13歳のモーニングコーヒー


第1章『希美』

「じゃあワタシ、仕事だからいくね」
耳元でささやく声で眠りから覚めた。
そして口唇を閉じたままの軽い口づけ。小さな口唇がそっとかすめる。
甘いミルクのような少女の汗の残り香が鼻先をかすめた。
立ち上がる希美。赤いチェックのミニスカートから細く白い足がのぞく。もう少しで下着が見えそうだ。俺は手を伸ばしてスカートをめくる。
まだ固いヒップを包む白い小さなショーツ。
「えっちぃ」
口元から八重歯をこぼれさせて、希美が振り向きながら笑った。俺のイタズラをたしなめるように。
俺は布団を払いさると立ち上がって希美を後ろから抱きしめる。胸の前で重ねた腕に希美はしがみついた。
かがみ込むように抱きしめると、希美の甘い髪の香りに包まれる。希美のヒップの谷間に挟まるように、俺の股間の欲望は怒立していく。
「ごめんね・・・また来るから・・・」
すまなそうに希美がつぶやく。
「いつ・・」
6歳も年下の少女に、俺はすねたようなセリフを口にしてしまった。


今日会えたのだって2週間ぶりなのだ。
昨年末からの彼女はテレビに出ない日はないほどの忙しさで、明日からは全国を巡るツアーに出る。
つい2時間ほど前まで、生まれたままの姿で俺の腕の中にいた希美。
小さな体をめいっぱい開いて、俺の欲望を受け止めてくれた希美。
まだ俺は生まれたままの姿だというのに、そして浅ましいほどの欲望の固まりを希美の背中に押し当てている。
俺の腕は希美の胸から滑り落ち、ミニスカートをたくし上げる。
「あ・・」
少し前屈みになる希美。しかし俺は片腕で希美の両腕を押さえ、自由を奪っていた。
少し膨らんで、幼児の面影を残す希美のお腹。
そのなめらかに感触を楽しみつつ、指先はショーツの中に滑り込んでいく。足を閉じようとする希美。
しかし、華奢な体つきの希美は、太股を合わせても股間の隙間を埋めることはできないのだ。
なんの抵抗もなく、俺の右手の手のひらは希美の大事な部分を下から押さえた。


希美の体の中でも、ここだけはふっくらとした弾力に満ちている。
秘裂の上端に最近長い産毛が目立ってはきているが、左右の丘は至福の瞬間を手のひらに与えるほどなめらかだ。
俺は手のひらに少し力を入れて肉の丘をもみ回した。秘裂が左右によじれる。
まだ合わせ目からは唇がのぞいてはいない。左右の肌が合わせ目に吸い込まれていくだけの幼い秘裂。
小陰唇の未発達な女性器はペニスの挿入で内壁の柔肉を容易に赤くただれさせてしまう。
先ほど、爆発しそうなほどの猛りをぶつけた幼い性器。1時間近い抽送に、膣の入り口に擦り傷をつけてしまっている。
ふだんは幼い体を気づかいできるだけ優しく、硝子細工を扱うように希美の体を弾き、磨き、奏でてきた。
しかし今日はしばらく会えなかったストレスからか、希美の小さな体を男を悦ばせる穴のついた人形のように扱ってしまっていた。
そのことを悔やんだはずなのに。


「だめ・・だめぇぇ」
体をよじって抵抗する希美。俺の指先は秘裂の合わせ目の上端。敏感な肉芽を包む柔肌を摘む。
「あ・・」
一瞬、希美の体が硬直した。
俺が目覚めさせた小さな肉芽。初めてこの敏感な真珠を包む包皮をめくった日の記憶がよみがえる。
尿と酸っぱいヨーグルトが混ざったいやらしい匂い。白い恥垢にまみれたピンクの真珠を、舌先で優しく転がしたあの日。
希美は俺の髪の毛を掴みながら、息を止めて初めて味わう甘美な刺激に身を固くして耐えていた夏の日の午後。
そしていま俺は指先で包皮を引き上げ、柔らかい肉芽をむき出しにして指先で摘んだ。希美の秘裂の構造は、指先がすべて知っている。


「いや・・・」
鼻先を希美の髪に埋めて少女の甘い香り嗅ぎながら、指先は彼女の一番敏感な宝石を摘み、
怒立しきったペニスを幼い背中に押し当てる。
指先は肉芽からクレパスをなぞりながら吸い込まれていく。小さな花びらが収まるシンプルな秘裂。
そこに潜む秘孔の入り口を指先がノックする。
「あ・・」
希美はすでに身をよじるのを止めていた。
希美の耳に、襟足に、吐息をかけながら口唇をはわす。小刻みに震える小さな体。希美の口唇からも息が途切れ切ない声が漏れる。
俺の指先は希美の漏らしたぬめりを感じた。指先がちゅぷちゅぷと音を立てそうだ。
ぬめりを丁寧に指先に絡ませながら、希美の中に静かに突き立てる。
「いた・・・」
希美の体が固まる。
先ほどの激しい抽送に、秘孔の入り口はまだ傷ついたままなのだ。
しかし希美は俺を振り払おうとはしない。希美の両腕を自由にすると、彼女は流し台に手をついた。


俺は希美のショーツを引き下ろす。まずはヒップから、そして膝までずりおろすと、彼女は自分の足を使ってショーツを脱ぎさる。
右足のくるぶしに小さく丸まったショーツが留まっている。
俺は腰を下ろし、スカートの中に肉棒をくぐらせ、筒先を希美の体の中心にあてがう。そっと足を開く希美。
前から回した手で希美の幼い秘裂を開き、筒先を秘孔にあてがう。しっとりとした濡れ肉が亀頭を包む。
それだけで甘美な刺激が電流となって俺の体を駆けめぐった。
小さな希美の体を下から貫くために、俺は膝を曲げる。希美は少し背伸びをして背中をしならせ、ヒップを持ち上げた。
キュキュ・・・。
インサートセックスを愉しむようになって8カ月。
しっかりと前儀を施したときは柔らかく男性を受け止める彼女の性器も、今日はきしむような抵抗を伴って男を飲み込んでいく。
「くはぁ・・・」
見えないが、希美の美しい顔が苦痛にゆがんでいる様を想像した。
小刻みに抽出しながら、膣の奥からぬめりをかきだし、そして俺の男性自身はとうとう希美の中に全部収まった。


いまだにピッタリと締め付けてくる希美の性器。
スカートをめくると、ぷっくりと膨れたピンク色のアナルと、
そして肉の裂け目が丸くなるほどに広げて俺を受け入れている希美の大事な部分が丸見えとなった。
すでにつま先だちになっている希美。俺は希美の腰を手で支えて彼女の体を浮かせた。
すでに彼女は、流し台に置いた手と、腰に回した俺の腕、そして俺の固くそそりきったペニスで支えられているのだ。
「いっぱい・・・いっぱいだよぉ。奥にあたってるの・・。いけないところにあたってるのぉ・・・」
感じているときはとくに甘え声になる希美の声。
希美の短い膣は背後から挿入すると奥をつついてしまい、2日ぐらいはお腹の奥が痛いといっている。
だからいつもバックから挿入するときは深く差し込みすぎないように気を使っていたのだが、
今日は俺でも怖くなるほどの深い挿入感を覚えた。
膣を突き抜けて子宮の中に亀頭が包まれているかと思えるほど、いままで味わったことのない締め付けが亀頭を襲う。


ただでさえ小さな膣に、さらに特別な刺激で亀頭をなぶられる感触。
すべての自制から解き放され、俺は希美の体にペニスを打ち込み続けた。希美の固いヒップが激しく俺の腰にぶつかる。
亀頭は小さな濡れた穴の肉壁に絞られ、亀頭は弾力あるくぼみに捕らえられ、
引き抜くときには亀頭のくびれがめくられるかと思うほどの強い吸引力を感じた。
不安定な希美の体をさらに引き上げ、とうとう太股を支えて希美の体は宙で水平になってしまう。
不思議と腕力のある希美は、それでも流し台を掴んで耐えている。
初めて味わうサディスティックな快感。このままいつ会えるかわからない希美。
芸能界の中でどんな誘惑にさらされているかは俺はしらない。なにも無いのかもしれない。
俺が知らないだけかもしらない。少なくとも、何があろうと彼女の選んだ夢なのだから、俺は詮索しないと誓っていた。
それでも、希美に会えない夜は不安で胸が張り裂けそうだ。たしかに、俺の腕の中でオンナになった少女。
会うたびに俺を受け入れ、体を目覚めさせていった少女。
いつもは嫉妬のそぶりも見せないでいたが、最近ますます美しく、オンナらしくなっていく彼女に、俺はどうしても不安を隠せないでいた。
何よりも、いまの希美は自ら性器を塗らして男を受け入れる悦びをしってしまったのだ。
セックスを覚えたての少女の好奇心が俺は怖かった。


昼の情事で彼女の性器が傷ついていることは知っている。
それでも、激しい抽送を止められなかった。いっそ彼女の性器が壊れてしまえばいい。
つぎに会えるであろう2週間後まで、痛くてなんの快感も得られないほどに。
絶頂は突然に襲ってきた。背筋を寒気にも似た電流が走った瞬間。ペニスの根本から熱い固まりが突き上げてくる。
必死で尿道を絞ろうとしてもムダなこと。一瞬括約筋が引き絞られ、そして全てを諦めたかのように弛緩していく。
「あぅ・・あぅ・・・」
俺は何度も何度も、希美の小さな性器の奥に熱い樹液を打ち込んだ。


流し台を背をもたれ、床にへたりこむ希美。目を閉じ、肩で息をして、汗ばむ額に細い前髪が張り付いている。
片膝をあげた足の間で秘裂が開き、ピンク色の柔肉が覗いている。
そしてその秘孔からは、俺が注いだ白濁液があふれて流れ落ち、彼女の赤いチェックのスカートを汚していた。
俺は立ち上がると部屋からティッシュペーパーのボックスをとってくる。何枚か引き抜き、希美の股間を拭いた。
「つ・・・」
希美の顔がゆがむ。
ティッシュについた白濁液には、希美からしみた血がにじんでいた。
「ごめん・・・」
声をかける俺に、希美は目を閉じたまま首を横に振った。
希美の瞳から、一筋涙がこぼれた。そっと口唇を寄せると、塩の味がした。
希美は立ち上がると、ショーツに足を通す。
「たれてこないかな」
希美はティッシュを一枚取ると、折り畳んでショーツの中に偲ばせた。
「ツアー、頑張れよ」
「うん、ありがと・・・メールするね」
「忙しかったらいいよ」
「ううん、大丈夫。一言だけだよ」
下を向いて服のしわを直していた希美。
「お土産買ってくるからね」
顔を上げた希美の笑顔から八重歯がこぼれた。
その笑顔が可愛くて、俺はまた希美を抱きしめてしまった。


俺と希美が出会ったのは2年前。まだ彼女は赤いランドセルが似合う女の子だった。
当時から小柄ながらも整った目鼻立ちで美しい子だった。
歌が好きで、よく俺達は放課後のカラオケボックスで歌っていた。
「どうして『モーニングコーヒー飲もうよ』って言われると嬉しいの?どうして嬉しくて泣くの?」
質問してくる希美に、俺は少女がオンナになる意味について教えた。頬をそめて聞いていた彼女。
「いつか希美にもくるかな。そういう日」
俺の目を見つめて聞いてくる希美に
「来るよ。いつかモーニングコーヒー飲もうね」といった。
俺も心臓が鼓動で張り裂けそうだった。小学生の女の子相手に、顔が熱くなっていくのを感じた。
希美も顔を赤らめて下を向いている。彼女のあごに手をかけ、そっとこちらを向かせた。一瞬とまどう希美。そして瞳は閉じられた。
希美が小さな胸の鼓動に合わせて震えている。そっと重ねる口唇。希美の口唇が震えていた。


それから会うたび事に俺達は口唇を重ねた。照明をすべて落とした小さな部屋で、互いの舌を吸い合うことを覚えた。
もちろん、希美の体を抱きしめて口唇の粘膜を絡めあうたびに、俺のペニスは激しく立直していた。
しかし、俺には、これ以上希美を大人にするつもりはなかった。
この無垢な美少女が、腕の中にいる、俺の舌先を受け入れ、自分から舌を絡ませてうっとりしている。
それだけでこれ以上の幸せを望んではいけないと自分を律した。希美を大切にしたい。
大人になるまで俺が守る、そして俺が幸せにしてやると心に誓った。
希美の12歳の誕生日。初めて二人で迎える誕生日だ。カラオケボックスで大人になったときの話をした。
初体験は必ず綺麗なホテルで、泊まってモーニングコーヒーを飲もうねといった。
外泊するのなら18歳すぎてからだから、私が18になるまで待ってねと彼女がいった。
希美の18歳の誕生日にと、二人で約束をして指切りをした。


初詣、二人でいった地元の神社。俺の大学合格祈願とともに、希美はもう一つ、自分の夢を誓ったといった。
夢はまだ笑われるからヒミツだと。
もうなにも隠し事などしないつもりでいた俺は、少し寂しかったが、小学生の女の子の幼さと自由さがうらやましかった。
そして俺が大学受験に成功したとき、もう一つの大事件が起きた。
希美がアイドルグループのメンバー追加オーディションに参加するというのだ。
頑張れよ、といいながら、俺は不安だった。彼女が俺の手をすり抜けていってしまいそうで。
希美に悪いと思いながらも、毎週のテレビ番組を、彼女の落選を祈りながら見続けた。
そして春、俺の携帯がなった。
「もしもし、受かったんだよ。最後までダメだと思ってたの。でも受かったんだよ。4人受かったの。ワタシも受かったんだよ」
電話の向こうで、八重歯をのぞかせて嬉しそうにしている彼女の笑顔が浮かぶ。
「すっげー。やったじゃん。信じられねえー」
軽口を叩いても、心は晴れなかった。
俺は、自宅を出ることに決めた。
彼女がこれから通うであろう放送局のある都心と、彼女の自宅の間にアパートを借りた。


芸能界入りしてからの彼女の忙しさは尋常ではなかった。学校と仕事の間で、俺と会える時間はごくわずかしかなかった。
両親と事務所がスケジュールを管理しているなか、週に一度、あえても30分ほどのわずかな時間。
いろいろとおしゃべりをしたがる彼女をつい引き寄せて抱きしめてしまう。口唇を吸い、どうしても手のひらは彼女の体をなでてしまう。
「胸だけだよ・・・」
希美のまだ薄い胸。脂肪を集めるようにして触ると、内側にコリコリとした半月状のしこりがあった・
「いたい・・・あんまり強くしないで」
膨らみかけの蒼い果実は、あまりに刺激に弱い。
膝の間に希美を座らせ引き寄せると、立直したペニスが彼女にあたる。
希美が小学生のときはこの欲望を覚られないようにしていたが、
いまはどうしても男の欲望に気付いてほしくて押し当てる。身をよじってさける希美。
いやらしいと思われてもいい。希美がほしい。希美をつなぎ止めておきたい焦りが、俺を盲目にしていた。
スカートのすそから滑らせた手が、希美の内ももにふれる。すくざま手を伸ばし、強い意志を持って俺の手を制止する希美。
「だめ・・・。約束したよね・・・」
「うん・・ごめん」
「アタシ、ほんとに約束守るから。18になるまで絶対に他の人としないから・・・」
「うん・・・・」
希美が俺の手を離した。俺もそって手を引いた。


夏の午後、久しぶりのオフだ。友だちと買い物に行くといって家を出た希美。今日は夕方までいられるという。
中学に入ったら一緒に海に面したテーマパークに行きたいといっていた希美。
なのにいまではツバの大きな帽子を深くかぶり、周りに気を使いながら歩いている。
せめて、この小さな部屋の中だけは、アイドルではなく、普通の中学生でいてほしい。
スイカが好きな希美のために、冷やしておいたスイカを切り分ける。
「仕事でね。ハワイにいってきたんだよ」
「いいな、俺まだ海外いったことないよ。美味しいもの食べた?」
「ううん、ゲームで負けてね。晩ご飯パンだけだった日もあったの」
「なにそれ」
「あのね、泣いちゃった。テレビででたらイヤだな」
「いつ放送するの」
「だめ。見ちゃダメ。恥ずかしいから」
「水着も着た?」
「着たよ」
「ビキニ?」
「違うよぉ。んなわけないじゃん」
クスクス笑う希美。
「あんまり焼けてないね」
「アイドルだもん」
また笑った。
「でもね、背中焼けちゃった。日焼け止めちゃんと塗らなかったから」
「痛い?」
「うん、ちょっと」
そういうと、希美は背中を向けると、タンクトップの肩紐をずらした。
それでもジュニア用ブラのストラップの影で水着のあとは見えない。
「見えないよ」
そういって俺はブラジャーのストラップをずらした。


希美の細い肩に残る白い痕。
そのまま希美を抱きしめた。
ピンクのタンクトップに黄色いショートパンツと、今日の希美は扇情的だった。
少し汗の混じった希美の香りに頭が麻痺しそうだった。
希美の体が鼓動で揺れている。口づけならもう慣れているハズなのに。
「ねぇ・・・」
「なに?」
「いいよ・・・」
「何が?」
「いいよ・・していいよ?」
「え?どうして・・・・」
希美は何もいわなくなった。俺はこの申し出を喜ぶより、希美にあった変化が心配だった。


「何かあったの?」
「いわなきゃダメ?・・・」
「やっぱりあったんだ。話せよ。俺に黙っていることないだろ」
長い沈黙。
「あのね・・・プロデューサーさんが、ユニットでデビューしないかっていうの」
「よかったじゃん」
「でもね・・・・」
希美が口ごもった。
希美を抱きしめる俺の手に、希美の涙がこぼれる。
「アタシ・・・初めての人は決めてたから・・・約束したから・・・」
希美が振り絞るようにいった。俺は希美の口を手のひらでふさいだ。
そんな世界辞めちゃえよと、どれほど叫びたかったか。
でも希美は、覚悟を決めて今日、やってきたのだ。そしてこの世界で頑張っていくと幼いながらも決心したのだ。
いつか二人でモーニングコーヒーを飲もうねと誓ったあの日、彼女がうれし涙を流す瞬間だけを夢見ていた。
こんなに切なくて、悲しくて、悔しい思いで彼女を抱く日が来るなんて思わなかった。それでも懸命に彼女を抱いた。
彼女の、初めての男になるために。


すべてが終わった後、希美は俺の腕の中でいつまでも泣いていた。
オンナになった喜び、破瓜の痛み、そしてなによりもこの世界で生きていくためのの覚悟を決めた涙なのか。
俺は彼女の夢が叶うことを祈りながら抱きしめていた。
1時間もしただろうか。希美が立ち上がった。頬の涙の痕を拭うと恥ずかしそうに笑いながら服を着た。俺も服を着る。
彼女は台所に立つとコーヒーカップを2脚持ってくる。そして自分のリュックからアルミ製のポットを取り出した。
注がれたのはブラックコーヒーだった。
ママゴトのような彼女の仕草が可愛かった。
俺も嬉しくて、そして照れくさかった。
「コーヒーなんて飲めるのか?」
「飲めるよぉ。のの大人だもん」
そういって二人はカップを合わせた。
カップに口をつけて一口すする希美。
「にがぁい」
八重歯を見せてしかめっつらをしたあと、希美が幸せそうに微笑んだ。


〜 完 〜





第2章『亜依』


「亜依ちゃん、おめでと」
仕事先での一夜。ホテルの部屋はいつものように亜依と希美が同室となる。ダブルサイズのベッドに並んで横になる二人。
灯りを落とした部屋で、先に切り出したのは希美だった。
「なんかあったん?」
「えー、聞いたよ。たんぽぽに入ったって」
「なんかなぁ」
「そんな言い方しなくても素直に喜べばいいのに。気にしなくていいよ」
「あはは、ほんまは嬉しいねん。でも、希美といっしょやったらよかったのに」
「ワタシはまだ歌上手くないし。でもそのうちソロデビューするからさ」
冗談めかしていったつもりが、声がうわずる。
・・・・


希美はほんとうに知りたいことを聞く勇気がなかった。
「石川さんも入ったんでしょ。どんな曲になるんだろうね」
「なんか前と感じ違うくなるらしい。なんかこう、かいらしい〜って感じで」
「ふ〜〜〜ん。じゃあ亜依ちゃんメインなのかもよ」
「まさかぁ。矢口さんやない?」
「でもつんくさん、亜依ちゃんのことよく話すし・・・」
・・・・
時を同じくしてグループに入り、同学年ということもあり、とくに仲良さげに振る舞ってきた二人。
しかし、生い立ちの違う少女たちには、まだ心には微妙な溝があった。
・・・・


「・・うちのこと汚いと思ってるやろ」
「えっ・・そんなことないよ・・・」
「つんくさんからなんか言われんかった?」
・・・・
「ほんまはな。最初つんくさん希美のこと見とったと思う」
「・・・・」
「せやからな、うちが横取りしたんや」
「そんな・・・横取りだなんて・・・」
「ううん。うちが取った。仕方ないやん。うち性悪やねん」
「・・・・」
「あはは、すっとした。いつか言うつもりやってん。なあ、堪忍して」
「ううん・・・。ほんとはね。ちょっとホっとした」
「そっか。ならよかったわ・・・」
希美の手が暗闇を静かに伸びた。亜依の目尻に触れると、熱いしずくが指先に伝った。


希美の優しさに触れて、亜依のこらえていたものが堰を切った。
「仕方ないやん。うち、どうしても成功したいもん。ひとりでこっちきて、友だちも家族もみんなおいてきたんやもん。あんたとは違うんやから」
「そんな、亜依ちゃんは歌も踊りも頑張ってるもん。きっと新メンバーの中で一番だよ。選ばれて当然だから、もうそんなこといわないで」
「・・ありがと・・・・。うちな、希美といっしょでほんまよかったと思う。
でも負けたくない。負けたくないから・・。わかってるんやろ?選ばれたってどういう意味か。うちだって・・・うちだってなぁ・・ほんまは・・・」
最後は言葉にならなかった。こらえきれなくなった嗚咽ごと、希美が亜依を抱きしめた。
「もういい。もういいよ。わたしも亜依ちゃんといっしょでよかったから。ほんとだから」
亜依は泣いた。声をあげて泣いた。
希美には、亜依のデビューをうらやむ気持ちなどとうになかった。
自分より遙かに強い覚悟をもってこの世界に入った亜依が愛おしく、そしてその覚悟が切なかった。
亜依の心の痛みを思うと、希美も涙をこらえられなかった。


ベッドサイド、作りつけのデジタル時計の数字が碧色に光る。
AM 02:36
涙の乾いた亜依がつぶやく。
「ほんまのほんまにすっとしたわ」
「亜依ちゃん最近、元気なかったもんね」
「うん、いろいろあってなぁ」
亜依の言葉の語尾がかすかにほころんでいた。
「なあ、これからうちら、隠し事はなしにせえへん」
「うん、いいねそれ」
いつしかお互いの腕は相手の肩にかけられていた。
「うちら、ライバルやなくて同士やんか。汚い大人と闘うには仲間が必要やし」
「うんうん」
「ヒミツはなしでいこう」
「おー」
二人は、力強く手の指を組み合わせた。


「でも希美、よくかわしたな。つんくのこと」
「いやー、もう必死だったよ。絶対に二人にならないように気をつけてたし」
「そやろ。うちらまだ早いっちゅーねん。あのロリコンおやじ。ホンマにネチネチしくさってからに」
「ねぇ。やっぱりその・・・・したの」
「したよー。目ぇつぶってたよ。痛かった。死ぬかと思った」
「痛いよねー」
「え?あんたしたん?」
「えへへへー。じつは希美は大人なのれす」
「えー。まじで?つんくと」
「違うよー」
「なんでなんでー。まさかYと?」
「違うよ。こっちの世界の人じゃないもん」
「って誰やー」
「えへへー、カ・レ・シ」
「男おったん?いややわー、これだから東京モンは。うちがこんなに不憫な目に会うてるのに」
ふざけて泣き真似をする亜依。


「ごめーん。怒った?」
「えー。ちょっとイラついた。相手いくつやの。同じ学校?」
「違う。大学生」
「ほんま?あっぶなー」
「危なくないよ。真面目につきあってるもん」
「結婚とかするつもり?」
「うん、できたら」
「はぁー、それじゃつんくとはできんよなぁ」
「でもね。するつもりだっだんだよ。それで彼とエッチしたんだもん」
「最近なん?」
「先週の日曜」
「それって、うちがつんくにやられてた日といっしょやんか。アホらし。泣いて損したわ。もう寝よ寝よ。明日も早いんやから」
「おやすみ、あいぼーん」
希美が亜依の口唇に口づけた。
「なんやのぉ。もう」
希美に背中を向けた亜依。


・・・・
背中を向けたまま亜依がつぶやく。
「ほんまはな。うちも好きな人おってん」
「・・・・」
「でもなぁ、向こうにおんねん・・・」
「カレシなんだ」
「ううん。うちの片思いや。バレンタインにチョコあげたけど、ホワイトデーのころ、うちら忙しかったやんか。返事も聞いてへんわ」
「そっかー。そのカレもったいないことしたよね」
「なぁ。そやろ」
・・・・
「ねえ。明日、朝になったらコーヒー飲もう。おごるよ」
「なんやの?それ。・・・・でもしゃーない。おごられてやるわ」
肩の向こうで、亜依がくすりと笑った。


〜 完 〜





第3章『続・亜依』

「ああ、よく来たな。まああがれや」
ドアを開けた金髪の男はベロアのガウンをまとっていた。
導かれるまま、亜依はおそるおそるエントランスを進む。
「あの・・・クツは・・」
「履いたままでええで」
港区の一等地にそびえる高級マンションの一室。オフのこの日、プロデューサーからじきじきに呼び出されたのだ。
他のメンバーには秘密の時間。これまで、先輩からもプロデューサーの私生活の話は出ていなかった。


東京に出てきて4カ月。片田舎で育った亜依には都会の、なにより芸能界という世界のすべてが驚きの連続だった。
しかし、はじめて入ったプロデューサーの自宅は、さらに想像を超えていた。
モノトーンでまとめられた広大なリビンク、カウンターバー、壁一面のガラス窓からは東京の夜景が一望できる。
「すごいお部屋ですね」
カウンターバーの内側でつんくが応える。
「まあな。俺も一応敏腕プロデューサーっちゅうことになってるやろ。このぐらいの部屋に住まんとハクがつかんのや。
そこのソファ座っててええで。カクテルでええか?」
「そんな、私まだ子どもですから」
緊張からかいつまでも部屋の中を見回してしまう。


目の前には巨大なラブチェア。そのままベッドにもなってしまいそうだ。
「子どもなことあるかい。立派な大人や。この窓の下のほとんどの大人が、お前ほどは稼いどらんのや。
まあ加護の場合、まだ給料にははねかえっておらんけどな」
「・・・・」
つんくがグラス二つを手にやってくる。
「ほら座れや」
促されてソファに座る亜依。つんくはすぐ横に座った。
「プロデュースドバイつんくのスペシャルカクテルや。美味いで」
グラスを手に渡される。
「飲みぃや」
「は・はい」
冷えたグラスを傾ける。フレッシュオレンジの濃厚な甘さ。しかし、その後ろに強烈なアルコール臭が漂っている。


「ハワイではいい働きしとったな」
「そんなことないです。まだいっぱいいっぱいで」
「んなことないで。レモン汁やったかな、ウケてたやないか。加護はもっと自分だしてええで。
お前には芸能人として必要な機転がある。なかなかおらんモンや」
「は・・はい・・・ありがとうございます」
「ほら、飲みや。今日はお前の将来のこともいろいろ話したいと思うて呼んだんや」
「は・はい」
促されるまま、また一口、息を止めて喉に流した。体内を灼けるような痛みがすべり墜ちていく。


「俺はな、加護の将来に期待しとんのや。お前はもっともっとビッグになれる」
「は・・はい」
「来年の4月には娘も大きな動きがあるしな。それまでにお前にはもっと実績を作ってほしいんや」
「大きな動き・・・ですか」
「ああ、まだいえんけどな。忙しくなるで。日本中で加護亜依を知らんやつなどおらんぞ」
「すごいですね」
この部屋を訪ねてから、はじめて亜依が笑みをもらした。
亜依は頭を後ろからゆっくりとひかれる感じがした。少し酔いが回ってきたのだ


「秋に出す娘の新曲な。加護がメインでもええと思うてんねん」
「え〜、そんな」
「これマジやで。後藤とツートップやけどな。でかいタイアップもある。日本中で毎日かかりっぱなしや」
はじめて吹き込んだCD。いじわるな友だちからは『うしろで合いの手いれとるだけやん。亜依だけに亜依の手やね』と皮肉を言われた。
くやしかったら娘にはいって見なさいよ。なんども言いかけて飲み込んだ言葉。
「どうだ。やれるか」
「は、はい。やりたいです」
つんくの瞳を見据える亜依。口唇は強く結ばれている。
「まずはユニットデビューや」
亜依の側にあるつんくの手が亜依の肩にまわされた。


「そうなんですか」
加護の顔が輝いた。
「たんぽぽってあったやろ。加護がはいって新生たんぽぽや。もう曲もできてる。お前にピッタリの曲や」
「私に・?」
「ああ、恋する乙女の歌や。かわいらしいで。俺の自信作や。プッチよりいけるかもしれん」
「プッチモニより・・・」
「ああ、新しい娘の顔のお披露目やからな。がんばりや」
つんくの手が亜依の太ももを軽く叩いたのちに置かれた。一瞬身を固くする亜依。
「サビはな。いちゃ〜いちぉしてすごす〜日曜〜いうんや。いいやろ」
つんくがにじりよってくる。そして耳元でささやいた。
「男といちゃいちゃしたことあるか?」


亜依がソファの上で身をずらした。
「な・・・ないですっ」
「あかんやろ。それやと歌のイメージわかへんやんか。飯田も矢口もようしってるで」
つんくはさらに体を寄せてくる。
太ももに載せた手は、じりじさすりながらはい上がってくる。

「希美は・・辻さんはたんぽぽに入らないんですか」
「辻か。あいつはあかんな。あいつにもユニットの話したんやけど、考えてさせてくださいといっとったわ」
希美が断った話なのかもしれない。受け入れるべきか、断るべきか亜依は一瞬迷った。
「加護、『チャンスの女神には後ろ髪はない』っちゅうことわざしってるか?
チャンスの女神が現れたとき、通り過ぎたあとで追いかけようとしても、絶対に追いつかん。
後悔するだけや。この世界、チャンスを掴んだモンの勝ちなんや」
「・・・・・」
 

表皮が緩く貼られた巨大なソファ。ドレープが荒い海の波のようだ。
つんくは、ニコチン臭い息を耳元に吹きかけながら亜依を静かに後ろに倒していく。
初夏の東京はすでに暑く、朝洗った亜依の髪にはシャンプーの残り香とともに少女の汗の匂いがまとわりついている。
亜依の髪の毛に顔を埋め、つんくの息は荒くなっていく。
腰に回した手のひらは背中をなで回し、甘くくすぐりながら胸へと伸びてくる。
「はあ・・はあ・・・ゴムまりみたいやな。ええ気持ちや。お前はもう子どもやないで、男を虜にする体や」
はじめて男に触られる胸。恥ずかしさと怖さのなかに、わずかに乳頭のまわりにむずがゆさが走る。


「ドキドキしとるな。なんも怖いことないで、みんなしとるんや。そのうち気持ちよくってたまらなくなるんや。
男も女も、これがやりたくってがんばるんや。男はよりいい女を抱きたくって、女はよりいい男に抱かれたくって自分を磨くんや。
加護、お前もええ女になるで」
つんくの口唇は耳元をすべり墜ち、首筋をはい回り、亜依の小さくカタチよい顎にそって口唇へとはい上がってきた。
ガウンの前がはだけ、亜依の足につんくの硬直したものが触れた。
その固さと熱さが、亜依の心に再び恐れの波を広げていく。
口唇と口唇がふれあう一瞬前、亜依がつぶやく。
「い・・いちどだけ・・。いちどだけでもいいですか」
こわばった声が裏返りそうだった。
「お前、はじめてやろ」
「は・・はいっ・・」
「お前のはじめてをもらえるなら俺は幸せモンや。一回でもおつりが来るで。心配せんでも、ええようにしたるから」
亜依は、固くまぶたを閉じた。


深夜の六本木。街の喧噪はまだ宵の口。うつむいて歩く亜依。手にはタクシー代にと渡された札が握られている。
交差点近く、亜依は携帯電話を押した。
『もしもし、加護ですけど』
「あ、お母さん、亜依やけど」
『亜依ちゃん?今日は休みやったんでしょ。こんな遅くまでどこいってたの。おばさん心配しとったよ』
「仕事はオフやけど、今日大事な打ち合わせがあってなぁ」
『事務所なの?』
「ううん、プロデューサーさんとや。あ、あとスタッフの人もたくさんおったけどな」
『そうなん?だったらええんやけどね』
「それでなぁ。たんぽぽってあったやんか。今度うちがはいってデビューすることになってなぁ」
『あら、すごいやないの。今度は歌えるんやね』
「それだけやないんよ。娘のほうの新曲もなぁ、わたしメインになるかもしれんねんて。真ん中かもしれへん」


『まあ。亜依ちゃんやったやないの』
母親の声が潤んでいくのがわかる。亜依の胸が締め付けられた。
「また忙しくなるやんか。夏休みも帰れんかもしけんけどな」
『いまが大事なときやから。頑張りや。また母さん、そっちにいくからな』
「うん、会いたいわ・・・ほんまに・・・ひ・・・ひっく・・」
亜依の頬をいくすじもの涙が流れ落ちていく。
『へんな子やねえ。そんなに泣いたら目え腫れるで。なくなるで、ちっちやいんやから』
「ほっといてや。もう切るで」
最後は明るく振る舞って電話を切った。


より楽しいことを求めて足早に通り過ぎていくこの街の大人たち。まだ誰もここに私が立っていることに気付いていない。
なんのために私はあのプロデューサーに抱かれたのだろう。
挫けそうな心が折れてしまいそうだ。涙が止まらない。亜依はうずくまって泣いた。誰にも泣いている顔を見られないように。
小さな肩が震えていた。
頑張ろう。頑張るんだから。負けない、わたしは負けない。絶対に。
私は選ばれたオンナなのだから。このプロデューサーに、時代に。
亜依は、幼い胸に何度もいいきかせた。


〜 完 〜





第4章『梨華』

眼下に東京の夜景が拡がるマンションの浴室。
ジャクジーに向かい合って入る男と少女。泡の中ではひとつにつながっていた。
「はぁ・・はぁ・・・いっぱい・・いっぱいですぅ・・」
湯の中で下から突き上げられながら、梨香は甘い声を漏らす。
男は梨香を支えながら腰を引き、体内から男性自身を引き抜いた。
「ほれ、潜望鏡や」
体を反らせて泡の上に赤黒い亀頭をのぞかせる。
梨香は肉棒の根元を握ると、亀頭を口に含んだ。
「う・・」
不安定な体勢で全身に湯の泡を浴びながら、亀頭は少女の口に捕らえられている。
至上の快楽が襲いかかる。湯船にかけた足がつりそうだった。


なおも梨香は、男の陰嚢を手のひらでやわく揉み、
もう片方の手はその伸びた爪の先で男の背中をかすめるように甘く掻き、尻の谷間をくすぐる。
「降参や・・降参・・・」
つんくは身をよじって逃げた。
「えー、イクとこ見たいのにー」
「アホか、まずはお前をイカしてからや」
つんくは湯からあがる。
「ほら、きいや」
梨香の手をひいて、大きなマットの上にいざなう。
・またこれか・・・
うつむきながら梨香はその美しい顔をしかめた。
男は梨香の体にローションを塗りまくる。マットの上で絡まりながら梨香の体中に性器をこすりつけてるためだ。
早く終わらせるために、梨香も男の性器に指を絡める。
セックスが嫌いなわけではない。初体験から達することを覚えるまでの間も短かった。
しかし、自分をまるで風俗嬢か大人のオモチャのように扱うこの男の性癖には辟易としていた。
仕方がないと思いながらもまた抱かれる。組み敷かれながら、あえぎ声をあげなからも、心の中では心底軽蔑してやる。
それが私にできる唯一の抵抗だから。


男は大きな権力を持っていた。
いまや日本で、少女がアイドル歌手を目指すためにはこの男のプロデュースを受けるしか途がないといわれるほどだ。
当然、芸能界に憧れる少女で、この男の夜伽の誘いを断れる者はそうはいない。
欲しいものが手にはいると、人はより得難いものへと欲望が働く。
ひとつはより幼い少女の処女性を奪うこと、もうひとつはスタイルも容姿も完璧な少女の姓奴隷を飼育することに向けられた。
この男にとって、梨香は最高の人形だった。
張りのある乳房と引き締まったウエスト、弓のように反り返った背中にカタチよい小振りのヒップ。
そして長い手足の先まで。どのような姿勢を取らせても、男を狂わさずにはいない媚態になってしまう。
天性のミルキーボイスは感じるたびに甘く溶けそうになっていく。
なによりも男のどんな欲望にもしたがう従順な性格も得難いものだ。
彼女を手にしてから、男の性癖はどんどんアブノーマルなものになっていった。
彼女の下半身を抱え上げ、性器を舐めながら放尿させたこともある。
男は、梨香の体のすべてに溺れていた。胸と性器だけではない、全身が好きなのだ。
マットの上でローションにまみれた梨香の美しくしなやかな体と絡まりあうことは至上の悦びだった。
梨香の全身を性器のようにぬめらせて絡まると、自分もまた全身が性器になったように感じるのだ。
入浴前に吸ったマリファナのおかげで、男は全身の肌感覚が敏感になっていた。


少女の陰部には茂みはなく、これは男が買い与えたエステサロン用の業務用レーザー脱毛器を自宅で使っているからだ。
妖しいクスリを使われて全身が敏感になり、気を失うまで達し続けたこともある。
一人の部屋で、赤くただれた性器の内癖に軟膏を塗りながら泣いたことも一度や二度ではない。
同期で入ったメンバーの中では何度も抱かれているは自分だけらしい。
いや、それどころか、いまやあの男にとって自分は一番大事な情婦であるはずだ。
耐えてやる、ソロデビューするその日まで。
ベッドの中で、ソロデビューしたあとでどんな言葉であの男の自尊心を傷つけてやろうかと考えるときがある。
ときには、そのまま朝を迎えてしまうほどに。
後藤以後の追加メンバーでは、自分は年長者だ。
辻と加護、後藤と吉澤というように、同学年同士で仲良くなってしまったため、疎外感も味わっていた。
それだけに、表面には出さないが、他のメンバーには負けたくないという気持ちは人一倍である。
群の中から抜け出すためなら何でもやると、悪魔に魂を売るにも似た覚悟があった。


浴室でのプレイは果てることなく続いていた。挿入なしに絡まり続け、男はいつまでも全身で快感に溺れているのだ。
最後はたいてい少女の無毛の股間に顔を埋めながら、少女の顔に性器こすりつけ、舌と指で亀頭を弄ばれながら射精する。
男は、少女の美しい顔が精液まみれになっているところを想像してさらに満たされるのだ。
今日は背後から梨香を抱きしめ、ローションまみれの胸を揉み、無毛の股間に立直したペニスを挟んでいた。
梨香が体をくねらせるたびに足がすりあわされ、膣に挿入する以上に強い刺激でペニスがよじられる。
そして男は腰を少し引くと、梨香の会陰へと筒先を当てる。
・・また挿入れてくるのだろうか・・・・
膣ならばいとも簡単に入れてくるだろう。しかし男は腰を動かし、筒先を迷わせる。そしてとうとう手をあてがい肉棒を支えた。
筒先は谷間の小さなつぼみにあてがわれている。


「だめ・・・だめです・・」
「ええやないか、ここも欲しいんや」
「いや・・他はなんでもするから・・・」
梨香は身をよじって男から離れた。
口も性器もこの男に初めて捧げた。この窪みまで捧げたら、ほんとうに自分が奴隷になってしまう気がした。
体を捧げてはいるが、それは寵愛という名の後ろ盾を得るため、フィフテイフィフティの関係でなくてはならない。
梨香にとって、この小さな肉の穴はただのオモチャにならないための最後の砦なのだ。
「なんや、しらけるな」
ほかは何でもするから、なにげない言葉だが、一瞬、梨香が仕方なく自分に抱かれているのだと悟らせる言葉尻だ。
男の不満を感じた梨香は、すぐさま抱きつきキスをしながら男の股間に手を伸ばす。
「だってこっちがいいんだもん」
甘えた声を出しながら男の上にまたがり、硬直したものを体内に導き入れた。
「あ・・・う・・奥まで当たってる・・」
男の持ち物は、決して大きい方ではなかったが、梨香は男を悦ばすためにあえてこの言葉を使った。
男が処女性にこだわるのも、自分の性器へのコンブレックスがあるからだ。
自分しか男をしらないであろう梨香だからこそ、ここまで溺れることもできるのだから。


リビングから夜景を見下ろす梨香。白地に淡い花柄のキャミソールをはおっていた。男はガウン姿で、缶ビールを飲んでいる。
「私にもちょうだい」
「ああ」
お酒の味もこの部屋で覚えた。
男はビールとグラスをとりに立ち上がる。梨香は家事のたぐいは一切やらなかった。男はそれでもいいと思っていた。
少女が所帯じみては魅力がなくなる。
少女は気まぐれでワガママでありながら、しかし男に抱かれると抵抗できなくなるのというのがこの男の理想なのだから。
男は、ビールを注いだグラスを手に近寄ってくる。
梨香は窓ガラスに背をもたれ、すねた顔をする。
「いつになったらソロデビューさせてくれるの」
男は一瞬立ち止まった。


「まあ待ちぃや。ものには順序ってものがあるやろ」
毎日のようにテレビに出る生活。しかしそれだけでは梨香は満足できなかった。もっといい景色が見たい。この男のように。
だからこそ半年以上もの間抱かれ続けてきたというのに、相変わらず扱いは同期のメンバーと変わってはいない。
むしろ一度しか抱かれていないはずの加護のほうがメディアへの露出が多いほどだ。
辻にいたってはいまだにつんくに抱かれていないという噂だし。
つい先日、後藤のソロデビューが発表になったばかりだ。
たしかに順当なのは分かっている。でも自分は一つ年上なのだ。芸能界でのキャリアだって半年しか違わない。
タイプは違うが、美貌もスタイルも負けているとは思わない。
ときどき、この男が自分をデビューさせないで、このまま情婦として手元に置いておくことを企んでいると疑ってしまう。
そしてきっといつかもっと若い子を見つけるのだろう。
目に見えるカタチで寵愛を表してくれないと、自分が抱かれ損になってしまいそうで怖くなる。


「アタシ、牛の世話なんてしないからね」
すこし目に力を込めていった。
「だいたいなんでアタシがあんな田舎娘の応援なんかしなくちゃいけないの」
怒りで乾いた喉に、冷えたビールがしみ込んでいく。この男は私の体に夢中なのだし、もっと私は強くでてもいいはずだと思えてくる。
「応援といっとるけど、あいつらはお前を売り出すための引き立て役や。メインはお前やろ」
「じゃあ、娘のなかで新しいユニット作ればいいのに」
「そない簡単にいかんのや。古株をお前のバックコーラスにするわけにいかんやろ」
「なんでですか。飯田さんとか安倍さんをバックにすれば、
ファンにも『いま石川が一番人気なんだな』って思わせることができるじゃないですか」
「アホか。んなことしたらファンの反感かうだけやろ。娘のファンを動かすのはえらい難しいんや。
後藤の扱いでいまファンは荒れとんのや。
まあ後藤を嫌っとる連中がお前を応援するっちゅーのも、ちゃんと計算しとるから心配せんとき。判官贔屓って言葉、しっとるやろ


それでもまだ梨香は納得できない。
「なんかグループの中でも、ワタシの扱いひどくないですか。中澤さんとか」
グループの中での力関係も、梨香には不満なのだ。プロデューサーの愛人は自分だというのに。
もっとも、他のメンバーには秘密の関係ではあるのだが、さりげなく男が後押ししてくれることを期待していたのだから。
「まあそのへんはもうすぐ、ええようになるから心配せんでええで」
「ほんとに?」
「ああ、お前のためや。まかせとき」
ソファに座る男の膝にまたがる梨香。
「約束よ」
梨香の手がガウンをはだき、男のしなだれたモノを握る。
「おいおいまたか。かなわんな」
男は目尻を下げながら、梨香の細い腰を引き寄せる。手慣れた手のひらが小さなヒップをなで回し、後ろから梨香の股間をさする。
男はキャミソールの上から、梨香の乳首をなめ回し、甘く噛んでくる。
梨香は男の首に抱きついた。
そして、自分の手の中で徐々に固くなっていくモノを疎ましく思いながら、表情のない顔で壁を見つめていた。


〜 完 〜





第5章『裕子』

「おかえりなさい」
「ああ、いつもすまんな」
ちょうど裕子は部屋の掃除を終えたところだった。
男がこの部屋に越す以前から、スケジュールの合間を縫っては訪れ、情事を重ねていた。
男にとって、裕子は芸能人としては初めての情婦といっていい。
それまでファンの女性に手を出したことは何度もあったが、当時は、自分がいままで抱いた女性の中で、裕子がもっともいい女だと思った。
初めてプロデュースするアイドルグループ。その自分が育てたメンバーを愛人とする。
一流プロデューサーの仲間入りをした気分で浮かれていた。
メジャーデビュー曲は、グループの中でもアイドル性の高い安倍をイメージして作ったものだが、
その後の数曲は密かに裕子のために書いたといっても過言ではない。
デビューして1年半後、新メンバーを迎えて初めてのミリオンヒットを生み出したとき、
この曲で世間での敏腕プロデューサーとしての評価は確かなものとなる。そしてこのころから、裕子との関係は冷めていった。


それでも、裕子は掃除に訪れた。いつしか体の関係はなくなり、留守の間に掃除して帰る日々。
裕子にはこの男に尽くすことしか、この世界で生きていく術はないと思っていたから。
しかし、それも今日で最後。疲れ果て、彼女が暖めていた決意と、男がグループからの引退を言い渡したのはほぼ同時だった。
いや、一瞬早く辞めたいともらしたのは裕子だった。それが唯一、自分を救ったと彼女は思っている。
「疲れたろ。コーヒーいれたるわ」
男はカウンターバーの中で、コーヒー豆を取り出す。そして手動のミルで豆を挽きはじめた。
「なんでも手に入ると思っても、これだけはあかんかったな。やっぱし、自分で入れたコーヒーやないと満足できへんのや」
コーヒーの入れ方は大阪でのアマチュアバンド時代、アルバイト先の喫茶店で覚えた。
この男の音楽性の理解者だったマスターには、いろいろと世話してもらった。
その苦労時代を忘れないためにも、ときどきコーヒーを自分で入れるのだ。


コーヒーには特別の思い入れがある。
娘のデビュー曲は自分にとっても新たな挑戦であるために、自分の原点に戻るつもりで書いたと。
そんな話を、昔は裕子にもした。いや、裕子にしか自分の弱い姿は見せたことがなかったかもしれない。


裕子はラジオのスイッチを入れる。
ちょうどパーソナリティが自分の引退を話題にしていた。
不思議なものだ、自分のグループ引退が日本中のニュースソースになるなんて。
芸能人としては、自分なりにいい目を見てきたのかもしれない。
新聞やワイドショーで自分の引退発表の記事を見るにつけ、自分を捨てた男への憎しみは嘘のように消えていった。
数ヶ月前、男の寝室のベッドの下に、自分の知らない革製の性具を見つけたときは一晩中泣き明かした。
それでもいまはこの男に感謝しようと決めた。自分を見いだし、ここまで引き上げてくれたのだから。自分の才能は自分がよく知っている。
ラジオからは、自分がソロで歌う最新のシングル曲が流れ始めてきた。頭では割り切ったつもりでも、この曲を聴くときっと泣いてしまう。
裕子はラジオを切った。


やがてコーヒーカップを手に、男がやってくる。裕子は手に取り、一口すすった。これがきっと最後のコーヒー。少し苦く感じる。
「ねえ、石川にもコーヒー入れてあげたの?」
「いいや、まだ子どもにはコーヒーの味わからんやろ」
男もコーヒーをすすった。
裕子は窓を向いて、男と顔を合わせないでいた。この部屋も、夜景も今日で最後。ほとんど二人で見たことはなかった景色だけど。
ソファに少し離れて並んで座る二人。静かな部屋にコーヒーをすする音だけが響く。
男もありがとうといいたかったが、言葉にできなかった。いまでこそ女性を論じた本を著しているが、本当は女に不器用な男なのだ。
そんな不器用な自分を歌にしたからこそ、メジャーへの階段を上ることができた。
一緒にいて、本当に安らぐことができたのは裕子だけだったかもしれない。

窓を見つめながら裕子がつぶやく。
「ねえ、あなた、もう二度と一緒にコーヒー飲めるこは見つからないかもよ」
裕子の、精一杯の強がりだった。
「ああ、そうかもしれん」
男の最後の言葉が、裕子の胸に優しくしみ、夜景がにじんでいった。


〜 完 〜

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