←前  次→

十の翼・百の翼
アスペルギルス 著


 「…ほらほら、今度はこっち動かして」

 「こ、こうで、ありますか」

 彼のぶ厚い大胸筋が、ぴくっ、ぴくっ、と波打つように動く。背中からしなだれかけたわたしの腕が、それに弾かれてぽん、ぽん、と跳ねる。うふっ、面白い。

 「背中の方も動く?」

 「…やってみますか」

 彼がむん、と力を入れるのに合わせて、背中の三角筋がぶるぶると揺れた。背中に押し当てたわたしの乳房がそれにつれて震える。筋肉の収縮に巻き込まれるように乳首がこすれて、彼の背中をこする。

 「…あん…」

 彼の耳元でわざと甘ったるいため息を洩らすと、彼の顔はまるで茹で上がった蛸みたいに真っ赤に変わる。不思議なことに、顔だけどんなに赤くなっても体の方は白いままだ。全身逞しい筋肉に覆われた体。その胸板に触ると、『鋼の筋肉』なんていう常套句が実感をもって感じられる。

 「も、申し訳ありません!」

 「何を謝ってるの?…変な人」

 わたしは、腕を彼の硬い胸板に押し付ける。両腕を回しても、胸の前で手が届かない、広い肩、厚い胸。わたしは胸を彼の背中に押しつける。厚い筋肉がわたしの乳房を押し戻す。その中で、まるで葡萄の種のように、固くなった乳首が彼の背中をつつく。

 わたしは、筋肉に埋もれたかのような彼の小さな乳首を探り当てて、指先でくすぐる。そんな体格の人にしては、彼は体毛が薄い。胸毛さえあまりなくて、わたしはそれが嬉しい。毛深い男は嫌い。

 「ひゃ、百翼長(注1)!」

 彼…若宮康光十翼長(注2)は、裏返った声でわたしの階級を呼んだ。

 「なあに、十翼長?」

 わたしは、素知らぬ顔で彼の乳首を転がし続ける。それはだんだんと勃起して大きくなって、ちょこんと厚い胸板の上に顔を出した。

 「そ、それは…気持ちよすぎます!」

 「ふうん、どっちが…?胸が、背中が?」

 「ど、どちらも…」

 「…じゃぁ、もっとしてあげる」

 わたしは、彼の乳首を擦る指先に力を込めた。背中に当たる乳首。硬い筋肉にこすられる乳首が、わたしの息を自然に荒くしていく。わたしの吐息が彼の耳たぶをくすぐるたびに、彼は真っ赤な顔になおさら血を昇らせて、鼻息も荒くうなる。ベッドの上で胡座をかいたビキニパンツ(注3)の股間の盛り上がりがそのたびにぴくぴくと震えるのを見て、わたしも下着を濡らしているのだ。

 「横になりなさい、十翼長」

 わたしが言うと、若宮はベッドに大の字に横たわった。ダブルのはずのベッドがシングルに見える。その体の中心で、小山のように盛り上がるビキニパンツの膨らみに、わたしはつい視線を向けてしまう。

 わたしは、厚く盛り上がる彼の胸板に唇をつける。意外なくらい滑らかな肌に舌を這わせ、頬擦りをする。厚い筋肉の中で確かに刻む彼の鼓動を聞きながら、わたしは彼の乳首に口づけをした。わたしの朱い舌先が可愛い乳首を撫でるたびに、若宮は真っ赤になった顔面に苦悶の表情を浮かべながら、それでもわたしが命じた通り身動きせずにされるままになっている。

 彼の、わたしのウェストほどもある大腿部に、わたしは脚を絡めていく。わたしの太腿が彼の股間の巨大な膨らみに押し付けられると、その固さが、その熱さが、わたし自身をもまた熱く濡らしていく。下着の上から、わたしは自分の股間を彼の逞しい筋肉にこすり付けていた。息が熱い。わたしもやはり彼と同じく顔を赤くしているのだろう。

 「ん…ふぅ…ん…」

 若宮の筋肉がわたしのクリトリスを下着越しに微妙に刺激する。わたしは、耐え切れずに吐息を洩らしながら彼の大胸筋を愛撫する。わたしの唇に、わたしの舌に、わたしの指の動きに彼の筋肉は敏感に反応してぴくぴくとうねる。

 わたしは、唾液でびしょびしょになった彼の胸板を撫でながら、胸から腹へ、愛撫の中心を移動していった。それにつれて、わたしの太腿の間で彼の脚もだんだんと下がっていく。わたしの舌が彼の臍の中を探る頃には、彼の膝がわたしの濡れた下着に押し当てられている。

 「あぁ…百翼長…自分にも…その…させてくださいませんか…」

 「まだ、だめ」

 わたしはにべもなく言って、彼のビキニパンツの膨らみに顔を近付けていく。黒い布越しに、中の熱気が立ち昇ってくる。熱く昂奮した牡の臭い。わたしはごくりと唾を飲みこんで、その熱い膨らみに頬をつけた。火傷しそうに熱をもったその堅い塊に頬擦りをしながら、わたしは背筋を震わせて駆け上がる快感に目を閉じた。

 パンツの上から、それに唇をつける。唾で濡れた下着が、だんだんとその形を曝していく。パンツを通してもその熱は、その堅い男の昂ぶりは、わたしの口を犯すかのようだ。

 わたしは、若宮のパンツに指をかけた。その上辺に指をかけて、ゆっくりとパンツを降ろさせる。しかし、巨大な肉の塊にパンパンに押し広げられたパンツは、なかなか素直に脱げてはくれない。

 ようやくわたしの前に姿を現したそれは、わたしの手首ほどもある男性器。先端から透明な汁を滴らせ、軸にそって浮き出た血管がどくどくと唸りをあげているような錯覚に囚われてしまうほどに熱く滾る男の徴。

 それは太すぎて、わたしにはとても丸ごと咥えることはできない。両側から根元に手を添え、赤みがかった肉色のシャフトを縦に舐め上げる。灯火に誘われる蛾のように、わたしはその熱気に引き寄せられるように彼のペニスをしゃぶる。

 「お、おぉぅっ!」

 わたしの舌の動き、わたしの唇の動きに合わせて、彼は耐え切れずに声を上げる。ぴくぴくと震えるペニスの動きに合わせて、檻の中の動物みたいに声をあげる彼の姿は可愛い。わたしは、茸の笠のように盛り上がるカリ首に添って舌を走らせながら、太い根元と、ぶら下がった袋を手で刺激する。若宮は、くすぐられる子供みたいに情けない声を上げながら、体をよじるのを懸命に堪えていた。

 「ひゃ、百翼長ぉっ!」

 若宮は情けない声を上げて、すがる小犬のようにわたしを見た。暴発寸前に膨れ上がったペニスが揺れ動く。

 「…まだ、射精[だ]してはだめ。これは命令よ」

 「は、はぃぃ!」

 命令、の一言に若宮はビン、と反応して身を引き締める。根っからの軍人なのだ、この男は。

 わたしは、名残り惜しかったが一度ペニスから離れた。彼の頭の両脇に膝をつき、顔の前に開いた太腿が来るようにする。わたしの下着は、もうびしょびしょに濡れているはずだ。彼の肩に脛を乗せて、わたしは濡れた股間を若宮の前に曝した。

 「…どう…?わたし、濡れてる?」

 「…は、はい、原百翼長!」

 「…報告して」

 若宮は、真っ赤な顔をさらに赤くした。終る頃には血管切れるかもしれない。

 「…はっ!…し、下着が濡れてぴったり張り付いて、その、ヒダヒダの形まではっきりわかります!」

 「どんな形?」

 「ぱ、ぱっくりと開いて…その、とてもヒワイな…あ、いや、魅力的であります!」

 「うふっ…もっとよく、見たい?」

 「も、もちろんであります!」

 わたしは、彼の頭上で下着を降ろしていった。濡れた下着を股間から剥がす感覚が、そしていやらしく濡れて開く淫らな割れ目を彼の前に曝すことが、わたしをなおさらに昂奮させていく。わたしの股の下で若宮は小さな目を真ん丸に見開き、生唾を飲みこんでいた。

 「…どう?」

 脱いだパンティを投げ捨てながら、わたしは言った。さすがに声が掠れているのが自分でもわかる。

 「わたし、濡れてるでしょう?いやらしく開いているでしょう?」

 「はい、百翼長…。とても、綺麗です」

 「…え?」

 彼の言葉に、わたしは思いもよらず動揺していた。ずっと早鐘のように打ち続けていた鼓動がそのペースをさらに早くする。胸が痛くなるような感じ。

 「濡れた襞が…濡れた毛が…きらきら光って、とても綺麗です…」

 「な、何を言い出すのよ…」

 わたしは、急に恥ずかしくなって、そこを隠したくなる衝動と戦った。

 「本当です…。自分は、生まれてこのかた、これほど綺麗なものを他に知りません」

 わたしは、突然胸が詰まって何も言えなくなった。わたしは腰を落とし、若宮の顔の上に股間を押し付ける。彼の鼻が、口が当たる。溜まった電気が火花となって迸るように、わたしの体を快感が駆け巡る。

 「…舐めて…!」

 若宮は、命令を受けた猟犬のように激しく、わたしのそこを啜った。彼の舌が、唇が、性急すぎるほどの勢いでわたしの『女』を犯していく。

 「…あぁぁっ…あはぁ、あはぁぁぁっ…!」

 堰きとめられていた川が濁流となって溢れるように、快感が奔流となってわたしの体を押し包んでいく。若宮の、技巧もへったくれもない牡の欲望をむき出しにしただけの動きが、却ってわたしを狂わせていくのだ。

 「…あひぁっ…あぁぁぁぁぁ、あはぁぁぁぁぁんっ!」

 わたしは、夢中で彼の顔に股間を押し付け、腰を揺すった。獣のように喉から迸る声を押さえることができない。

 「…あはっ…あはぁぁっ、もう…あ、あっぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

 わたしは、彼の頭の上にうずくまるように崩れ落ちた。絶頂に達した体は、しかし未だ満足しきらずに疼く。わたしは振り返り、若宮の股間でそそりたつ逞しい肉棒を見やった。それを見ているだけで、後から後から唾が溢れ、それを飲み込むごとに喉が鳴る。わたしは、彼の股間に這いずるように擦り寄っていった。

 わたしは、屹立する肉棒を抱きしめる。わたしの胸が彼のペニスを挟む。それだけで勃起した乳首が痛いほどに疼く。わたしは、力が抜けて重い腰を上げて、そそり立つペニスに股間をあてがっていった。何度入れても、その巨きな男根をそこに咥える時、本当にこれが入るのかどうか不安な気持ちになるのが止まることはない。

 「ひぁっ…あふっ…」

 発達したカリ首がわたしを押し広げ、わたしは呻き声を上げている。入りこんでくるカリがわたしの中を擦り上げるこの感覚がわたしを夢中にさせる。わたしの流す愛液がシャフトを伝って彼の上にこぼれていく。わたしは、ゆっくりと腰を沈めていった。

 「…ひぁぁっ…あひぃ…っ!」

 根元まで咥えた男根が、わたしを満たす。肉襞が彼に絡みつき、半ば無意識のうちに腰が揺れて熱い肉棒を存分に味わおうとしている。しかし、串刺しにされたわたしは、思うように動くことさえできないでいた。

 「…動いて…!」

 わたしの言葉を待っていたように、若宮は腰を上下左右に揺らしていった。巨きなペニスがわたしの中で思う様暴れまくり、わたしは体中の細胞の全てが膣に向かって収縮するような感覚に襲われていく。

 「…ひぁっ…あぁ、あぁぁぁぁぁぁっ…いぃっ…ああ、いぃっ…」

 わたしは、もう自分の体を支えていられなくなった。わたしは彼にすがるように若宮の体に向かって倒れこんでいく。若宮は、そんなわたしの体をその逞しい腕で抱きしめた。上体が前に倒れこんだはずみに、硬い肉茎がわたしのクリトリスを刺激する。

 「…ひゃ…あはぁぁぁぁっ…!」

 彼の力強い腕がわたしを抱きしめる。折れそうなほどの力で抱きしめられるのは、けれど不快ではない。

 わたしを抱きしめたまま、彼は力強く腰を突き上げる。

 「…あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…!!」

 わたしは、全身を貫く巨きな快楽の渦の中に、飲み込まれていった。

 「…出して…っ!お願いぃっ!中で出してぇっ…!」

 若宮十翼長は、わたしの命令を忠実に実行した。

 

 …わたしは、ちょっとの間失神していたらしい。気が付くと、彼の精の迸りを胎内に受けた瞬間そのままの姿勢で、わたしは彼に抱きしめられていた。

 「…痛いわ」

 「も、申し訳ありません!」

 若宮は、慌ててわたしの体を離した。わたしは、改めて自分からその筋肉の塊に抱きついて、子供のような白い頬に軽いキスをする。たちまちその顔は真っ赤になった。

 「…綺麗だって言ってくれたわね。…嬉しかった」

 「原さんは…百翼長は、綺麗です。自分が知る中でいちばん綺麗な人です」

 「…ほんとに、そう思う?…小隊にはもっと若くて可愛い娘がたくさんいるわよ?」

 「自分は、嘘は言えません!お世辞も苦手です…自分は…自分は、ほんとうに、百翼長は誰よりも綺麗だと思います!」

 「…ありがとう…」

 わたしは、彼の胸板に頬を埋めた。そうしていると、なんだかとても安心できた。

 「…もし、自分が死んだら…」

 突然穏当でないことを言い出した若宮を、わたしはきっと見つめる。

 「変なことを言わないで」

 「…しかし…まず間違いなく、百翼長よりも自分の方が先に死にますから…」

 まるで既定の事実のように、若宮は言った。彼は、戦車随伴歩兵[スカウト]として日々戦場を駆け抜ける。わたしは、補給班長として後方で待っている…。

 けれど、それだけではない。彼は、軍用の促成クローンとして量産された下士官の一人だ。おそらくはあと数年、それで彼の『耐用年数』は終わる。…だから彼は、決して『階級』から逃れることはできない。

 「いいこと。これは命令よ。あなたは死なない。絶対にわたしより先に死んではだめ。わたしはお婆ちゃんになるまで生きますからね」

 若宮は、何か言いたそうな顔をしてわたしを見た。けれど、何も言わなかった。もしかしたら、彼もわたしと同じ幻想を見たのかもしれない。階級章の翼の数などが何の意味ももたない世界で、一緒に老人になるという幻想。それが決して有り得ないことは、彼もわたしもよく知っている。

 「…はい、百翼長」

 彼はそう言って、子供のようににっこり笑って敬礼してみせた。

 「…全力を尽くします」

 わたしは、ほんの少しだけ眼の端に涙を浮かべて、彼に答礼した。

 

 終

 


解説

 …やだよ~。もうキンニクなんて書きたくないよぉ…。だいたい俺は、マッチョが大っ嫌いなんだよぉ…。

 原「だったら、こんな話書かなければいいのに」

 …だって、リクエスト来ちゃったんだもん。

 原「若宮って言い出したのは自分でしょう?わたしは別に速水くんとか茜くんでもOKだったのよ」

 …だって、原×速水とか原×狩谷とか原×茜とかそんな当り前の組合せ今更…。

 原「ほんと、墓穴を掘るのが好きな人よねぇ…」

 それでは、また次の機会にお会いしましょう。

 


感想メールを送る

 お名前:
 

 メールアドレス(記入しなくてもOKですが、そのかわり御返事が書けません):
 

 メッセージ:
 

 

掲示板に感想を書く(皆様の感想が投稿作家様の創作の活力になります!!)

戻る

動画 アダルト動画 ライブチャット