かったのかな。
 
「なんで謝るの?」
 
ちょっと舌ったらずな喋り方、まだ絶頂の余韻に浸ってるのかもしれない。
 
「だって、初めてだったのにこんなっ・・こんな・・・」
 
あたしきっとすごく困った顔してる。
また泣きそうになってるかも。
梨華ちゃんはあたしが何を言おうとしているのか分かったのか、
ちょっとだけ真面目な顔になった。
 
「・・私、よっすぃが好きだよ・・・大好き・・だから嬉しかった」
 
それに、気持ちよかったしね。
と小さく付け加えて自分で恥ずかしくなったのか、あたしの肩に額を押し付けた。


でれ〜っと頬を緩めて、すでにエンディング気分のあたし。
だけど何かが引っかかる。
なんだっけ・・・?
 
・・・あ、いまの2回目だよね?
あと1回・・・
はっ!また顔がにやけちゃった、あたしもどんどんスケベになってくな。
 
それにしても、どうしたらいいんだぁ・・・
梨華ちゃんのアソコは血塗れだし、弄ったら痛い気がする。
痛くなくて気持ち良くできる方法って・・・そうだ!
 
「梨華ちゃん・・・太腿、綺麗にしてあげる」
「えっ?ちょ、よっすぃ!?」
 
やんわりと梨華ちゃんの腕を外しトイレの床にひざまずく。
目の前には血塗れの太腿。
『それ』をする前に、びちゃびちゃになった下着を抜き取らなければならない。
 
「はい、足上げて」
「な・・・なにするの?」
「いいからいいから、右足からね」
 
いつになく強気なあたし。
こんな時だけ強気なのもどうかと思うんだけど、
欲望に素直になるのもたまにはいいよね?


「あ、あのっ・・」
「次、左足ね」
「え・うん・・」
 
おろおろしながらもあたしの指示に素直に従ってくれる。
というより流されてるのか?
 
さて、抜き取ったは良いんだけど、コレどうしよう。
口に咥えててもらおうか、ってあたしエロ本に影響されすぎだよ。
とりあえず、ポケットにでも・・・なんか下着ドロみたいだけど・・・
 
やることが頭では分かってるんだけど、実際やるとなると所々曖昧で難しい。
経験が無いと苦労するなぁ・・・経験?
梨華ちゃんがしたようにすればいいじゃん、そっかそっか、
なんで今まで気付かなかったんだ。
あたしはさっきみたいに唇や首筋じゃないけど、
太腿に軽くキスしてから舐めていった。
 
「やっ!?」
「だめっ・・・汚いよぉ・・」
 
あたしの頭を押し返して必死に抵抗するけど、全然力が入ってない。
置いているだけといった感じだ。
それを無視して行為に没頭する。
 
紅い蜜を飲み下すと、むせ返るような血の匂いに頭がクラクラした。


ぴちゃぴちゃ
 
「あっ・・やぁ」
「もうちょっと・・・足開いて」
 
我ながらやらしい事を言ってると思う、
けど開いてもらわないと肝心な部分に舌が届かないのだ。
つまりこれは仕方ない事なんだよ!って誰にいいわけしてんだろ。
 
「・・・うぅ〜」
 
や、そんな恨みがましい目で見られても・・・あたしが悪いのか?
 
「・・・しなくてもいいの?」
「っ!?」
 
おもいっきりイジワルな顔で問い掛ける(脅し?)。
・・・あぁ、自分が悪役になりはじめてる気が。
 
「・・・・・・わかった」
 
観念した様子で少しずつ足をずらしていく。
この体勢は辛いんじゃないかな、
と思ってガクガク震えている膝に手を添えて支えた。
まだ辛そうだけど我慢してもらうしかない。


「・・・よっすぃのバカ(ぼそ」
「・・・・・・」
 
すごく小さい声だったけど聞き逃しませんでしたよ、吉子は。
 
「・・・お仕置き!」
「えっ・・痛っ!?」
 
足の内側の付け根に噛み付いてちゅーッと吸い上げる。
ここならキスマークが付いたって誰にも分からないよね。
 
「ちゅ・・・ぁ、歯型付いちゃった」
「・・・スケベ」
「ふぅん、そんな事言うんだ・・・」
「ち、ちがっ(汗」
 
問答無用で茂みに唇を近付ける。
間近に見るとつい息を荒くしてしまう。
 
「っひぁ・・息が・・・」
「あっ、ごめんごめん」
 
極力息を抑えて近付けて行く。
陰毛のごわついた感触の後に、ふにふにした柔らかいものに突き当たった。
一際心臓が高鳴る。
梨華ちゃんも興奮してるのか、頭の上の手があたしの髪を掴んだ。



「んっ・・・じゅる・・・んむ・・・」
「っん!・・・ぁう」

顎を突き出して溢れてくる愛液を音を立てて吸う。
見上げると梨華ちゃんは眉をハの字にして目をきつく閉じていた。
あたしが唇を動かすたびに半開きの口から喘ぎがもれる。

「あ・・・あぁ・・・」

段々慣れてきたあたしは、クリトリスを唇で挟んで転がすように舐めまわす。
舐めまわしているうちに突起はさらに大きくなっていった。

「あっ!ヤダッ!!」
「むぐっ!?」

ジーっと顔を見ていたのに気付いて、あたしの目を塞いだ。
あの・・石川さん、何にも見えないんですけど・・・
仕方なく感覚を頼りに闇雲にに舌を這わせる。

「ゃあ・・そんな・・・」
「はふ・・・じゅぷ・・・」

舌をなかに挿し込んだと同時に、鼻に突起が擦れた。
梨華ちゃんの腰が跳ね上がる。


「ああっ・・・っふ・・あぅ・・・」

舌でなかの愛液をかき出すように、そして破瓜の傷を癒すように舐めていく。

「ん・・・んっ・・んふっ・・」

愛液と唾液が混ざって、一緒に口の端からトロトロ流れている。
きっと上着に染みをつくっているに違いない。
でもそんなことにかまっている気持ちの余裕は、まったくといっていいほど無かった。
もしかしたら目が見えないことが、興奮を煽っているのかもしれない。

「はあっ・・・はぁ・・んぐっ・・んあ・・」
「や・・・ああ・・も、っくのぉ」

「あっ・・あああぁぁっ・・・ぅあ・・」

今日3度目の痙攣のあと、ドクドクと愛液が溢れてきた。
それをすすっていると、不意に梨華ちゃんの膝がガクンと折れた。


やばっ!

「・・・ぁ?」
「なんか・・・危機一髪?」

膝がタイル張りの床に打ちつけられる寸前に、どうにか抱きとめることができた。

「えへへ・・・よっすぃ〜って・・やっぱしヘン」
「え?なんで!?」

なんでさ?危機一髪だったじゃん!

あたしの胸に額を擦りつけながらクスクス笑い続ける梨華ちゃん。
・・・ひどい・・せっかく・・・
まあ、いいか。
今は機嫌がいいから許してあげましょ。

「あのね、よっすぃ」
「ん?」
「・・・さっきちょっと恥ずかしかった」
「あ・・ごめん・・・無理やり・・」
「でもね・・・」

「やっぱり気持ちよかったよ」

「ぶっ!」
「あ〜なんで笑うの〜!?」
「梨華ちゃんだってさっき笑ったじゃん」
「関係ないでしょ〜?もぉ〜!」


ぷーっと頬を膨らませている梨華ちゃんを見ていると、無性にキスしたくなってきた。

「ね、キスしよっか」
「・・・う・・うん」

おずおず顔を近付けてくる様子がかわいくて一気に唇を奪う。

「んっ!」
「んふふ♪」

あれ?前にもどこかでこんなことがあったような・・・

「あっ!」
「え?なに?」
「・・・ううん、なんでもない!」

不思議そうな梨華ちゃんをぎゅーっと抱きしめながら、
あたしは今朝の夢を思い出していた。
正夢・・・だったのか。
いつかあの状況を完璧に再現できるかな?
真っ白な部屋の中で、これまた真っ白なダブルベットの上で・・・
うわ〜!なんかちょっと、かなり幸せかも・・・


浮かれ過ぎてあたし達はヤツを忘れていた。
そうあの人を・・・


パーン!パパーン!!

な・なに!?
銃声!!??

「いやっほぉ〜〜〜ぅ!みんなのアイドル裕ちゃん登場ーーっ!!」

クラッカー片手に鼻眼鏡着用の中澤さんが入って来た。
っていうか、その衣装サルティンバンコのときのじゃないですか。
いつもながら異常なテンション、そして異常な思考回路。

とりあえず・・・

1.戦う
2.逃げる
3.なんとなく王様ゲーム

・・・・・・じゃないっ!
なんで選択肢出てんだよ!!
しかも段々意味わかんなくなってるし。
ああぁぁ、梨華ちゃんが固まってる。

「っはい、え〜と。中澤裕子の処方箋、楽しめましたでしょうか?」

なにMCで終わらせようとしてんですか。


「梨華ちゃんにこんなヤバイ薬飲ますなんて、いったい何考えてんですか!」
「ぅん?」
「ぅん?じゃないですよ!第一あたしが行かなかったらどうしてたんですか!!」
「青春〜それは〜〜♪」
「誤魔化さないでください!3回も1人でってそんなむちゃな・・・」
「くふっ」
「っなに笑ってんすか!!」

ここは笑うところじゃない。
なんですか?あたしをバカにしてんですか??お???

「うはははは、うちがそんなキツイ薬仕事の前に飲ますかい!」
「・・・はあっ!?」
「まぁ、せいぜい1回イッた位で効果切れたはずや」
「だだっ、だってあたしちゃんと3回っ!」
「しぃっかり愛を確かめ合えてよかったやろ〜♪」

・・・外道。
梨華ちゃん・・・もう中澤さんは信じちゃダメだからね。
って梨華ちゃん、そんなおもいっきり目逸らさなくてもいいじゃんか!


「あ、そうそう。こんな張り紙が貼ってあってんけど」
「?張り紙?」

「これ」と言って中澤さんが差し出した紙には
『清婦中、入っちゃダメっしょ!』
と大きな字で書いてあった。

「ねえ梨華ちゃん、あたし・・・個室のドア閉めてなかった気がする」
「うん・・・わたしもそんな気がするよ」
「清掃なんてしてなかったよね」
「・・・うん」

あはは・・・マジっすか?

「清婦じゃなくて清掃やんな〜、相変わらずドジな子や」
「あのっ、あたしが貼ったんじゃないんですけど!」
「ん?そんなんわかっとるで?」
「じゃあなんで『相変わらず』なんですか?誰か知ってるんですか!?」
「う〜ん、言ってもええけど・・・知らん方が身のためかもしれんで?」

そんな意味深なこと言わないでくださいよ!

「し、知りたいです」
「・・・後悔するなや」

ゴクリ。
まさか娘。の中にいるんじゃ・・・


「・・・道産子」
「え?」

道産子って二人しか思い当たらない。
え・・・ウソ・・・どっち?
ダメっしょ!だから・・・

「・・・だべ?」
「だべさ」

いったいなんの会話だろう。
とりあえず親切な犯人はわかった。
親切すぎますよ・・・バレバレじゃないですか。

「まあ気を落とすなや、あの子なら黙っとってくれるわ」

そんな問題じゃないんです。
中澤さんちょっとかん違ってる。

「んで、もうすぐ撮影始まるからな。楽屋戻り」
「・・・はい」
「あ、それとよっすぃ〜?」
「・・・まだなにか」

中澤さんはニヤリと笑いながら、再びあたしをへこませてくれた。


「首、口紅べったり付いてんで?」


エピローグ


「モーニング娘。も3周年やな〜」
「圭織前から知ってたもん!えへん♪」
「圭織はオリジナルメンバーだから知ってて当然だべ」
「なっち台本読むまで忘れてたじゃん・・・」
「それは秘密って言ったべ矢口ぃ!!」
「バーカバーカ〜」
「バカって言う方がバカなんだべ!」
「違うよ!圭織バカじゃないもん」
「そんな低レベルな争いしないでよ・・・」


例のトイレの一件から一ヶ月が過ぎた。

あたし達が付き合いだした事は、結局中澤さんにばらされてしまった。
トイレでのことは幸い中澤さんにも責任があるから言われずにすんでる。

安倍さんは安倍さんで、言わなきゃ分からないかもしれないのに
「なっちなんにも知らないよ!今日はずぅっと楽屋にいたべ!?」
とあさっての方向に一生懸命頑張っていた。


そんな状況であたし達はどうしたかというと、
開き直ってイチャイチャしてたりする。
いまだって梨華ちゃんに後ろから抱き付いてるし。
とはいってもキャラが合わないとかで、テレビではあんまりあたしから抱き付かないが。

「ねぇねぇ梨華ちゃぁ〜ん」
「よっすぃ〜重い・・・」

二人三脚のように片足ずつ前にだしてウロウロ。
側から見るとそ〜と〜怪しいかもしれない。

「ってかさ・・・・・・っていうのやんない?」
「そっ、そんな事できないよ!」
「え〜、いいじゃん、やろーよ」
「だってテレビだよ?恥ずかしいよぉ」
「見る人はそこまで見てないよ、だいじょぶだって」
「ゔ〜そうなのかなぁ?」
「そうだよ。ちゃんと放送されたら、もう公認って感じだね」
「もぉ、バカ・・・」



「どんな大事な時でも、どんな大事な場所でも、撮るのは圭ちゃん」
「・・・うん」
「よぉっし撮るよぉ〜♪」


「うっし、来たよ梨華ちゃん」
「ホントにやるの?」
「合わせるだけでもいいからさ、ね?」
「う〜ん」
「じゃぁいくよぉ・・・」



「二人の愛は永遠に


動画 アダルト動画 ライブチャット