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白いマットのジャングルで(前編)
キャプチュード 著


  ティナ・アームストロングは、観客に囲まれたリングの上で困惑していた。

 (なんだか、おかしなことになっちゃったなぁ…)

  対角線上にたつ、対戦相手を複雑な表情で見つめる。真っ赤な試合用コスチュームに身を包んでいるし、もう間もなくゴングが鳴るだろう。

  だが、いつもの試合と違い、どうにも闘争心が沸かなかった。

  なぜなら、彼女の視線の先に立っているのは、とてもプロレスなどできそうにない華奢な体つきの、中学生ぐらいの少年だったからである。

 

  事の発端は、ティナがプロレスの試合を終えた控え室に、一人の男が現れたことだった。

  男は用件だけを手短に告げた。「地下プロレスに出ていただけませんか?」と。

  モデル業に専念したいティナは、最初は断った。だが、「報酬は望むまま」という言葉に心が動いた。

  「DEAD OR ALIVE」での優勝をあと一歩のところで逃した彼女にとって、その条件は願ってもないことだった。

  要求をのんだティナは、エキジビジョン・マッチに出ることになった。そして、対戦相手として登場したのが、目の前の少年だったのだ。

 

 (何よあの子、まるで女の子じゃない…細い腕しちゃって…)

  ティナが小さくため息をつくと同時に、高らかにゴングが鳴った。観客のボルテージが上がり、ティナはレスラーという一流のエンターテイナーの顔になる。

 (せっかくだから、ちょっとは盛り上げてやるか)

  ティナはいつもの試合のように、拳を高々と突き上げた。

 「いくぞぉーっ!!」

  観客が呼応する。徐々に、ティナのテンションも上がり始めた。

 

  だが、試合が組み合った次の瞬間、ティナの顔には驚愕の表情が張り付いていた。

  ティナは、スピード、パワー、テクニック、どれをとっても超一流のレスラーである。

  その彼女が、手四つの状態から、まるで相手をコントロールできないのだ。それどころか、徐々に押し返されていた。

 (うそ!? な、何よこれ…何でこんな細い腕に押し負けるの!?)

 「お姉さん…本気出していいんだよ?」

  少年は、鈴のような声で囁いた。これが、ティナの闘志に火を点けた。

 「ナメんじゃないわよ!」

  組んだ状態から、ティナは膝蹴りを見舞った。が、少年は手を離し、ステップバックしてかわす。

  間合いが開いた瞬間、ティナは低い姿勢で少年の下半身を狙ってタックル。

 「おっと」

  少年はおどけたように言い、そのタックルに覆い被さって潰してしまう。

 「やばっ!」

  ティナは咄嗟に身をひねって、背後からのしかかられるのを防いだ。すかさず、少年の脚関節を取りに行く。

  少年の足首をホールドして立ち上がり、アキレス腱固めに移行しようとした時、ティナの体がグラリと前に傾いた。

 「なにっ!?」

  少年が、空いている片足でティナの膝を押したのだ。しかも、同時にティナの片足首をガッチリとロックしている。

 (わざと足をとらせてヒールホールド!? まずい…っ!)

  そう思った時には、もう遅かった。少年はティナの足首を万力のような力で締め上げる。

 「うあああああああっ!!」

  電撃を受けたかのように、リングの上で上げたこともないような悲鳴をあげるティナ。

 しかし、負けを確信した瞬間、少年はあっさりとティナの足首を開放した。立ち上がり、

 再び向かい合う二人。

 (何なのよ、この子…遊んでるの?)

 「やぁっ!!」

  不安を振り払うように、ティナは牽制のローキックを繰り出した。少年は軽くステップしてかわし、お返しとばかりに踏み込んでミドルキックを返す。

 (かかった!)

  その足を捉えてドラゴン・スクリュー。それがティナの狙いだった。

  来るのがわかっていれば、どんなキックでも捉える自信もあった。だが、少年のキックはあまりにも速く、そして鋭かった。

  ドスッ!!

 「く……は……っ!」

  脇腹に、鉄パイプで殴られたような衝撃が走る。息を詰まらせ、ティナは無様にもその場に崩れてしまった。

 「お姉さん、もっと遊んでよ…じゃないと、あの人たちと遊ぶことになっちゃうよ?」

  少年の言葉に、ティナはハッとなってリングの周囲を見回す。

 「な……なに?」

 黒いスーツを着た無表情な男たちが、リングを取り囲むように立っていた。ティナの控え室に現れた男もいた。

 「お姉さんが負けたら、今度はあの人たちが遊ぶんだってさ」

  少年の告げるおぞましい事実に、ティナは弾かれたように立ち上がった。そんな話は聞いてない、とばかりに、リングサイドに駆け寄る。

 「何よこれ! 話が違うじゃない!!」

  だが、黒服は、あくまで冷静に告げる。

 「負けた時の条件については、お話ししてません。嘘をついた覚えもありませんが?」

 「冗談じゃないわ!! こんな試合、降りさせてもらうわよ!!」

 「……ご自由に。でも、無理でしょうな」

 「……えっ?」

  いつの間にか背後に回っていた少年が、後ろからティナの胴に腕を回し、がっちりとロックしていた。

 「しまっ………!!」

  瞬間、物凄い勢いでティナの体が後ろに引っ張られた。低い軌跡の弧を描き、ティナは後頭部からマットに叩きつけられる。ベリー・トゥ・バック。

  高速にして低空のジャーマン・スープレックスである。

 「ぐぁ………」

  脳内に直接打撃を食らったかのような衝撃に、一瞬ティナの視界が真っ白になる。これほどの攻撃を食らったのは、初めてだった。

 「う……うぁ……」

  あまりのダメージに焦点は定まらず、舌もうまく回らない。ティナは這いずるようにして、少年から逃れようとする。そして、少年は、ゆっくりと歩み寄る。

 (だ…ダメ…来ないで…)

 「何やってんのさ?」

  うつぶせのティナの脇腹に、少年はつま先を突き刺した。無造作な蹴りだったが、金属バットを突き立てられたかのような衝撃。

 「がっ!! ……くふ……」

  息苦しそうに転がって仰向けになるティナ。その体に、少年がどっかりまたがった。ティナの顔が、恐怖に引きつった。

 (や…やだ……これ以上攻撃されたら、死んじゃうよぉ……もういい、私の負けでいいから……ギブアップするから……)

  すでに、ティナの心はくじけている。しかし、少年は無情にも彼女の髪をつかみ、頭を持ち上げた。

 「まだ、終わってないよ?」

  言うなり、空いている手でティナの頬を張った。本気ではない、嬲るような強さで。

 「も……もう……やめ………」

  バシッ! もう一度、さっきより強い張り手が飛ぶ。

 「あうっ!!」

  顔を背けようにも、髪をつかまれているのでままならない。

  さらに、二度、三度と張り手がティナの頬を襲った。端正なティナの顔が、見る間に赤くなっていく。

 「いやぁ!! お願い、やめて!! もう許して!!」

  ティナの目からは、いつの間にか涙が流れていた。泣き叫ぶ少女のように、必死の形相で少年の手にしがみつく。

 「レオ!」

  その時、リングサイドの黒服から、少年に声が飛んだ。少年が顔を向けると、続けて指示が飛ぶ。

 「お客様方が退屈しておられる。もう少し盛り上げろ」

 「了解」

  少年は小さくうなずくと、ティナの髪を離した。

  ほっとしたのもつかの間、そのままティナの左足を掴むと、そのまま高々と持ち上げながら右足を踏みつけた。

 「いや、いや、いやぁぁぁぁぁ!!」

  踏みつけられる痛みか、股を割り裂かれる痛みか、それとも衆人環視の中で強制的に大股を開かされる羞恥心からか、ティナは泣きじゃくりながら叫ぶ。

  その悲鳴を聞いて、再び観客の歓声が大きくなってくる。

 「じゃあ、次はこんなのどうかな?」

  少年はティナの体を、首を支点に担ぎ上げた。そのままティナの両足首を掴み、両足を大きく開いてホールドした。

 「『キ○肉バ○ター』っていうんだ。昔のマンガで見つけた技なんだよ」

 「いやああああああああ!! 降ろして、降ろしてえっ!!!!」

  両脚をぱっくりと開き、逆さまに担ぎ上げられたティナは、恐怖と羞恥に泣き喚く。

  観客のボルテージは今や、最高潮に達しようとしていた。

 「降ろしてどうすんのさ。このまま高いところから着地して、初めて技は完成なんだよ。…でも、それもちょっと面白味に欠けるよね」

  少年は暴れるティナをものともせず、そのままの姿勢を保ちながら、ゆっくりとリング内を歩き始める。

  そう、開かれたティナの股間を、観衆に見せつけるように。

 「お願い……もうやめて……許して、ギブアッ………きゃああぁっ!!」

  最後まで言い終える前に、ティナの言葉は悲鳴に変わった。

 「え? 何か言った、お姉さん?」

  そ知らぬ顔で、少年は自らの体を上下に揺すり始めた。ゆっさゆっさと揺する動きに合わせて、グイグイとティナの両脚は広げられる。

 「うぅっ! あぐうっ! ギブ……アぅぅっ! ギ……ぎいぃっ!」

  『ギブアップ』の一言を言わせないうように、少年はタイミングをはかって体を揺する。

  一分はそうしてティナを責めつづけていただろうか。少年は、やおらリングサイドの男に視線を向けた。

  揺すられるのは止まったが、すでにティナの目に光はなく、虚ろな表情でうめき声を上げるのみ。

 「飽きちゃった…とどめ刺していい?」

 「いいだろう。盛大にやれ」

  男が冷淡に宣告した。ティナの顔から急速に血の気が失せていく。

 「ひっ………!!」

  少年はティナを担いだまま、やすやすとコーナーポストに歩み寄った。

  一歩ごとにティナが小さなうめき声を出すが、気にせずそのままロープに足をかける。

 「お姉さん、動かないでね。暴れたら、どんな落ち方するかわかんないよ」

  少年はそのまま、脚力だけでコーナーポストに登り始めた。

  信じられない力だが、今のティナに気づく余裕はない。死刑台の階段を上る囚人のように、ただ呆然と頂上を見詰めるだけだった。

  少年がコーナーポスト上に登り詰めた。その少年の肩の上に担がれたティナにとって、それは途方もない高さに見えた。

 「ひっ………ひぅっ………いやぁ………ぁぁぁぁぁぁぁ……」

 「だろうね。でも、仕方ないよね…………ん?」

  少年の頭に、生暖かい液体が降り注いでいた。ティナは恐怖のあまり、失禁していた。

  高々と持ち上げられた股間から、真っ赤なコスチュームを通して流れ出て、ティナの体を伝って滴り落ちていた。

 「あ~あ、いい大人がおもらしなんて……みっともないよ、お姉さん」

  少年の言葉に恥ずかしがる余裕もないのか、ティナは歯をカタカタならしながら震えていた。

 「いや、いやぁ……ギブアップするの……降参なのぉ……降ろしてぇ………」

 「あははっ、ずいぶん可愛らしくなっちゃったね。でも………」

 

 「ごめんね」

  少年がマットめがけて跳躍した。

 「いやああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

  ティナは、脚を目一杯開いた状態で、マットの上に横たわっていた。

  目を大きく見開いてはいるが、その瞳は何も映してはいなかった。完全に失神している。

  口には、巻き込んだ舌で窒息しないように、タオルが詰め込まれていた。

 

  開いた両脚の間からは、いつ止まるとも知れない液体が、いまだ流れ出ていた。

 

 

 


解説

 なんか、好き勝手に書いてしまいました…ダメですか?

 全然やらしくないし。最後に無理したのが見え見え。

 てゆうか、ストーリー性をどこまで重視するか、っていうのは

 考えどころですねえ。

 前とは打って変わって、今回は排除してみたんですが、だったら

 実用性(?)がないとダメなのかも。でも、何となく続き書きたいなあ。

 次はもう少し頑張りたいんで、よかったら読んでください。

 


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